角田裕毅、2025年のシートは安泰!? 専門メディアは「無慈悲な椅子取りゲームには直面しない」、F1公式サイトも楽観的

2月8日にラスベガスで2024年の新型マシン「VCARB01」を発表したビザ・キャッシュアップRB(以下RB)。ミサノでのフィルミングデー、21日から3日間バーレーンで行なわれるプレシーズンテストを経て、いよいよ29日(開幕戦バーレーン・グランプリ初日)より新シーズンに突入することとなる。

内も外も装いを大きく変えたイタリア籍チームに対しては、姉妹チームである絶対王者レッドブルとの連係をより強めることもあり、過去2年間の不振からの脱却が期待されているが、同時に角田裕毅、ダニエル・リカルドのドライバー2人に対しても、多くの注目が集まっている。

F1の公式サイト『F1.com』では、ジャーナリストのローレンス・バレット氏が彼ら2人に加えてリザーブドライバーのリアム・ローソンにもスポットライトを当て、「RBには高度なスキルを持ったドライバーを3人も起用できるという贅沢な立場にある」と称賛しながら、それが今季は彼らによる2025年のシートを懸けた“三つ巴”の戦いになることを意味すると指摘した。

同氏は、3人のドライバーの今季を展望しているが、その中で角田についてはまず、「2024年シーズンに向けて良い状態にある。日本人ドライバーは2023年にターニングポイントを迎え、アルファタウリの25ポイントのうち17ポイントを獲得するなど、安定した結果を残した。彼は毎シーズン、次の契約更新のために必死で戦ってきたが、おそらく関係者全員にとって彼と4年目の契約を結ぶことは最も簡単な選択肢だっただろう」と、昨季の成長ぶりを高く評価している。

そして、角田がホンダの支援を受け続けていることは確かだとしながらも、チーム代表のローラン・メキーズが「この日本人ドライバーは、“100%”その能力のゆえにチームに所属している」と明言したことを紹介し、その実力(バックではなく)がRBを魅了していることを強調した。

「今季は将来のことは考えず、自身のレースを楽しもうとしている」(同氏)角田が、昨季より力強いシーズンを送れる可能性は高いとし、そうなれば「チームが2025年に向けて彼を代えたいと思うのであれば、大いに理解に苦しむだろう」と、今後もシートを確保できる可能性が高いと予想する。

また、岩佐歩夢という有能な若手が控えているものの、彼が今季スーパーフォーミュラで大きな進歩を遂げられず、なおかつ角田が引き続き成績を残せば、これからもホンダのプログラムにおいて角田が“最優先事項”であり続けるという。すでにここまで多くの投資がなされている彼には、ホンダがアストンマーティンとの提携をスタートする2026年までF1に留まってほしいという意向もあるため、RBであろうと、“他のチーム”であろうと、角田がシートを確保し続けることを後押しすると見られているというのだ。
角田の去就ついて、オランダのF1専門サイト『RN365』はさらに楽観的な見方を示しており、「角田がRBのシートを守るために何もする必要がない理由」と題した記事において、アルファタウリから名称を変えたチームのコンセプトが、これまでのレッドブルのドライバー育成チームから、レッドブル同様に勝利を求めるチームに変更されたことが、この日本人の立場を有利なものにすると指摘する。
同メディアは、ピーター・バイエルCEOの「我々にはひとりの経験豊かなドライバーおり、もうひとりの若いドライバーの成長を助ける」というコメントに対し、現在のRBは両ドライバーともに経験を積んでいると反論。その中でベテランのリカルドについては、セルジオ・ペレスの成績次第で空くとされるレッドブルの次期ドライバー候補のひとりとされており、さらにその実績からメルセデスのシート争奪戦にも加わる可能性が示唆されている。

対して角田は、自身はレッドブル昇格を目標に挙げているものの、こちらのシート争いでは現時点でローソンよりも序列は下と多くの海外メディアは見ているため、彼は「レッドブルのグループ内でしばしば起きている無慈悲な椅子取りゲームには直面しない」のだという。

では、RB内での立場はどうかといえば、バイエルCEOが2025年は外部からドライバーを招聘しないという方針を明らかにしている中で、角田は経験と若さの両方を兼ね備えており、さらに昨季は大きな成長を遂げたことで、実力的にもチームの希望を満たしている。そして今季は、「同じチームで4シーズン目を過ごす角田の価値は、より進化したRBチームで経験を積むことで、さらに高められる」(同メディア)。

とはいえ、全ては角田が昨季に見せた成長ぶりやパフォーマンスを今季も継続して発揮する(もちろん成績は昨季を上回る必要がある)ことが最低条件である。そして同メディアは、もしリカルドがトップチーム行きよりもRB残留こそが最適の選択肢であると判断した場合には、角田はローソンをまじえた三つ巴の争奪戦に巻き込まれることになると指摘するが、ドライバー市場でのリカルドの価値を考えると、その可能性は低いとしている。

構成●THE DIGEST編集部

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