熊谷組ら開発のコッター継ぎ手、施工1万組を達成/技術改良で用途拡大へ

熊谷組ら4社で共同開発した機械式継ぎ手「コッター式継ぎ手」の施工が延べ1万組を達成した。同社が神奈川県山北町内で施工中の高速道路リニューアルプロジェクトの床版取り換え工事現場で記念式典を9日開き、関係者らが関連技術のさらなる普及と発展を祈念。熊谷組の嘉藤好彦代表取締役兼執行役員副社長は、「半断面施工への適用に向けた開発を現在進めており、今後は一般の道路なども含めてコッター式継ぎ手を皆さんにかわいがってもらい、用途を広げていきたい」と意気込みを語った。
コッター式継ぎ手は床版側に埋め込むC型金物同士を、くさび状のH型金物を挿入し固定用ボルトで締め込むことにより、十分な接合強度を確保できる。
従来工法はプレキャスト(PCa)床版の接合部に幅30~40センチメートルの現場打ち部分(間詰めコンクリート部)が必要となるが、同継ぎ手を用いたコッター床版工法では幅2センチメートルの目地となり、床版面積ほぼ全体のPCa化が図れる。現場での鉄筋や型枠の組み立て作業が不要。床版の設置から接合までの作業日数が約半減し、作業人員も約60%低減可能だ。
1万組を達成した現場は中日本高速道路東京支社発注の「東名高速道路(特定更新等)酒匂川橋他2橋床版取替工事」のうち、山北町内で施工中の滝沢川橋。式典では共同開発4社をそれぞれ代表し、熊谷組の嘉藤副社長、ガイアートの深澤直樹取締役兼執行役員副社長、オリエンタル白石の水野敏昭取締役兼執行役員営業本部長、ジオスターの高松芳徳取締役兼常務執行役員技術本部長らが金色に塗られた特注のH型金物を接合部に挿入した。
コッター床版工法は2019年に林道での小規模橋の床版取り換え工事で初適用されて以降、各高速道路会社のリニューアルプロジェクトで実績を伸ばしてきた。近年は共同開発者以外の施工案件でも採用されるケースが増えつつある。
開発責任者である熊谷組土木事業本部の鬟谷亮太橋梁イノベーション事業部長は「高速道路各社が進めるリニューアルプロジェクトへのコッター式継ぎ手のシェアは現在3%程度であり、これを数年後には1割に増やしたい」と意気込む。高速道路のほか、全国の道路更新事業、新設工事や鉄道橋への応用など、幅広い需要に対応できるよう関連技術をさらに進化させていく方針だ。

© 日刊建設工業新聞社