「舟を編む」で共演の池田エライザ&野田洋次郎が学生時代の辞書にまつわる思い出をトーク

NHK BS・NHK BSプレミアム4Kで2月18日スタートするプレミアムドラマ「舟を編む~私、辞書つくります~」(日曜午後10:00)の試写会と会見が行われ、主演を務める池田エライザと、共演の野田洋次郎が出席した。

「舟を編む~私、辞書つくります~」は、辞書作りに懸ける情熱を描いた三浦しをん氏の小説「舟を編む」を基に連続ドラマ化。原作では、大手出版社「玄武書房」の営業部から辞書編集部に異動する馬締光也が主人公だが、今回の連ドラでは、ファッション誌から辞書編集部に異動になった若手社員・岸辺みどりの視点で描く。

試写会の終了後、登壇した池田は「無事撮影が終了しまして、明日取材だから泣かないぞと決めていたんですけど、最後のあいさつが終わって家に帰った後、えぇ~んと泣いちゃって…。今日は、ちょっと目が腫れていて大変申し訳ないなと思いながらここに来ました。今までも尊い作品がたくさんあったんですけど、本当に大好きな現場だったので、そんな作品についてお話できたらいいなと思っております」とあいさつした。

続けて野田にマイクが渡ると「真面目に馬締光也を演じました野田洋次郎です。僕自身は、3年半~4年ぶりくらいのお芝居のお仕事でした。お芝居はやっぱり僕は向いてないのかなと思いながら、音楽をやろうと必死に音楽に取り組んできた4年間でしたが、昨年『舟を編む』の脚本をいただいて、こんな面白い作品があるんだと衝撃を受けました。今までいろいろな音楽をあてる劇伴を作る作業のために、いろいろな脚本を読んできましたが、久々にものすごい衝撃を受けて、俳優だろうが音楽だろうがどんな形であれ、この作品の一員になりたいなと強く思ったのを覚えています」と、オファーを受けた際のエピソードを明かした。また、「昨日撮り終えたんですけども、あの時、自分の直感は正しかったなと思いましたし、これは一生僕は忘れない体験だったなと思いますし、1人でも多くの人にとってそういう作品になっていたら本当にうれしいです。絶対見て損はないというドラマができました。ぜひ広めてほしいですし、たくさんの方に届けてほしいなと思います」と語り、充実した時間を過ごした様子。

演じた役について聞かれると、池田は「みどりは、すごく感情の幅が豊かな子ですが、自分のその感情にどんな名称がつくのかは知らない。人に対して抱く気持ちにいくつもの感情があるんだけど、それが自分でも把握できていないのかなと思っています。私も、自分が感じた気持ちを把握したくて、みどりちゃんは今きっとこんな気持ちを抱いているのかなと辞書でひいてみました。この言葉ってこういう意味も兼ねているんだなとか、みどりちゃんと同様に、自分の気持ちをもっと正しく、自分の感情に一番近い言葉で伝えたくて、こういった言葉が生まれてきたんだなということを、一緒に学ばせてもらいました」と、役と共に学んできたことを明かした。

さらに、「みどりちゃんを演じるにあたって、とことん転ぼうと思ったんです。自分の役だし、よく見えたいと思うエゴが出てきちゃうんですけど、みどりちゃんと一緒に転んで、この子と一緒に折れて学んで立ち上がって…というふうにしていきたいなと思いました。真っすぐなんですかね」と池田が語ると、野田が「ドラマを通してのみどりの成長というとおかしいけど、変化だったり吸収力がすごいなと思いました」と、現場で感じたことを話した。すると、池田は「興味を持って学ぶんです。『何ですかそれ?』って、知らないことはその場で調べる。そのピュアさみたいなのは彼女のすてきなところだし、自分の美しくない気持ちも頑張ってどうかしようと考えている姿が、みどりの美しい瞬間だと思います」とみどりの魅力を熱く伝えた。

次に馬締役について、野田が「小説は常に読んでいるのでこの作品のことも知っていたんですけど、あらためて読み直して、脚本を読んで、私も普段言葉を書いて紡ぐものとして、全く他人事のようには思えませんでした」と作詞も手掛ける野田らしい感想に。加えて「どうやったら、もっともっと深く届けられるだろうかとか、どうやったら自分の気持ちにもっと近い言葉として届けられるだろうかというのを、常に考えて歌詞を考えています。歌っている時は、顔も知らない目も見ることができない方たちに届けたくて、そういう時にひたすら言葉というものは何なんだろう。自分だけの言葉は、どうやったら獲得できるんだろうと考えながら歌を紡いでいた20年でした」と、ミュージシャンとしての共通する面にも言及。

さらに、「馬締の言葉に対する姿勢は自分の分身のように思えて、これは絶対俺がやりたいと強く思わされて、踏み込んだら踏み込んだで辞書としての言葉を作るというのは、全く違う作業だと気付きました」と撮影中の感情を回顧し、「セリフにもあるんですけど、辞書は人々にとっての入り口でもあるので、自分だけのエゴで言葉を解釈して言葉を紡いだら駄目だし、いろいろな人にとっての入り口であるべきで、さまざまな人が言葉を使っていく手段のきっかけになるべきものである、と。そういう意味では、言葉の存在の仕方みたいなことも考えましたし、馬締のセリフからいろいなことを気付かされました」と告白し、充実した撮影期間だったことをうかがわせた。

物語にちなんで、辞書との思い出を聞かれると、自身は「おそらく世代でいうと電子辞書も普及していた時代」と踏まえつつ、池田は「私は小さい頃から本が好きで、6年生の時には、『将来の夢は小説家になること』と強く思っていたんですけど、当時、本屋さんや古本屋さんに行っても毎回本を買ってもらえるわけでもなくて。図書館に行ってもすぐ読み終わっちゃうし、そういう時に家にある一番厚い本って辞書なので、辞書を手に取って眺めて読んでいました」と、子どもの頃のエピソードを披露。そして「よく分からないこともあるけど、その言葉の横に説明が書いてあって、その説明の内容も分からない時はまたその言葉を調べていました。この物語の中盤でも辞書引き学習が出てくるんですけど、本当に地でそれをやっていました」と、みどりとシンクロする子ども時代だったことを話した。

次に野田が「通っていた中学校では、国語辞典を買わないといけなかったので、それがすごく重たくて嫌でしたね。なるべくかばんをペチャンコにして学校に行きたい思春期の学生だったので、それが嫌でしたね。あと、先生から辞書は5秒以内にひけるようにしろという、体育会系の指導があって、少しトラウマ的なところもありました」と述べ、多くの人が学生時代に感じるエピソードに、会場からも笑いが起きた。

しかし、高校受験で電子辞書を使うようになったらしく「この物語でも出てくるんですけど、電子辞書と実際の辞書というのは性質が違って、辞書じゃないと見つけられない言葉がたくさんあるんです。だから今回も、撮影中に学生以来、辞書をたくさんめくって、そうすると本当に思いがけない出合いがあって、見開き2ページで、必ず1個は発見がありました。辞書って、実は肩苦しいものではなくて、僕らが当たり前に会話するように、当たり前にそこに気付きをもたらしてくれるものだと、あらためて思いました」とかみ締めた。

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