「やっぱり中途半端な評価はできない」立川祐路が語るレースと市販車タイヤの開発の違いとこだわり

 2023年いっぱいでスーパーGT現役を引退した立川祐路。第一線から退いて以降も、メディアの注目を受け、さまざまな賞を受賞するなど、多忙な日々が続いている。1月12日〜14日に開催された東京オートサロンでも各ブースでトークショーを行うなど“引っ張りだこ”な印象だった。その中のひとつ、ブリヂストンブースで行われたタイヤ開発に関するトークショーでは、レースの現場とは異なる“立川の仕事”に関する話についても語られた。

 これまでのレース現場で、ブリヂストンタイヤの開発に携わってきた立川。長年スーパーGTで活躍してきたこともあり“タイヤ開発”と聞くと、レーシングタイヤを連想しがちで、実際にGT500を中心としたタイヤ開発にも携わってきたが、実は一般道で使用する市販ブリヂストンタイヤの開発も大きく関わっており、今回のトークショーではそこでのエピソードが披露された。

「こういった(市販)タイヤは、サーキットやテストコースで速度を出して走るのではなく、街中を走って、さまざまな評価をします」と、市販車タイヤの開発経緯を話す立川。

「たとえばレグノとかだと、スポーツタイヤのようなハンドリングを目指すのではなくて、自然な動き、こちら側の操作に対して自然に反応してくれる動きが結果として運転のしやすさにつながるので、そういったところを主に見ますね」と、これまでなかなか明かされなかった市販タイヤの開発テストの様子を語った。

タイヤの開発テストと聞くと、閉鎖されたサーキットやテストコースを連想しがち。もちろん、そう言った場所でのテストも行うが、サーキットの行き帰りで通る一般道や高速道路でも評価する機会が多いとのこと。立川はステアリングを握るだけでなく、その評価途中には運転席を交代して助手席や後部座席に座って、乗り心地や車内に入ってくる音などもチェックしているという。

「やっぱり中途半端な評価はできないですし、もし失敗すると僕のせいにされて終わっちゃう。そこは僕も真剣に妥協せずに評価をして、自分が使っても『これは良い!』と思えるタイヤにするようにしています」と立川。乗り心地やパフォーマンスを大事にする一方で、ブリヂストンのコンセプトとして特に重要な安全面では絶対に妥協を許さないという。

「(GTでも)テストをしていて、すごくグリップする『すごく速そうだ!』というタイヤがあります。僕たちレース屋は、やっぱりそのタイヤを使いたくなるんです。でも、ブリヂストンは耐久性の確認ができないない限りは絶対にそのタイヤを使わせてくれない。耐久性の確認が取れれば良いですけど、(確認が)取れなかった場合はそのままお蔵入りになります。やっている側としては『えっ?』ってなるんですけど、それが信頼できる証ですよね」

「GTでもブリヂストンのタイヤがダメになって壊れるという機会は、(他のタイヤメーカーと比べて)一番見ないと思います。公道でも安心して乗ってもらえるように、安全安心をきちんと担保した上で運用しています」

 トークショーの最後には、立川は気になる今季以降のことについて話した。スーパーGTのドライバー引退後はセルモの社長に就任し、TCDのアンバサダーのような立場になるとともに、スーパーGTとスーパーフォーミュラではチーム監督を務めることになる。

「今シーズンからはチームセルモの代表としての仕事……仕事と言っても、レースをメインにした会社なので、レースで勝てるように、成績を残せるように頑張っていきます。それと同時にスーパーGTとスーパーフォーミュラの監督としてやっていきます」と立川。

 今季のセルモには、大湯都史樹が加入することで話題となっている。それについては「いろいろと賛否両論はあると思いますけど、自分が思うに今のセルモにはそういう部分が必要なところもあるので、楽しみです。僕が走ることはないですけど、今までと変わらずセルモの応援をよろしくお願いします」と、立川社長、そして監督は集まった多くのファンに語っていた。

 また立川は「スーパーGTのドライバーとしてプライドをかけて戦う勝負とところは引退しましたけど、ドライバー自体を辞めたつもりではないです」と、今後何かしらの形でレース参戦の可能性があることを示唆。「プロスポーツ選手はみんなそうだと思うのですけど、“楽しみながらやる”というのはけっこう難しいと思うんですよね。プレッシャーだったり、いろいろな責任もあります。楽しんで(レースを)やれるようなことがあったら、やってもいいかなとは思います」と、ドライバーとしての今後について語った。

 

ブリヂストンブースでは昨年のチームセルモのGT500マシン、ZENT CERUMO SC430が展示された
2024スーパーGTセパンテスト サーキット入りする立川祐路と石浦宏明

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