港湾管理者の人手不足深刻、予算や技術力にも課題/国交省調査

港湾管理者の人手不足が深刻化していることが、国土交通省の調査で明らかになった。港湾の維持管理に携わる職員数は都道府県が平均43人、市町村が同4人。1人の職員が複数の港湾を受け持っているケースも少なくない。大半の管理者が人手不足を認識しており、管理体制の見直しや国による支援策を求めている。国交省は維持管理体制の課題や改善点などを洗い出し、基準の見直しにつなげる。
国交省は2023年10~11月に、港湾管理者の維持管理体制の実情把握を目的とした調査を行った。対象は全国の港湾管理者165者。内訳は▽都道府県=37▽市町村=121▽一部事務組合=6▽港湾局=1。東京都は東京港と離島の担当部局別に分けて集計し、計166部局から回答を得た。
維持管理に関わる平均職員数は▽都道府県=43人(技術系28人、事務系14人)▽市町村=4人(2人、2人)▽中核市=8人(6人、3人)▽政令市=92人(66人、26人)-となった。市町村は特に人手が足りておらず、職員1人が複数の港湾を受け持つ事例が25件程度あった。
職員数が増える見込みも薄い。職員の増減について都道府県は63%が横ばい、34%が減少傾向と回答。増加傾向との回答は1件もなかった。市町村も横ばいが68%、減少傾向が30%となり、増加傾向はわずか2%にとどまった。
点検業務の課題(複数回答)には「人手不足」との回答が約80%に上り最多。「予算不足」(約70%)、「技術力不足」(約54%)と続いた。具体的な課題として「港湾専任ではない」「人事異動により技術力が安定しない」といった声や、「専門技術職員が確保できず、外部委託の費用負担が大きくなっている」との意見が寄せられた。国や県による定期点検の一括発注や、点検の交付金対象への追加などを求める声もあった。
海中部の点検・修繕に難航していることや、点検・修繕の対象箇所が多いといった回答も多かった。国に対して水中ドローンの操作研修や購入支援を要望する意見や、点検負担を下げる新技術の開発を求める声もあった。
国交省は8日に開かれた「メンテナンス体制検討ワーキンググループ(WG)」(座長・岩波光保東京工業大学教授)の初会合で調査結果を報告した。WGは県の職員など港湾管理の実務者を中心に構成。現状の維持管理体制の課題や改善点、国の役割などを議論する。検討結果は、WGの上位組織「港湾施設の持続可能な維持管理に向けた検討会」(座長・横田弘北海道大学大学院名誉教授)に報告し、基準の見直しを検討する。

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