災害対応の現場で重要性が叫ばれるようになった男女共同参画。県内でも女性の防災リーダーが増えつつあり、避難所運営などで成果を上げている。いつどこで発生するか分からない災害への備えとして、広がりが期待される。
「避難所は寝食やトイレがまず大切で、女性の視点やプライバシーへの配慮は後回しだった」。とちぎ男女共同参画財団の芳村佳子(よしむらよしこ)係長は2011年の東日本大震災発生当時を振り返る。
県内には約150カ所の避難所が設けられ、福島県などから9530人が身を寄せた。避難生活が長期化する中、育児や介護といったケア労働負担の女性への偏りなどが顕在化。避難者のニーズに応える形で、ボランティアの支援の在り方や設備などが見直されるようになった。
性差に基づく課題の解決策として少しずつ浸透してきたジェンダー平等の視点。定着させるには女性リーダーの活躍が欠かせない。
栃木市でまちづくりなどに取り組むNPO法人ハイジの理事中村絹江(なかむらきぬえ)さん(65)は15年の関東・東北豪雨、19年の台風19号の際に同市災害ボランティアセンターの一員として市内の避難所を訪問。被災者のニーズ調査と支援に当たった。
関東・東北豪雨の避難所では「支援物資として女性用下着が届いたが、大きいサイズの下着が足りない」との声をキャッチ。市社協を通じて下着メーカーに提供してもらった。
台風19号の避難所では、ある高齢夫婦を巡るトラブルに対応した。ことあるごとに妻を怒鳴る夫。パーティション越しでも響く怒鳴り声に多くの避難者が恐怖を感じていたため、市職員と連携して夫婦を福祉支援につなげた。
「避難所では『生理用品が足りない』といった女性ならではの困り事への対応のほか、性的少数者への配慮やバリアフリー対策も進める必要がある」と中村さん。「普段から地域と関わりを持ち、仲間と課題を話し合って解決に向けて話し合わなければならない」と訴える。