ダイハツ新社長にトヨタの井上氏、現社長・会長退任 認証不正で体制刷新

Maki Shiraki

[東京 13日 ロイター] - トヨタ自動車と子会社のダイハツ工業は13日、ダイハツの新社長にトヨタの井上雅宏・中南米本部長(60)が就任すると発表した。トヨタからは社長のほか、副社長、取締役の計3人を送り込む。ダイハツの奥平総一郎社長(67)と松林淳会長(69)ら取締役計5人が退任し、会長職は廃止する。いずれも3月1日付。経営体制を刷新し、認証取得不正の再発防止に取り組む。

トヨタの佐藤恒治社長は会見で、井上氏が中南米事業の構造改革を推進したことに触れ、「新興国を中心に言葉の壁も乗り越えながら、かなり厳しい事業環境の中でもコミュニケーションを大切にして取り組んできたリーダー」と評価。ダイハツの現場とも心を一つにして再出発できると期待を込めた。

不正の背景には、トヨタから現場への重圧もあったと社内外から指摘されているが、佐藤社長は今回の人選について「(出身が)トヨタから、ダイハツからということよりも、現場で経営を指揮することを大事に考えた時に適任者は誰かということで、グループ全体の中から人選した」と述べた。

ダイハツの星加宏昌氏は代表取締役副社長のまま留任するが、トヨタからは生産子会社トヨタ自動車九州の副社長である桑田正規氏が副社長に、トヨタのカスタマーファースト推進本部副本部長の柳景子氏が非常勤の取締役に就く。

入社以来の「約半分が新興国」での勤務という井上氏は、相手の信頼を得るために自ら話しかけることを意識してきたといい、ダイハツでも「自ら現場に出向き、自分から話しかけて信頼を得て、現場の本音の話を聞くことから始めたい」とし、ワンチームで再生することが使命、と意気込みを語った。

スズキといすゞ自動車も参画する商用車協業会社「CJPT」からは脱退し、「再発防止に最優先で取り組む」(井上氏)。4月には事業領域などの新体制方針を発表する予定。

ダイハツの不正を巡っては、第三者委員会が問題の真因は過度な「短期開発」などと指摘、不正の責任は「経営陣にある」と結論づけていた。だが、佐藤社長は、今回の経営体制変更は「人事的な処分ではない」と説明。奥平氏本人からは辞任の意向があったとも明かしたが、「引責辞任ではない」と話した。

佐藤社長はまた、ダイハツへの「負荷を適正化する」として同社の事業領域を「軽自動車に軸を置いた会社と定め、海外事業は企画・開発・生産をトヨタからの委託に変更する方向で詳細な検討を進める」とした。将来的には「小型車を中心にラストワンマイルまで視野に入れたモビリティカンパニーという役割を担えるよう、あるべき姿を検討していく」と語った。

ダイハツの在り方について、佐藤社長はトヨタとの一体化も含めて検討してきたが、現場や販売店、地域などの声を聞く中で100年を超えるダイハツの歴史の中で守ってきたものを実感し、「開発の本来の役割をもう一度任せていただけないか」という結論に至り、企業として残すことを決断したと語った。

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