【J2リーグ2024】戦力ダウンが心配なクラブ6選(3位~1位)

ピーター・ウタカ(左)楠本卓海(右)写真:Getty Images

開幕を目前に控える2024シーズンの明治安田J2リーグ。各クラブ既存戦力の底上げはもちろん、新戦力がチームにどんなプラスαをもたらしてくれるのか今から楽しみだ。しかし、冬の移籍を経て大きく戦力アップが図れたクラブもある一方、昨年躍動した主力がチームを離れたクラブもまた多くある。

2023シーズンは、補強を禁じられたジュビロ磐田と冬にFW佐藤凌我ら複数の主力選手を失っていた東京ヴェルディの2クラブが昇格。戦力流出や補強の成否は必ずしも順位に直結するとは言い難いが、シーズンを展望する上では無視できない要素と言えよう。

ここでは、そんな戦力ダウンが懸念される6クラブを選出しランキング形式で紹介していく。前回の6位~4位に続き、3位~1位を見ていこう。なお、順位が高いほど戦力ダウンの心配が大きいと評価している。

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水戸ホーリーホック 写真:Getty Images

3位:水戸ホーリーホック

主なOUT選手

  • DF松田佳大:京都サンガへ完全移籍
  • MF小原基樹:サンフレッチェ広島へ復帰
  • MF鵜木郁哉:柏レイソルへ復帰
  • MF武田英寿:浦和レッズへ復帰
  • GK山口瑠伊:町田ゼルビアへ完全移籍

主なIN選手

  • MF野瀬龍世:ギラヴァンツ北九州より完全移籍
  • MF甲田英將:名古屋グランパスより期限付き移籍

2023シーズンは17位フィニッシュと、直近5シーズンで最も低い順位での着地となった水戸ホーリーホック。悲願の初昇格に向け2024シーズンは巻き返しを図りたいが、昨年の主力選手の多くがチームを離れる厳しい冬を過ごしている。特に大きな影響を懸念されるのが、MF武田英寿とMF小原基樹の期限満了に伴う所属元への復帰だ。

武田は昨季チームトップとなる9アシストをマーク。流れの中はもちろん、セットプレーでも高精度のボールを供給するなど貢献している。小原も昨年6ゴール4アシストと多くのゴールに絡み、攻撃面で大いに存在感を発揮していた。両選手とも期限付きでの所属だったことから、昨季限りでチームを去るのは決まっていたようなもの。しかし、同じくチームを去ったMF鵜木郁哉も含め計30近いゴールに直接関わった中盤の選手たちを失ったことによる得点力の低下は大きな課題となり得る。

チャンスメイクの面は、新戦力であるMF野瀬龍世やMF甲田英將といった若い選手たちの活躍に期待できるが、開幕から即戦力として活躍できるかは不確定要素と言わざるを得ない。守備陣の主力では、DF松田佳大とGK山口瑠偉がともに今季J1で戦うクラブへ移籍している。京都サンガへ移籍した松田は、昨季序盤J3のFC大阪でプレーするも6月に水戸へ帰還。その後22試合に出場し、190cmの長身を活かした働きで貢献した。J1初参戦となる町田ゼルビアへ移籍した山口も正GKとして下位に苦しむチーム支えていただけに、この2選手の流出によって守備面でも不安が残る。新戦力としては、高卒や大卒ルーキーも数多く加わった。しかし、流出した主力選手の穴をすぐに埋められるか懸念されることから、戦力ダウンが心配なクラブ3位とした。

ヴァンフォーレ甲府 写真:Getty Images

2位:ヴァンフォーレ甲府

主なOUT選手

  • DF三浦颯太:川崎フロンターレへ完全移籍
  • MF長谷川元希:アルビレックス新潟へ完全移籍
  • MF松本凪生:セレッソ大阪に復帰後、モンテディオ山形へ期限付き移籍
  • DF蓮川壮大:FC東京に復帰後、清水エスパルスへ期限付き移籍
  • DF井上詩音:名古屋グランパスへ完全移籍

主なIN選手

  • FWファビアン・ゴンザレス:ジュビロ磐田より完全移籍
  • MFアダイウトン:FC東京より完全移籍
  • DF今津佑太:V・ファーレン長崎より完全移籍

2022シーズンに天皇杯を制したヴァンフォーレ甲府。昨年はJ1昇格こそ叶わなかったが上位争いを演じ、天皇杯優勝で出場権を得たAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ではグループリーグにおいて堂々の首位通過を果たしている。誰もが2024シーズンはJ2でそしてアジアの舞台でさらに飛躍する甲府を楽しみにしていたことだろう。しかし、そんなチームの好調ぶりは所属選手の注目度を上げる結果となり、今冬は多くの選手が流出している。

