専門医に聞いた“花粉症を楽にする”小技6 「鼻づまり感じたら鼻歌」「薬指の先を揉む」

にっくき花粉!(写真:puppy/PIXTA)

昨年来の記録的な猛暑や暖冬が影響し、正月明けから花粉が飛散し始めているという。ウェザーニュースによると、全国的に花粉症シーズンが早まり、例年並み~例年以上の飛散量になるという。

きたにし耳鼻咽喉科の北西剛先生が語る。

「この時期、早めに花粉症の薬を処方してもらおうと来院する患者さんがいらっしゃいますが、今年はすでに症状が出始めている人もいます。

花粉症シーズンでは、症状が強かったり、市販薬が合わない場合は耳鼻咽喉科での診察が求められますが、まず大事なのは花粉を寄せ付けない生活をすることです」

マスクや花粉対策メガネで防護し、ナイロン素材など花粉のつきにくい外出着を着るなど、一般的な対策のほかに、副作用のない意外な対策法があるという。

■鼻づまりを感じたら鼻歌を!

2002年7月に米国胸部学会の学術誌に発表されたスウェーデンの研究では、10人の健康な非喫煙者(年齢34~48歳、全員男性)を被験者に、ハミング(鼻歌)による健康効果を調査している。

その結果、口を開けて歌うよりもハミングのほうが鼻腔内に振動が発生し、また空気の流れが副鼻腔の換気を促し、鼻のNO(一酸化窒素)レベルが、安静時に比べて15倍も増えた。

「NOは鼻の粘膜の血行をよくして、粘膜についた異物を外へ運び出す繊毛の働きをよくしてくれます。花粉や細菌、ウイルスなどの侵入を防ぐ能力がハミングによって上がると考えられます。

また論文と別に、フランスの耳鼻科医・トマティス博士によれば、高い周波数ほど頭頸部に響きやすいといいます。ハミングをするなら、少し高音の歌が効果的かもしれませんね」(北西先生、以下同)

鼻がむずむずするなど、鼻づまりの兆候を感じたら、日ごろの家事の合間に鼻歌をしてみるのがいいかもしれない。おすすめは、松田聖子の『青い珊瑚礁』や広瀬香美の『ロマンスの神様』、クリスタルキングの『大都会』など、高音のパートのある曲だ。

■鼻がむずむずしたらごま油点鼻

インドやスリランカに伝わる伝統医療・アーユルヴェーダでは、ナスヤというオイル点鼻が有名だという。

「焙煎する前の、透明に近く匂いも気にならない太白ごま油、馬油などを鼻腔内に数滴滴下、もしくは綿棒にオイルを含ませて鼻腔の入口に塗布することで、粘膜の状態を改善したり、オイルが異物をキャッチして、粘膜への抗原侵入を防げます。

また花粉が破裂すると、粒子の小さなアレルゲン物質が飛び散り症状を悪化させたり、肺のほうまで入り込んでいって咳を引き起こしますが、オイル点鼻はこうした“花粉爆発”を防止するのに有効だと思っています」

■帰宅後、すぐに入浴鼻タオル

家の中に花粉を持ち込まないためにも、帰宅後はすぐに入浴したいところ。

「湯船につかって、お湯で温めたタオルを、しばらく鼻にのせておく鼻タオルがおすすめです。お風呂の湯気が乾燥した鼻や喉に潤いを与え、鼻タオルが鼻の血流を促して炎症を抑えてくれます。

鼻の粘膜を覆う粘液には、ウイルスや花粉などの異物に対峙してくれる免疫細胞が存在しています。この免疫細胞にしっかり働いてもらうためにも、鼻の状態をベストに保つことが重要なのです」

■症状がつらくなったら鼻ツボ、薬指ツボ

「鼻水や鼻づまりの改善効果があるといわれているツボが、左右の小鼻の膨らみの根元にある『迎香』と小鼻の上部にある『鼻通』です。

花粉症はリラックスした副交感神経が優位なときに症状が強く、交感神経が優位なときに弱まります。薬指の爪をもむと交感神経が優位になるので、症状がつらいときは薬指の先を摘んでみましょう」

■日々の食生活にサケやきのこなどを

アレルギー反応を抑制する制御性T細胞の働きに関わり、鼻炎をはじめとするアレルギー疾患に効果的だといわれているのが、ビタミンDだ。

「本来は日光にあたると体内で作られますが、在宅勤務の増加や、冬季の日照時間低下しているため、不足している人が多いです。

意識的に日光を浴び、ビタミンDが豊富に含まれた食材(サケ、サンマ、ちりめんじゃこ、きくらげ、干ししいたけなど)を積極的に取りましょう」

免疫細胞であるマクロファージを活性化させるため“免疫ビタミン”とも呼ばれているのが、LPS(リポポリサッカライド)。

「れんこん、メカブ、ひらたけなどに含まれています」

ケルセチンは、アレルギー症状の原因の一つであるヒスタミンの分泌を抑えてくれる。

「ケルセチンは野菜などに含まれるフラボノイドで、玉ねぎの黄色色素として知られています。玉ねぎ(特に外皮に多い)のほか、りんご、サニーレタス、ブロッコリー、モロヘイヤなどに多いといわれています」

バランスのいい食生活に、これらの食材を取り入れよう。

■就寝時は布団よりもベッド

室内に持ち込まれた花粉は、日中は空気中を舞っているが、夕方から夜間にかけて室内の人の動きが減る時間帯に、徐々に部屋の床に落ちてくる。

「具体的な医学的検証はないのであくまで私見ですが、直接床に布団を敷くよりも、数十センチの高さがあるベッドのほうが、床に落ちた花粉を吸い込む量を減らすことができ、症状が軽減する方がおられます」

一般的な治療や対策のほか、以上の副作用の心配のない対策法も駆使して、つらい花粉症シーズンを乗り切ろう。

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