東京都交通局/地下鉄のホームドア整備、4カ月前倒しで完了

◇半導体不足も施工方法工夫し期間短縮
東京都交通局が設置したホームドアが整備効果を発揮している。取り付けが完了した路線では転落件数がゼロになった。これまで順次設置を進め、2023年11月に同局が管理する全ての駅で運用を開始。半導体不足でホームドアの製造が遅れる中、当初の計画より4カ月前倒しした。整備に携わった都交通局信号通信課の担当者は「さまざまな困難があったが、『最後までやりきる』という思いで整備を進めていた」と胸の内を明かした。
都交通局は▽三田線▽大江戸線▽新宿線▽浅草線-の4線の地下鉄を運行している。00年8月に三田線全駅でホームドアの設置が完了。その後は13年4月に大江戸線、19年8月には新宿線の全駅に設置した。
残る浅草線では、設置工事中に世界的な半導体不足が直撃。当初は23年度内の完了を予定していたが、ホームドアの製造が予定より最大10カ月遅れる事態となった。遅れを挽回するため「設置後の動作確認手順を見直し、運用開始までの期間を短縮するとともに、複数駅で同時に施工した」(都交通局信号通信課担当者)。
遅れを取り戻す工事も一筋縄ではいかなかった。ホームドアの整備時は通常、ホーム補強などの準備工事や設置途中の駅の安全管理といった付随作業があり、元々他部署との擦り合わせが多い。遅れを回復すためには工程を見直す必要があり、調整案件がさらに増える要因になった。
それでも関係部署との情報共有や打ち合わせを粘り強く行い、手戻りがないよう、一つ一つ着実に前に進めた。都交通局が管理する駅で唯一ホームドアがなかった浅草線西馬込駅では23年11月18日の始発に運用が始まった。
施工中、最も気を付けたのが「安全かつ着実に整備を進めること」(同)。ホームドアは重量があるため、設置する時の事故防止に心を砕いた。
ホームドアの整備効果は乗客だけでなく職員にも波及している。運転士からは「駅進入時に人が混んでいるとドキドキしていたが、ホームドアを設置してからは安心して運転できる」と言われ、苦労が報われた気がした。
20日に押上駅を管理する京成電鉄が同駅にホームドアを取り付ける予定。これにより都営地下鉄全106駅の整備が完了する。
今後は既設ドアのメンテナンスも重要になる。手間も費用もかかるが、信号通信課の担当者は「最新の知見の収集や他事業者との技術交流を行い、効率化、合理化を模索する」と気を引き締める。

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