安くて人気な〈サ高住〉だが…“終の住処”として選ぶには「注意が必要」なワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

「親の介護」を始めようにも、介護施設に入るための費用や月にいくら払わなければいけないのかを知らない人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、『図解とイラストでよくわかる 離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』(角川SSCムック)から、入居する前後でかかる費用を具体的な項目とともに解説します。※本記事の情報は、抜粋元の書籍が刊行された2021年7月8日時点のものです。

介護施設の気になる「費用」と「入居制限」

公的施設は入居困難…民間施設が有力候補に

要介護度が高くなったり、一人暮らしが難しくなったりした場合、施設入居を考える必要があります。そこで悩むのは、介護施設選びです。在宅介護に比べ費用が高いため、安易に選んで費用を払いきれなくなることもあるからです。

介護施設や高齢者住宅は、「公的施設」と「民間施設」に区別できます。[図表1]に主な施設と料金の目安を紹介しています。

[図表1]老人向け介護施設の種類と費用の目安 出典:『図解とイラストでよくわかる 離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』(角川SSCムック)より抜粋

比較的費用が安いのは公的施設です。代表的なものに「特別養護老人ホーム(特養)」や「ケアハウス」があります。入居時の一時金が必要ない施設や、月々の費用が割安な施設も多いです。

ただし、公的施設は費用が安い分、人気が高くいつも満杯で順番待ちです。

そもそも特養は要介護3以上でなければ入居できませんし、要介護度や家族がいないといった緊急度などによって入居者の優先順位が決められています。多くは民間施設を利用することになります。

安価な民間施設「サ高住」はサービス内容の見極めを

民間施設で代表的なのが、「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」。民間施設で比較的安価なのがサ高住です。

サ高住は、安否確認や生活相談サービスを提供しているバリアフリー住宅で、個室が基本。食事の提供をしてくれます。自立から要介護の人まで幅広く入居が可能です。

一般的なサ高住では、介護が必要になった場合、訪問介護など外部の在宅介護サービスを個別で契約します。通常の賃貸契約と同様に、敷金として数十万円かかるところが多いですが、礼金、更新料は不要で、月額15万円程度の物件もあります。

一方、あまり数は多くありませんが「特定施設」の指定を受けているサ高住であれば、施設のスタッフから介護サービスを受けることができます。こちらは有料老人ホームと同様に、数百万円以上の入居一時金が必要なケースも。

要介護者でも入居可能なサ高住ですが、終の住処として考える際には注意が必要です。入居当初は安価でも要介護度が高くなるとその分費用が高くなり、経済的に苦しくなるといったトラブルや、介護体制が希薄なサ高住であれば退去せざるをえないこともあります。

このような場合には、特養への入居待ちをするか、介護付き有料老人ホームへの転居も選択肢に入れる必要も。

また、施設の質も玉石混交の状態です。安価な入居費用で手厚い介護や高度な医療措置に対応している物件もある一方、広告内容とは違う劣悪なサービスを提供しているところもあり注意が必要です。

家族のためにサ高住を選ぶ場合には、看護体制はどうなのかなど慎重な見極めが必要です。

[図表2]比較的割安な特養・サ高住の費用の目安は? ※上記の介護保険の負担額は1割負担の概算金額。出典:『図解とイラストでよくわかる 離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』(角川SSCムック)より抜粋 【ポイント!】

施設介護の費用は居住費がかかる分在宅介護より割高に。

安価な施設が理想ではありますが、介護・看護体制とのバランスが大切です

親に合った「有料老人ホーム」を選ぶ

“終の住処”となる、介護付き有料老人ホーム

民間施設で最もメジャーなのが「有料老人ホーム」です。有料老人ホームといえば、かつては富裕層向けのイメージでしたが、現在では一時金ゼロのホームや、支払いプランを選べるホームも増えてきました。

有料老人ホームの種類は、「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」に分けられます。

前者は定額で24時間体制の介護保険サービスが付いていて看取りまで行ってくれる施設もあります。後者は比較的元気なうちに入居するホームで、介護が必要になれば外部の在宅介護サービスを利用します。そのため、要介護度が高い場合には介護付き有料老人ホームが選択肢となります。

費用の目安を事例で見る…注目すべきは”居住費”

[図表3]は、比較的安価な介護付き有料老人ホームで暮らすDさんの例です。

[図表3]老人ホーム(民間)の1週間のスケジュールと費用の目安は? ※数字は取材に基づき編集部試算。出典:『図解とイラストでよくわかる 離れて暮らす親に介護が必要になったときに読む本』(角川SSCムック)より抜粋

①の施設介護サービス負担額は介護サービスにかかる費用のことです。介護保険が適用され、要介護度や受ける介護サービスによって費用は変動します。②の居住費は、民間施設の場合、自由に設定されていて10万円のところもあれば100万円のところもあります。これが、部屋のタイプによって料金が一律の公的施設との決定的な費用の違いとなります。 その他、③の食費や④の管理費も徴収されます。

⑤から⑩は、施設や個人によってばらつきがある費用です。ただ、⑤の上乗せ介護費や⑥のサービス加算は、介護保険のルールで決められていて、24時間看護体制だったり、職員配置が手厚かったりすれば、これらの費用も高くなります。健康に問題が増えれば⑩の医療費もかさむでしょう。

施設入居では、居住費、食費な自費項目が多くなります。本人が快適に暮らせる施設を選びたい半面、お財布との相談が欠かせません。有料老人ホームのグレードや料金体系も多様化しているものの、最低でも月額20万円はかかると覚悟しておく必要がありそうです。

一時金の有無で月額料金は変わる

多くの介護付き有料老人ホームでは、「入居一時金」や「入居金」などの初期費用が必要な場合が多いです。一時金を支払うことで、その分毎月の居住費が安くなる、いわば前払い制度です。

反対に、一時金がなく毎月の利用料が高く設定されているプランを選べる施設もあります。一時金を払わない場合でも、50万~100万円程度の「保証金」を支払うことが多いですが、これは退去時に戻ってくるお金です。

長期入居になった場合、一時金を支払って月額費用を抑えた方がトータルでは安くなりますが、高額な一時金を支払うと資産が減って不安なものです。親の健康状態を踏まえながら一時金制度を利用するか否かの判断が必要です。

角川SSCムック

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