WRC第2戦、シーズン唯一のフルスノーイベントが始まる【ラリー・スウェーデン プレビュー】

2024年2月15日(現地時間)、WRC世界ラリー選手権第2戦ラリー・スウェーデンが開幕する。ラリーは北部のウーメオーをホストタウンとして雪と氷に覆われた森林地帯の未舗装路を舞台に行われ、18日にフィニッシュする。開幕戦ラリー・モンテカルロではヒョンデのティエリー・ヌーヴィルが優勝したが、2位、3位にはトヨタのセバスチャン・オジェ、エルフィン・エバンスが入り、ヒョンデとトヨタの勢力図はまだはっきりとしていない。ラリー・スウェーデンは特殊なフルスノーイベントではあるが、今シーズンのチャンピオンシップの行方を占う意味で重要なラリーとなりそうだ。

WRCの全イベントの中で3本の指に入る超高速ラリー

2月15日に開幕するラリー・スウェーデンは、シーズン唯一の「フルスノーイベント」。ステージは基本的にすべて積雪路となり、そこを金属製のスタッド(スパイク)が埋め込まれた雪道専用の「スタッドタイヤ」で駆け抜ける。スタッドがしっかりと氷雪路面に食い込んで高いグリップ力が発生するため平均速度は非常に高く、例年WRCの全イベントの中で3本の指に入る超高速ラリーとなる。

ラリー・スウェーデンのスペシャルステージ。基本的にすべて積雪路となる。
金属製のスタッド(=スパイク)が埋め込まれた特殊な雪道専用の「スタッドタイヤ」。滑りやすい雪道で、高いグリップを獲得する。

2022年より、豊富な積雪が見込まれるスウェーデン北部に開催地を移動。北極線の南側約400kmに位置する北部最大の都市「ウーメオー」にサービスパークを置き、ステージはさらに雪深いコーステッティングとなった。

今年のラリー・スウェーデンは、2月15日(木)の午前中にシェイクダウンが行われ、夕方7時過ぎからのウーメオーの市街地近くで全長5.16kmのSS1「ウーメオー・スプリント」でラリーがスタート。

森林地帯での本格的な戦いは翌日16日(金)の朝9時前から始まり、デイ2としてウーメオーの西側から北側にかけてのエリアで3本のステージを各2回走行。SS2/5「ブラットビー」、SS4/7「フロダ」のステージは昨年と変わらないが、SS3/6「ノルビー」は大部分が異なる。そしてこの日の最後のSSとして再び「ウーメオー・スプリント」がSS8として行われる。

17日(土)のデイ3は、ウーメオーの西側から北側にかけてのエリアで3本のステージを各2回走行。そのうちSS9/12は新ステージであり、SS11/14は昨年行なわれたボッツマークのステージと一部が重なっている。そしてこの日の最後にはウーメオー・スプリントの走行距離を延長した「ウーメオー」がSS15として行われる。

最終日となる18日(日)のデイ4は、ウーメオーの北東で1本のステージを2回走行。最終ステージとなるSS18「ウーメオー2」は、土曜日のSS15の再走となり、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーに、ボーナスの選手権ポイントが与えられる「パワーステージ」に指定されている。

ステージは全18本で合計300.10km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1202.11kmとなる。

2024年ラリー・スウェーデンのコースマップ。スウェーデン北部最大の都市であるウーメオーが起点となる。

昨年はMスポーツ・フォードから参戦したオイット・タナックが優勝

昨年のラリー・スウェーデンは、Mスポーツ・フォードのオイット・タナックが優勝。2位にはヒョンデのクレイグ・ブリーン、3位にもヒョンデのティエリー・ヌーヴィルが入り、トヨタ勢はカッレ・ロバンペラの4位が最上位だった。

昨年のラリー・スウェーデンを制したオイット・タナックとフォード プーマ ラリー1。タナックは今年はヒョンデから参戦する。

トヨタ勢はラリー開始早々から、早いスタート順に悩まされ、ロバンペラも深く刻まれた轍にペースを上げられずに大きなタイムをロス。エルフィン・エバンスもスノーバンクに突っ込むなどペースを上げられず。結局、一度も優勝争いに顔を出せない惨敗となった。

そんな中、Mスポーツ・フォードのタナックは土曜日の午後にトップに立つと、そのままペースをコントロールしてフィニッシュまで走り切った。

昨年2023年のラリー・スウェーデンで優勝を飾ったオイット・タナック。このラリーを得意とするひとり。

【参考】2023年 WRC第2戦ラリー・スウェーデン 結果

1位:O.タナック(フォード プーマ ラリー1)2h25m54.4s
2位:C.ブリーン(ヒョンデ i20 N ラリー1) +18.7s
3位:T.ヌーヴィル(ヒョンデ i20 N ラリー1)+20.0s
4位:K.ロバンペラ(トヨタ GRヤリス ラリー1)+25.1s
5位:E.エバンス(トヨタ GRヤリス ラリー1)+1m24.0s
6位:P-L.ルーベ(フォード プーマ ラリー1) +5m59.0
7位:E.ラッピ(ヒョンデ i20 N ラリー1)+7m42.4s
8位:O.ソルベルグ (シュコダ ファビアRS ラリー2) +7m48.1s
9位:O-C.ベイビー (フォルクスワーゲン ポロGTI R5) +8m30.4s
10位:S.パヤリ(シュコダ ファビアRS ラリー2) +9m03.2s

スノーイベントを得意とするトップドライバーが集結

例年、ラリー・スウェーデンではスノーイベントに強いスぺシャリストが活躍するが、今年はどうなるだろうか。

2024年型トヨタ GRヤリス ラリー1。

トヨタは今回のラリー・スウェーデンで2年連続王者のロバンペラがラインナップに復帰。フルタイムでシーズンを戦うエバンスと勝田貴元を加えたワークス体制でいどむ。ロバンペラは2022年に、エバンスは2020年にこのラリーを制覇。勝田も2018年にWRC2カテゴリーで優勝を飾っており、3人ともこのスノーラリーを得意としている。

一方のヒョンデは、ティエリー・ヌーヴィル、オイット・タナック、エルフィン・エバンスの3台でワークス参戦。ヌーヴィルは2018年に、タナックは2019年と2023年にこのラリーを制しており、こちらもドライバーの布陣は強力だ。

はたして、2024年ラリー・スウェーデンはどうなるか。ラリーは現地時間2月15日にスタートする。

2024年型ヒョンデ i20N ラリー1 。

2024年 WRCドライバーズランキング(開幕戦終了時)

1位 T.ヌーヴィル(ヒョンデ)30
2位 S.オジェ(トヨタ)24
3位 E.エバンス(トヨタ)21
4位 O.タナック(ヒョンデ)15
5位 A.フルモー(Mスポーツ・フォード)11
6位 勝田貴元(トヨタ)9
7位A.ミケルセン (ヒョンデ)6

2024年 WRCマニュファクチャラーズランキング(開幕戦終了時)

1位 トヨタ 46
2位 ヒョンデ 45
3位 Mスポーツ・フォード 12

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