ECB利下げ、「刻一刻と近づく」とイタリア中銀総裁

Giselda Vagnoni Valentina Za

[ジェノバ(イタリア) 10日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのパネッタ・イタリア中銀総裁は10日、ECBが利下げに踏み切る時が「刻一刻と近づいている」と述べ、適切なタイミングで段階的に実施すれば金融市場や経済への影響を軽減できるとの認識を示した。ジェノバで開催された会合で述べた。

パネッタ氏は、利上げが経済に及ぼす影響はかつてよりも大きいとし、その中で次の金融政策行動は、ディスインフレが進行中で賃金・物価スパイラルの可能性が低い状況を反映するべきだと指摘した。

「金融政策スタンスを転換する時が刻一刻と近づいている」とし、「われわれは、金融市場や経済活動のボラティリティを高める可能性のある後発的で積極的な利下げでなく、迅速かつ段階的な利下げの是非を検討する必要がある」と指摘した。

ECBは先月、政策金利を過去最高の4%に据え置いた。

現在、早ければ4月にも利下げを開始するのか、あるいは先延ばしするのかが取り沙汰されているが、パネッタ氏は「金融緩和の正確な時期に関するいかなる憶測も不毛なことで、合議体としてのECB理事会に対し礼を欠く」と指摘した。

<インフレ巡る議論>

ここ数週間、主要政策当局者は利下げするにはインフレ率が目標値に戻りつつあることを示すより多くの証拠が必要だと主張している。

パネッタ氏は「今議論すべきは、物価安定へのリスクや実体経済への不必要な打撃を防ぎつつ金融緩和を開始するための条件だ」と指摘。

タカ派当局者の懸念を念頭に、インフレ期待の下振れリスクが顕在化しており、インフレ率が上昇したのと同じ速さで低下していることから、インフレ低下が目標達成の目前で足踏みする「ラストワンマイル問題」への懸念は杞憂に終わったと述べた。

リスク要因となり得る名目賃金の高い伸びは、他のコストの低下によって相殺されており、インフレの主要因である企業の総生産コストの増加は止まっている。

コストが安定し、需要が弱いため、企業が賃上げ分を消費者に転嫁する可能性は低い。

パネッタ氏は、紅海危機に起因するインフレリスクについて、海上輸送が総生産コストに占める割合はごく一部だとして重要視しない姿勢を示し「需要が低く、在庫が多いため、輸送コストの上昇が価格に転嫁される可能性はかなり低い」と述べた。

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