【料理家・飛田和緒さんのキッチン】愛用の器、50代の今に合った調理道具とは?[後編]

素材の持ち味を存分に生かした家庭料理が人気の飛田和緒さん。繰り返し作りたくなるおいしいレシピは、どんなキッチンから生まれるのでしょう? 愛用の器や調理器具、季節ごとに作る保存食なども見せていただきました。

前編はこちら。

お話を伺ったのは
料理家
飛田和緒さん

ひだ・かずを●東京都生まれ。高校の3年間を長野で過ごし、山の幸や保存食のおいしさに開眼。現在は、神奈川県三浦半島の海辺で暮らす。2023年に一人娘が進学のために家を離れ、現在は夫と二人の生活に。
近著『お餅の便利帖』(東京書籍)など著書多数。

器も料理のうち。器使いでおいしさもアップ

職業柄、たくさんの食器に囲まれている。そこに家族用の食器も加わるとなると……。

「10年以上前になりますが、6枚、6客とセットで買って持っていたのを家族分だけ残し、親しい人などに差し上げました。それ以降、新しいものは1枚とか2枚とかで買うようにしています」

それでも、もともと大の器好き。

「小さな薬味入れを集めています。豆皿も好きです。欠けてしまって、父が金継ぎをしてくれたものもあり大事にしています」

仕事をリタイアしてから陶芸を始めたというお父さまは、手先がとても器用だという。

「私も時間ができたので、3カ月前から金継ぎの教室に通っています。教室ではもたもたしていて『貸して』と言われ、先生にやってもらってしまうこともありますが(笑)」

さまざまな形、手のひらサイズの薬味入れ

ままごとのようにかわいい薬味入れが好きで集めている。形も素材も多様で、食卓のアクセントとして活躍。上の写真は、右の2つの銀彩以外すべて陶芸家・井山三希子さんのもの。

常備菜や漬け物、おつまみなどをちょこちょこ盛りつけて食卓に

少しずつ形や柄、質感の違う豆皿。梅干し一つのせても絵になる。金継ぎしたもの(左の写真)には独特の味わいが。「大きな器が好きだった時期もありますが、今は割と小さいものが気に入っています」

飛田さんはインスタグラムに日々のごはんの写真をアップしている。以前は娘さんの朝ごはんやお弁当が中心だったが、今はほぼひとりごはん、ときどき夫婦二人のごはんだ。薬味入れや豆皿に盛りつけたひとりごはんは、にぎやかでおいしそう。まねしたいアイデアがたくさんある。

日々の食事をインスタグラムにアップ

飛田さんのインスタグラムからピックアップ。料理家が食べている普段のごはんが興味深い。薬味入れや豆皿も大活躍。おむすび&たくあんが、竹ざるに盛られていてすごくおいしそう!

保存食は時間をかけておいしくなる過程が面白い

「保存食は仕込んですぐにおいしいわけではなく、時間をかけておいしくなっていく過程が面白いなと思うんです。それに、梅干しやおみそ、らっきょう漬けなど、自分で作れば自分好みの味にできるのがいいところです」

結婚後、作り続けているという保存食。海辺の街に越してきてから「エスカレートしていますね」と笑う。

「ここではコンビニまで行くのにも車で片道10分かかる。欲しいと思ったときすぐに買いに行けないので、だったら自分で作ったほうが便利だな、という思いもあります」

ヨーグルトメーカーで作る麹100%の自家製甘酒

自然な甘みが広がる甘酒。「材料は米麹のみなのでアルコールがだめな人でも大丈夫です。そのまま飲んだり豆乳を加えて飲んだり。カルダモンとレモンを加えてもおいしいですよ」

みそ造りと梅仕事……。毎年の季節の楽しみ

みそ造りは冬の恒例。毎年1チーム6~7人の7チームが飛田さん宅で仕込む。そして初夏には梅仕事を。「やることは単純だけれど量を多く作らないと1年間楽しめないので忙しいんです」

空気が乾燥したら野菜やきのこの干しどき

大根の葉や皮、きのこ類、白菜……。「干し野菜はスープのいいだしになるんですよ。少し前に旅行に行った韓国では大根の葉を干したものが売っていて、ちょっとびっくり」

レモンカード、梅のシロップ漬け、いちじくの甘露煮も旬の食材で

おやつにもなる甘いもの。上の写真はレモンカードと梅のシロップ漬け。「青梅が出る時期にはシロップ漬けや甘露煮も作ります」。左の写真は、いちじくの甘露煮。

旬の食材で作りたい。実山椒、新しょうがの甘酢漬け

「実山椒も季節がきたら仕込んでおこう、と思う食材。塩漬けやしょうゆ漬け、オイル漬けにして1年楽しみます」。左は実山椒のオイル漬け、右は新しょうがの甘酢漬け。

じゃがいもやにんにくは麻袋に入れて保存

じゃがいもやにんにくは麻袋に入れ、キッチンの床に置いたかごに入れて常温で保存。

50代。今の年齢に合ったお気に入りの道具たち

50代になって、愛用の道具にも少しずつ変化があった。

「重たい鍋が苦手になりました。炊飯用の土鍋も重いので、洗うのも干すのも少しだけたいへんになり、軽い鍋も使うように。ル・クルーゼも重たいので出番が少なくなったかな。もともと多かった雪平鍋の出番が、さらに増えてきましたね」

炒め物も雪平鍋でしている。

「深さがあるので飛び散らなくていいんです。火加減さえ気をつければ焦げつきません」

どっしりしていて刃あたりがよく、汚れの目立たない黒いまな板

飛田さん一押しのまな板は「包丁にやさしいまな板 黒」。サイズ違いで持っている。「どっしりしていて動かず、包丁の刃あたりがやさしいの」。包丁は「日本橋木屋」や鎌倉の「菊一」のものを愛用。

ご飯炊きには、炊飯用土鍋と軽いセラミック加工の鍋

18歳から土鍋でご飯を炊いてきた飛田さん。「最近は炊飯器も使うようになりました。余裕があるときは土鍋(写真左)で炊きますが、セラミック加工の鍋(写真右)も重宝しています」

軽くて火の通りがいい雪平鍋の出番が増えている

「持ち手のない雪平鍋は重ねて収納でき、コンロに並べてもじゃまになりません」。もともとついていた持ち手をはずして使っている鍋もある。使うときはヤットコではさむ。

ル・クルーゼの鍋は白2つと揚げ物用だけに厳選

「たくさん持っていたル・クルーゼですが、白だけを残して他は処分しました。赤い片手鍋は揚げ物用に使っています。黒く焦がしてしまったけれど、とても使いやすくて手放せません」

使い続けるうちに味わいが出てくる天然素材の道具

軽くて、吸湿性にすぐれる天然素材のせいろやおひつ。「木や竹など天然素材のものは、機能性はもちろん、使い続けるうちに色や手触りなど味わいが出てくるので愛着がわきます」

※この記事は「ゆうゆう」2024年3月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

撮影/松木 潤(主婦の友社) 取材・文/田﨑佳子


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