【大人気YouTuber理央奈ちゃん】側弯症の手術で胸から下がまひ。6歳になった今、再生医療とつらいリハビリに取り組む

再生医療後も欠かさずリハビリを受けています。

ちいりおちゃんこと理央奈ちゃん、「アーリオ、オーリオ、りおちゃんです」で始まるYouTubeが大人気です。理央奈ちゃんは4歳のとき今後身長が伸びない可能性があると指摘されました。母の佳寿美さん(35歳)は、病気のことをもっとたくさんの人に知ってもらおうと、SNSで配信することを決意します。
お茶目な表情を見せる理央奈ちゃんの日常生活や、新しく始めた再生医療について聞きました。全3回のインタビューの3回目です。

【大人気YouTuber理央奈ちゃん】手術中に下半身がまひ。5歳の娘に事実を伝えるまでの母の葛藤。「自分の体のことは知る権利がある」

病気のことを知ってもらいたくて、SNSでの配信開始を決意

小学1年生になり、元気に支援学級に通う毎日。

――YouTube「ちいりおちゃんねる」はチャンネル登録者120万人以上と大人気です。配信を始めたきっかけを教えてください。

佳寿美さん(以下敬称略)理央奈は4歳のとき、先天性の骨系統疾患の疑いを指摘され、今後身長が伸びない可能性があると言われました。でも医師から「人間の魅力は身長では決まらない」と伝えられたんです。そのときから、自分は娘のために何ができるだろうと考えるようになりました。

そのころ、障害を持つ人たちがTikTokで発信しているのを見ました。娘のこともSNSで伝えられたら、多くの人から理解を得られるのではないかと考えたのがきっかけです。

残念ながら現在は、見た目がほかの人と異なっていると好奇の目で見られがちな社会ではないでしょうか。でも将来、病気への理解が深まり「いろんな人がいて当たり前だよね」という社会になれば、理央奈が成長してから暮らしやすくなるのではないかと思いました。
何より、理央奈はまだ幼くて病気を抱えているけれど、おしゃべりが大好きで、しゃべる内容もおもしろくてたくさんの魅力があります。こうした姿を見てもらいたいと考えたんです。

最初はTikTokを利用していましたが、現在はYouTubeで配信をしています。

――SNSで配信すると、病気について知ってもらえるメリットがある一方で、リスクもあると思います。

佳寿美 もともとは子どもをSNSに載せることに抵抗がありました。やっぱり一生残ってしまうし、顔出しすることで、危険なこともあると思うので・・・。だから、SNSを始めること自体、かなり悩みました。それでも始めようと決めたのは、発信することで、理央奈の病気が周知され、病気についての情報が得られるなら、どんなことでもしたいという思いからです。

とはいえ、実際に始めてからは、想像以上に多くの反響があり、怖くなるほどでした。途中で何度も夫に「やっぱりそろそろやめようか?」と相談しました。

夫は「一度出したからには中途半端にするほうがかわいそうだ。ここまで来たらむしろ、周囲より突き抜けられるようにしてあげたほうがいい」との考えで、そしてアドバイスもしてくれました。夫の支えもありここまで続けられました。夫はものすごくポジティブな性格なんです。

――理央奈ちゃん自身はYouTubeの反響をどうとらえていますか?

佳寿美 大きな支えになっているし、自信にもつながっているようです。そもそももって生まれた個性が明るい理央奈ですが、ときには「もう治らないかもしれない」と落ち込むこともあります。そんなときにポジティブなコメントをたくさんもらうことで、「自分は治る」と信じて、頑張れるところがあるようです。

私もSNSを始めたことで、病気を抱えている方やその家族・友人が想像していたよりずっと多いことも知りました。病気は特別なものではなく、だれでもかかる可能性のあるものだと実感しました。

お笑いセンスは天性のもの!?笑いの多い日常生活の様子で、人気チャンネルに

――YouTubeでは、理央奈ちゃんの大人顔負けのおしゃべりが人気です。その語彙力やお笑いセンスはどのように培われたのでしょうか?

佳寿美 「子どもとは思えない~」などの感想をいただくことも多いです。でも、何か特別なことをしたわけではないんです。あえて言えば、夫がお笑い好きです。理央奈も赤ちゃんのころから大好きでネタをマネして大喜びしていました。

あとは、理央奈が2歳のころから側弯症手術を受けるまでの3年間は、毎週図書館に行って本を10冊借りてきて、毎日2冊ずつ読んでいました。おかげで、お兄ちゃんの湊人も理央奈も本は大好きです。語彙力があるとしたら、そのおかげでしょうか・・・。

ただ、同じように育てたつもりでも、湊人は理央奈とはまったく違うタイプに成長しています。だから、もともとの性格が大きいのかもしれません。

本人は「私は大人の話をいっぱい聞いているからおしゃべり上手なんだよ」と言っています。私と夫は仕事の話などをわりとよく家でしているので、そういう話を聞いて勉強しているそうです。

――佳寿美さんから見て理央奈ちゃんはどんな女の子だと思いますか?