まず、年間を通して7ゴール6アシストと活躍を見せたMF長谷川元希がアルビレックス新潟へ移籍。攻撃陣ではFWピーター・ウタカがチームに残り、さらに新戦力としてFWアダイウトンやFWファビアン・ゴンザレスといった即戦力を獲得したが、それでもなお昨季攻撃の中核を担った長谷川流出の影響は大きい。また、昨季がルーキーイヤーのDF三浦颯太とDF井上詩音も揃ってJ1クラブへ個人昇格。ともに大卒ルーキーながら初年度から出場機会を多く掴み、早くもチームにとって不可欠な選手となっていただけに年齢も相まってクラブにとっては残念な移籍であることは間違いない。そのほか、期限付きで所属していたMF松本凪生やDF蓮川壮大もチームを離れ、それぞれ同カテゴリーの昇格を争うクラブで新シーズンをスタートさせることとなっている。

チームの中核に加え、昨季華々しい活躍を見せた若手の移籍。さらには、期限満了に伴いチームを去った選手たちのライバルクラブへの加入と甲府にとっては厳しい冬になったと言わざるを得ないことから、戦力ダウンが心配なクラブ2位とした。複数獲得した外国籍選手が開幕までにどれだけフィットしているか。流出してしまった選手の穴埋めではなく、チームにプラスαをもたらす働きに期待したいものだ。


Jリーグの試合球 写真:Getty Images

1位:いわきFC

主なOUT選手

  • MF宮本英治:アルビレックス新潟へ完全移籍
  • DF遠藤凌:アルビレックス新潟へ復帰
  • DF家泉怜依:北海道コンサドーレ札幌へ完全移籍
  • MF岩渕弘人:ファジアーノ岡山へ完全移籍
  • FW有田稜:モンテディオ山形へ完全移籍
  • MF永井颯太:東京ヴェルディへ完全移籍
  • DF河村匠:東京ヴェルディへ完全移籍

主なIN選手

  • DF照山颯人:FC今治より完全移籍
  • MF西川潤:セレッソ大阪より期限付き移籍

2023シーズン、クラブ史上初となるJ2へ挑んだいわきFC。5度の連敗や清水エスパルス戦での大敗などもあり結果は18位と、J2の難しさを身をもって体感したシーズンだったと言えよう。しかし、順位とは裏腹に選手個々に対する評価は高く、その影響もあってか今冬は複数の主力選手がJ1やJ2クラブへ流出している。守備陣では、抜群の身体能力を誇るDF家泉怜依が北海道コンサドーレ札幌へ、昨年左サイドで躍動したDF河村匠がJ1復帰を果たした東京ヴェルディへそれぞれ移籍。ほかには新潟より期限付きで所属していたDF遠藤凌もチームを去った。中盤でも、昨年41試合とほぼ全試合に出場したMF宮本英治がアルビレックス新潟へ、細かいボールタッチのドリブルなどで攻撃にアクセントをつけていたMF永井颯太が東京Vへ移籍しており、期限満了に伴う所属元への復帰も含めて多くの選手がJ1へと活躍の場を移すこととなった。

また、その他流出してしまった選手の移籍先を見ても、昨季7ゴールと存在感を見せたMF岩渕弘人がファジアーノ岡山へ、2022シーズンはゴールで、2023シーズンはアシストで攻撃を盛り立てたFW有田稜がモンテディオ山形へ移籍と、近年J2で上位争いを繰り広げるクラブへの移籍も目立つ。もちろん、J1クラブや同カテゴリーの上位クラブからのオファーが多いことはそのままクラブの育成能力に対する評価とも言えよう。しかし、一度にこれほどの選手が移籍してしまうのは、ファンやサポーターにとっても受け入れがたい事象と言える。

新戦力としては、MF西川潤ら複数の選手をJ1クラブから期限付きで獲得している。いずれもJ1の各クラブが将来を期待する若手なだけに、いわきでの覚醒も十分期待できる。また、今治から加入のDF照山颯人にも遠藤や家泉の穴を埋める活躍に期待がかかる。とはいえ、昨年多くの試合でスタメンに名を連ねた選手のうち、実に半数近くがチームを離れたことによる影響は計り知れないことから、戦力ダウンが心配なクラブ1位とした。

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