2024年は新たな“シティポップ元年”に? 現役DJが2023年によくプレイしたベスト5を紹介

竹内まりや「プラスティック・ラブ」や松原みき「真夜中のドア~stay with me」をはじめ、山下達郎、大貫妙子、吉田美奈子、亜蘭知子など、かつてニューミュージックと呼ばれていた日本の70~80年代のサウンドが世界的に注目され、いまや空前のシティポップブームである。

そもそもこの流れは、2000年代前半くらいから種火的にヒップホップネタなどのコアなシーンを中心に盛り上がりを見せていたが、2017年になんとなく“裏”世界的にブームへと躍り出た。“裏”世界的というのは、日本国内のシーンではまだコアで、そこまでのメジャーな盛り上がりを感じていなかったからだ。

しかし、その後のコロナ禍でのバーチャル期間(配信やサブスクでの盛り上がり)を経て、2023年にふたたびバーチャルからリアルへ落とし込まれたのではないかと感じている。そして、個人的には2024年は新たなるシティポップ元年として、ジャパニーズポップスがより世界に向けて発信され、さらなる飛躍を見せる年になるだろうと予想する。

今回は、ニッポンのいい音楽を独断と偏見で紹介するプロジェクト『Japanese Soul』を主宰し、クラブやカフェ、バー、野外マルシェなどでDJとして活躍中のカネコヒデシが、2023年にDJや選曲などでよく使用した、70年代から2023年までのシティなミュージックを、“オレ的2023年のシティポップベスト5”としてご紹介する。

基本的には、自身のDJプレイでの選曲が中心だが、とくにその曲がヒットしているというわけではなく、もしかしたら「これからコレが来るかも!」というような思いからのベストセレクトだ。ちなみに、“カネコヒデシ的シティポップ”の定義は、70年代、80年代のバンドサウンドの流れを汲みつつ、ベースサウンドが中心のシティ感溢れる新旧のグッドミュージックとしているので、あしからず。

基本的には、サブスクや配信、CD、アナログレコードなどで手に入れられるものだが、すでに売り切れや廃盤などで手に入らない音源もあることもご了承願いたい。

■「メレンゲ」中山うり(『tempura』収録)

シンガーでアコーディニストの中山うり。彼女が2023年10月にリリースしたアルバム『tempura』から「メレンゲ」を。心に浸透するような彼女の美しいハスキーな歌声と、ハワイアンサウダージサウンドがとても気持ち良い! フロアというよりはラウンジな場所で、お酒を楽しみながらユッタリマッタリと、チルアウト的サウンドとして選曲。

■「真夜中のジョーク」間宮貴子(『Love Trip』収録)

80'sシティポップサウンドとしては、もうおなじみのこの曲。ジャパニーズAORの女王として名を馳せる間宮貴子の1982年の作品で、アルバム『Love Trip』に収録。キーボードの難波弘之はじめ、達郎バンドの面々も参加。いわゆるライトでメロウなサウンドで、こちらもDJバーなどでお酒がすすむ、酒の肴サウンドとして選曲。

■「運命の人」月の満ちかけ(『RAINY / 運命の人』収録)

最近、個人的に注目している、ボーカル・熊谷あすみとピアノの今井カズヤのふたりによるユニット、月の満ちかけ。彼らは、チャットモンチートリビュートアルバムに600組以上の一般公募の中から、結成わずか半年で選ばれたバンドだ。なかでも2022年2月にリリースされた「運命の人」は、スピッツの名曲を熊谷あすみのアンニュイ感あるボーカルに、グッドシティサウンドなアレンジがとても最高なナイスカバー。スピッツのカバーは数あれど、これ以上ない秀逸な作品と言える。

■「真夜中のドア~stay with me~ feat.CENTRAL」なかの綾とブレーメン(『にまいめ』収録)

近年、空前の世界的リバイバルヒットをかましている、松原みきの名曲「真夜中のドア~stay with me」を、なかの綾とブレーメンがサルサバンドのCENTRALをフィーチャーして、ニクいサルサアレンジでカバー。なかの綾の伸びのあるソウルフルなボーカルも素晴らしいが、「こう来たか!」と思える、幸福感溢れる能天気なノリが楽しい。先日、歌舞伎町にある新宿カブキhallでDJプレイしたときに、海外からの旅行客たちが総立ちで踊った、まさに伝説(!?)となった1曲である。

■「いつも通り」シュガー・ベイブ(『SONGS』収録)

山下達郎を中心に1973年に結成されたバンド、シュガー・ベイブ。彼らが1975年に大瀧詠一が設立したナイアガラ・レーベルからリリースした、1stアルバム『SONGS』から「いつも通り」を。作詞、作曲、ボーカルは、ター坊こと大貫妙子。ミドルテンポの小気味いいサザンソウル感あるサウンド全開で、ストリングスの感じが“PACIFIC”的かつ、南の島を思わせる“ナイアガラ”感があり、ター坊のボーカルととてもマッチしている。気持ち的に何かが足りないけど〈街は いつも通り〉という、街のにぎやかさと、自分の心のさびしさのギャップを歌った歌詞。

ちなみにこのアルバム、現在はシティポップの大名盤としてお馴染みだが、当時はまったく売れず、80年代に入って山下達郎の「RIDE ON TIME」のブレイクでやっと注目されたという感じなのだ。コロナウイルスの影響もやっと落ち着き、街がいつも通りに戻りはじめたということで、2023年はよくDJプレイで使用していた曲である。

そんな感じで、カネコ的シティポップベスト5。いかがだっただろうか。ぜひサブスクやCDなどでチェックしてみてほしい。

(文=カネコヒデシ)

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