デマント・ジャパンが2024年の戦略を発表、ACTをはじめ新製品を続々と発売予定

デマント・ジャパンは1月18日、同社のビジネスパートナー向けの「デマント・ジャパン キックオフミーティング2024」を品川インターシティホール(東京都港区)で開催した。ステージには同社幹部のほか、デンマークから来日したデマント本社(Demant A/S)の幹部2氏も登壇。補聴器販売店を中心とする約200人の聴衆を前に、2023年の振り返りと24年の製品・営業・マーケティングの戦略について説明した。

補聴器事業も聴覚診断機器事業も、2023年の販売台数は過去最高記録

「日本補聴器工業会のデータによると、国内補聴器市場における23年の伸びは、年間の数字でプラスの8.7%。出荷台数は約65万台であり、力強く成長した1年だったといえる」。23年における市場の状況を、デマント・ジャパン社長の齋藤徹氏はこのようにまとめる。

デマント本社の調べでは、23年1~9月にかけて、グローバルの補聴器市場は22年比でプラス6%成長しているとのこと。デマント本社でインターナショナルセールス バイスプレジデントを務めるソーレン・コールディング氏は、「補聴器や聴覚ケアの市場は、長期にわたって、金額ベースで2~4%の成長を続けている」とした上で、補聴器市場は、その時々の経済状況に比較的影響を受けにくく安定しており、高齢化に伴って拡大していると解説した。

このような状況下で、デマント・ジャパンは補聴器事業の3ブランド(オーティコン、バーナフォン、フィリップス)全てで過去最高の販売台数を記録。聴覚診断機器事業のダイアテックカンパニーも3年連続の売上増を達成した。昨年1月には、「フィリップスヒアリンク3030、2020」が「2022年日経優秀製品・サービス賞 日経産業新聞賞」(主催は日本経済新聞社)を受賞している。また、新製品としては、オーティコン リアルの販売を4月に開始した。5月に「フィリップス ヒアリンク 9040、7040、5040」を発売した。

23年の業績が好調だったのは、デマント本社も同様。ヘンリック・ブランボー氏(インターナショナルセールス バイスプレジデント)は「コロナ禍の2020年を除いて、デマントの売上高はこの20年間ずっと右肩上がりに伸びている」と説明した上で、その背景には「イノベーションリーダーであり続けること」「顧客にとって最も協力的で即応性の高いパートナーとして振る舞っていること」「迅速で信頼性の高い生産ラインを確保していること」の3点があるとアピールした。

補聴器では3ブランドを展開、診断機器との連携提案も強化する

では、24年の補聴器/聴覚診断機器の事業をデマントはどのように進めていくのか――。コールディング氏が強調するのは、「聴覚ヘルスの核はあくまでもオーディオロジー(聴覚学)にある」とのこと。それを補助する機能として「フィッティングとカウンセリング」「モバイルデバイスとの接続性」「充電式へのシフト」を進めていくという。

一方、齋藤氏は「デマント・ジャパンが目指すべき方向性は、プロフェッショナルな聴覚ケアサービスだ」と強調し、具体的な目標として「Beyond 15%」(15%を超えて)を掲げる。この15%とは、“聞こえの悩み”を持つ日本人の現状での補聴器装用率のこと。デマントのパーパス(存在意義)である「Life-changing hearing health」(聴覚ヘルスケアを通して人々の人生を大きく変える)を果たすには、欧米での装用率(60%)との差を少しでも縮める必要があるという考えだ。

そのための施策の一つとして、補聴器については3ブランドの位置付けが整理された。「オーティコンはフラッグシップブランドで、小児難聴から重度難聴など、あらゆる聴力に対応できるラインアップをそろえている。バーナフォンは、比較的に低価格帯のものを取り揃え親しみやすいブランド。フィリップスはフィリップスのブランド力や信頼性をベースに消費者に訴求していく」と話す。

また、難聴に対する社会の関心の高まりと、補聴器購入に助成金を出す地方自治体の増加を追い風に、啓発・認知向上・市場創出への取り組みにもさらに注力。ヘルスケアイベントへの出展、メディアへの露出、業界内の人材育成への貢献、キーオピニオンリーダー(KOL)を交えた共同研究実施に向けたネットワーク構築などの施策が予定されている。

さらに、補聴器販売店向けの施策として新しいパートナーシッププログラム「OPA」への切り替えを進めるとともに、集客支援のためのアウトバウンドコールセンターをデマント・ジャパン内に創設。業務効率化に役立つさまざまなDXサービスを提供するほか、補聴器と聴覚診断機器を組み合わせたワンストップソリューションを提案することによって、販売店がより高い付加価値を得られるようにしていく。補聴器修理価格が統一化され、サービス内容を補聴器ユーザーに説明することもより簡単になると齋藤氏は見ている。

24年にも、新しい製品が登場する。詳細はまだ非公表だが、16年のオープンサウンドナビゲーター(雑音除去と会話明瞭化)と20年のモアサウンド・インテリジェンス(音の情景の処理)に続くオープンサウンドパラダイムの技術が搭載される予定だ。

聴覚診断機器に関連した新製品としては、このキックオフミーティングと同じ1月18日に「ACT:Audible Contrast Threshold(可聴コントラスト閾値)の販売も始まった。これは、雑音下での聴取能を数値化できるソフトウェアで、この測定結果により、補聴器の雑音低減設定を最適化し、補聴器機能の初期設定(ファーストフィット)の向上が期待できる。

今年も、エンドユーザー向け、専門家向けに様々なイベントを予定しており、「24年においても、1人でも多くの難聴者の方々をサポートできるよう、ビジネスパートナーとともに活動していきたい」と齋藤氏は述べている。キックオフミーティングの最後には、補聴器販売店表彰のセレモニーも行われた。

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