「運の悪いドローなんて、存在しないと思っている」カタール大会出場の大坂なおみが全豪で敗れたガルシアと再戦!<SMASH>

アブダビ、そしてカタール・オープンへの出場を決めたのは、全豪オープンテニスの初戦で敗れた、その次の日だったという。

妊娠、出産を経て1年4カ月ぶりに出場したグランドスラム(四大大会)では、大会16シードのカロリーヌ・ガルシアの前に、4-6、6-7(2)で敗退。直後の記者会見で、「次に出るのは、ドバイ」と明言していた大坂なおみが、ドバイに先駆けWTA500のアブダビ・オープン、そして2月11日に開幕したWTA1000のカタール・オープンにも出場した。

その理由や経緯とは……?

カタールのプレトーナメント会見で、彼女は次のように明かす。

「メルボルンで負けた次の日に、チームの面々と話して出場を決めたの。いきなりドバイに出るよりも、アブダビとカタールに出た方が、良い調整にもなるんじゃないかって。随分と高くつく練習をねって、人から言われちゃったけれどね――」、そう言い彼女は、恥ずかしそうに笑みをこぼす。

「もう随分とこの時期に試合に出ていなかったから、どの週にどの大会が開催されるかも忘れちゃって。ドバイが、こんなにインディアンウェルズ(3月6日開幕)と近いことにも気付かなかったの」

ただ、そのようなプロセスすら、彼女は「楽しかった」と振り返る。

「去年は、他の選手たちが世界中を転戦しているのを見て、羨ましいと感じていた」という大坂は、遠征の日々にも心身の疲労は感じていないという。ただ同時に「もう少し勝てるようになって、大会数を絞れるようになりたい」との本音もこぼした。その背景にはもちろん、昨年7月に生まれたばかりの長女シャイの存在があるだろう。
全豪の後はアメリカに戻り、久々に娘と過ごす時間を慈しんだ。

「産後、こんなに長く娘と離れたことがなかったから、他の誰とも話さないくらい一緒にいた」

もっと一緒にいたい……そう思うと同時に、娘との時間は「全ての大会で、もっと頑張ろうと思わせてくれた」とも言う。

その決意も新たに挑んだ今回の中東遠征は、アブダビでダニエル・コリンズに初戦で敗れるという、ほろ苦いスタートに。それでも「これ以上落ちようがないと思ったら、むしろ自信が出てきた」と、彼女はカラリと笑った。

「厳しい試合を一度勝てば、事態は好転していくはず」との予感を抱く大坂が、来たるカタール・オープンの初戦で当たるのは、ガルシア。わずか1カ月前のメルボルンで、敗れたばかりの相手だ。

会見でその件について問われた時、彼女は少し困ったような笑みをこぼしつつ、「また(ガルシア)なのって思ったけれど、でも良かったとも感じている」と言う。

「運の悪いドローなんて、存在しないと思っている。最終的には、勝利に相応しい選手が勝つものだと常に感じているから。タフな相手との対戦からは、より多くを学べる。だから良かったとすら感じるの。彼女はとても良い人だし、彼女とは同じ誕生日なの」

そう……大坂とガルシアは、4年を隔てた同じ10月16日に生まれ。

「だからいずれにしても、勝つのは“てんびん座”ね」

そう言い彼女は、会見の場をなごませた。

正義の女神が持つとされる天秤は、果たしてどちらに傾くのか? いずれにしても、趣深い試合になるのは間違いない。

現地取材・文●内田暁

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