【編集長コラム】「午後も残って教えてよ」金沢ポートが児童館に卓球を教えに行く理由

写真;児童館に卓球を教えに行く金沢ポート/提供:金沢ポート

創立一年目のTリーグチーム・金沢ポートは、試合のスケジュールの合間を縫って、児童館に卓球を教えに行っている。

まだ3回実施しただけだが、手応えがある。その話をしよう。

写真;児童館に卓球を教えに行く金沢ポート/提供:金沢ポート

貢献というより“あってよかった”を目指して

プロスポーツチームが社会課題活動に力を入れていることはご存知の通りだ。
例えばJリーグは、それを“シャレン”と名付け「社会のためにJリーグを使おう」と、気候アクションや学校訪問など「社会連携活動」をリーグとチームが連携して行っている。

しかし、Tリーグ参入一年目の私たちの活動は、貢献というにはまだ小さすぎて、おこがましい。児童館で行う内容は、講習会でさえないかもしれない。ただ、卓球を楽しむ場面で、少しだけより夢中になれるお手伝いを、選手やスタッフが行っているだけである。

ごく簡単にスイングの見本を見せたり、紙コップにボールを入れるゲームを実施したり、卓球経験の有無に関わらず楽しめる内容に終始している。

写真:チケットセールス担当でもあり応援団長でもある“かわニャン”こと川村亮介氏(金沢ポート)/提供:金沢ポート

「午後も残って卓球を教えて」

先日の児童館訪問は午前中に行ったが、小さなトーナメント戦に負けた小学2年男子がスタッフに「午後も残って、僕に卓球を教えてよ」と切望した。一緒に参加した保護者は「卓球って、こんなに楽しく、かつハードなんですね」と汗を拭きながら笑った。

「観に行きます」と言ってくれた親子もいたが、震災被害を鑑みて県内ホームマッチを中止した後だった。ぜひ、来季お願いします。

写真:ミニ卓球台で子どもたちを教える西東輝監督(金沢ポート)/提供:金沢ポート

もちろん、こうした活動は中長期的に見れば、チームのファンづくりであり、卓球人口の掘り起こしでもある。

ただ、一年目のチームの本音としては、大きすぎる理想を追う余裕はないけれど「なんか、金沢ポートがあって良かったね」と思ってくれる人を増やしていくことは信じられる。それは、観に来てくれる人の胸を熱くさせる試合をすることと同じくらい、大切なことだと感じている。

チームの営業面でも、実感のこもったプロジェクトを一般企業にも応援・協賛してもらう形を考えることで、チームがハブとなって社会と企業を連携させていきたい。

写真:金沢ポートイベントの様子/提供:金沢ポート

県内に300以上の学童・児童館

そういえばコロナ前、東京で私の子どもが通う“学童”でも、小さな卓球大会があった。「必要なら呼んでくださいね、あはは」と謙遜か遠慮かわからない振る舞いを自分がしているうちに毎年終わっていた。

転職や留学や移住などもそうだが、大切なことを冗談にしているうちに人生はあっという間に終わる。本当に大切なことは、小さくても、時間が足りなくても、持ち出しでも、続けていくべきだ。

石川県内には、学童と児童館を合わせて300箇所以上もある。

1シーズンはあっという間だが、チーム運営は実に息の長い仕事である。

写真:金沢ポートのステッカーを見せる児童館の子どもたち/提供;金沢ポート

文:槌谷昭人(ラリーズ編集長 兼 金沢ポート取締役)

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