スイスのメディアが報じた日本のニュース

トヨタ自動車の豊田章男会長は1月30日の記者会見で、グループ企業で相次ぎ発覚した不正について謝罪した (Keystone/EPA JIJI PRESS)

スイスの主要報道機関が先週(1月29日〜2月4日)伝えた日本関連のニュースから、3件をピックアップ。要約して紹介します。 【スイスで報道されたトピック】 この中から今回は①トヨタ、2023年の販売台数で新記録②AIを使った小説が文学賞③村田沙耶香さん、半年間チューリヒに滞在、をご紹介します。 世界一のトヨタは「自慢できるものがない」 トヨタ自動車が1月30日に発表した2023年の世界販売台数はグループ全体で1123万台と過去最高を更新し、4年連続で世界一となりました。スイスではフランス語圏の日刊紙ル・タンやル・マタンなどが仏AFP通信の記事を転載しました。 記事は、ハイブリッド車の需要拡大や半導体不足の改善で売上げが伸びたものの「トヨタには現時点で自慢できるものが何もない」と指摘。トヨタは子会社の日野やダイハツに加え、豊田自動織機でエンジン認証取得の不正があったなど不祥事が相次いでいると説明し、30日会見での豊田章男会長の「大切にすべき価値観や物事の優先順位を見失う状況が発生してきた」との発言を引用しました。 また100%電気自動車(EV)の販売台数は10万4018台と、前年から4倍増となったものの、米テスラや比亜迪(BYD)に比べると「見劣りする」と指摘。「(2026年のEV販売台数を年間150万台とする)目標の達成はますます困難になりそうだ」と結びました。(出典:ル・タン/フランス語) AI小説の未来 第170回芥川賞を受賞した九段理江さんは、受賞作「東京都同情塔」の執筆の一部にChat GPTなど生成AIを使ったことを明らかにしています。ドイツ語圏のCHメディア系新聞は2月2日、文学界での生成AIの使用をめぐる議論を取り上げました。 記事は、1960年頃から始まった「オートポエム(自動詩)」の試みが1つのジャンルとして確立している一方、「大半の詩人や作家には嘲笑されるだけ」の存在だと解説しています。文学界では「文章は人間の手によって書かれなければならない」という固定観念が根強いためです。 しかし、潮流として「言語スキルを駆使して精緻な文章を機械から導き出す迅速なライターが求められている」のは事実。生成AIの使用が排除されることはなく、「おそらく人間と機械の相互作用により、『東京都同情塔』のようにさらに独創的な作品が生まれる」と予想しました。(出典:ザンクト・ガーラー・タークブラット/ドイツ語) レジデンスで執筆に専念 チューリヒ文学館と公益住宅財団(PWG)は2010年から、世界中の文学家をチューリヒ市内のアパートに招待する「Writers in Residence」プロジェクトを実施しています。作家は静かな住宅街の家具付きに半年間滞在し、執筆活動に集中することができます。2024年1~6月は芥川賞作家の村田沙耶香さんが日本人として初めてこのプロジェクトでチューリヒに滞在中です。 ドイツ語圏の日刊紙NZZは1月30日の記事で、「コンビニ人間」や「地球星人」「生命式」などの作品を紹介しながら、村田作品の魅力に迫りました。「村田作品は、登場人物の可能性と限界を探求し耳を傾けることで、読者がこれらの経験に参加できるようにし、彼らに声を与える。村田沙耶香は文学を通じて、こうした排除された声にプラットフォームを与え、社会の中心に再び組み入れている」と評価しました。(出典:NZZ/ドイツ語) 話題になったスイスのニュース 先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス、複合姓の再導入を政府が支持」(記事/日本語)でした。他に「スイス、退役済み戦車『レオパルト2』をドイツに移送」(記事/日本語)や「Most Swiss skiers exceed 50km/h」(記事/英語)も良く読まれました。 意見交換 日本語を含む10言語に対応した意見交換ページで、世界の読者やswissinfo.chの記者と意見を交換しませんか?下のリンクからお気軽にご参加ください。 今日のテーマ:気になるスイスの話題は? ご意見やご感想、取り上げて欲しいテーマなどのご要望がありましたら、お気軽にこちらのメールアドレスまでお寄せください。 次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は2月12日(月)に掲載予定です。 校正:大野瑠衣子

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