佳寿美 普段から私と同年代の友だちみたいな感覚です。動画のとおり、パパへの突っ込みも日常茶飯事です。動画どおりの女の子です。

そうかと思えば、小学1年生らしい一面が見えるときもあり、大人びていたり、子どもらしさもあったりで、どれが本当の姿なのか戸惑うこともあります。でも、全部が娘だし、ごく普通の女の子なんだと感じています。

――YouTubeの配信にはシナリオなどは用意しているのでしょうか?

佳寿美 基本的にはありません。ショート動画は日常生活の一部を撮影し、私がアプリで字幕をつけて配信しています。

長い動画も最初はシナリオはなかったのですが、だんだん理央奈が「YouTuberっぽいことをしたい」と言い出して、事前に「今度はメイク講座をしたい」みたいな提案をしてくれます。詳細に全体の構成を考えて教えてくれることもあれば、私たちにはだいたいの流れだけを伝えられ、あとはパパがいつもどおり話すというときもあります。

――普段から家族間の会話は多いのでしょうか?

佳寿美 多いと思います。パパへの突っ込みも録画をしていないときの日常でもいつもあることですし、楽しいおしゃべりも毎日のことです。笑いが絶えない家庭だと思います。

――お兄ちゃんの湊人くんは、理央奈ちゃんの活躍をどのようにとらえているのでしょうか?

佳寿美 最初のころは「自分もYouTuberになりたい」と言っていました。でも、たまにテレビの取材などでカメラを向けられたときに、「自分はカメラの前で話すのは得意ではない」と思ったらしいです。今は「理央奈が人気YouTuberでうれしい。俺はりおちゃんのマネージャー!」と言って応援してくれています。

――2023年には『YouTube Fanfest 2023』を受賞されました。

佳寿美 とにかくびっくりしました。わが家の子どもが?なぜ?と信じられない気持ちが大きかったです。娘も驚いていましたが、子どもだからなのか、案外すんなりと受け入れていました。兄妹ともに、授賞式で大好きな人気You Tuberさんに会えると大興奮していました。

幹細胞移植による再生医療を開始

少しでも足が動くよう、リハビリを頑張る日々です。

――2023年9月から幹細胞移植による再生医療を受け始めたと聞きました。これはどんな治療でしょうか?

佳寿美 歩くことを目標とした治療です。理央奈が歩けないのは、脊髄損傷に近い状態だと考えられます。そこで、脊髄の不調を回復させようとしています。できる限りの治療をうけさせてあげたいんです。

まず、本人の骨髄液から幹細胞だけを抽出し、培養して増やしたものを点滴で戻すという治療です。幹細胞を培養する際に発生するサイトカインという物質を点鼻する治療も行っています。点滴3回・点鼻90回の3カ月で1クールなのですが、理央奈はいま1クール目を終え、2回目を受けようとしているところです。

この治療が受けられるのは基本的には成人している人など、基準が厳しいそうです。治療内容を知ったり調べたりして、あきらめていたのですが、YouTubeで発信を続ける中で親身になってくれる医師が声をかけてくれて、子どもでも受けられそうなクリニックに問い合わせをしてくれました。

――理央奈ちゃん自身がYouTubeで再生治療を受けることを報告していました。

佳寿美 理央奈自身も医師からの説明を聞いています。子どもにわかりやすく説明してくれる先生でした。理央奈自身も、治療内容を理解し、YouTubeでも自分の言葉で説明しています。本人も効果が絶対ではないということには納得したうえで、治療を受けています。

まだ新しい治療なので正直なところ効果があるのかもわかりません。保険診療ではないので費用も高額です。でも、今できる治療はこの方法が最新のものなので、これに賭けたいと思っています。

お話・写真提供/佳寿美さん 取材・文/齋田多恵、たまひよONLINE編集部

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最初は理央奈ちゃんのことをSNSで発信することにためらいがあったという佳寿美さん。SNSで大きな反響があったのは、理央奈ちゃんや家族の明るさが支持されたのでしょう。また、理央奈ちゃんも佳寿美さんもSNSのおかげで励まされたといいます。きっと治療の効果があると信じ、理央奈ちゃんの回復を願っています。

「たまひよ 家族を考える」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

『今日もさわやかに麗しく生きていきましょう』

「ちいりお」ことりおなちゃんは、今やSNS総フォロワー数160万人越えのスーパーユーチューバー! 実は側弯症の手術の影響で身長は93センチで止まり、下半身がまひして歩けない女の子。人生ハードモードなりおなちゃんですが、また歩くことを信じて一生懸命リハビリと学業&ユーチューバーをこなす日々。ちいりお・ちいりおママ著/1650円(KADOKAWA)

理央奈ちゃんのYouTubeチャンネル「ちいりおちゃんねる」

●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。
●記事の内容は2024年1月当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

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