銃撃戦に巻き込まれ、市民が病院に相次いで到着──コンゴ民主共和国、北キブ州で戦闘が激化

南キブ州にあるミノバ総合病院=2023年9月 Ⓒ Charly Kasereka/MSF

コンゴ民主共和国東部の北キブ州で発生した武力衝突の影響で数千人が避難しており、国境なき医師団(MSF)が支援する医療施設には、紛争により負傷した患者が相次いで到着している。

市民と医療施設が銃撃戦に巻き込まれるなか、MSFはすべての紛争当事者に対し、患者、医療スタッフ、医療施設の安全、市民の保護、人道援助団体の自由なアクセスを確保するよう呼びかけている。

戦闘から逃れて病院へ避難

1月22日以降の数週間、同地域のさまざまな武装グループ間の武力衝突が激化。マシシ郡ムウェソとその周辺では、約1万人が家を追われ、安全を求めてムウェソ総合病院に避難した 。

1月下旬以降の2週間、MSFは保健省が運営する病院で約67人の紛争負傷者を治療した。そのほとんどは銃か爆発による負傷だった。これらの患者のうち50人以上が一般市民であり、そのうち21人が15歳未満の子どもだった。さらに、MSFは避難民の心のケアに当たると同時に、仮設シェルターを提供し、浄水フィルターと石けんの配布も行った。

ここ数日はムウェソで戦闘が激化しているため、病院に避難している人の数は減少し、多くの人がキチャンガ、カツィル、ニャンザレ、ピンガ、カレンベ、カシュンガ方面に逃げている。しかし、親を殺された子どもを含め、少なくとも2500人がムウェソ病院で避難生活を送っている。

MSFのプロジェクト・コーディネーター、チャグラー・タヒログルはこう話す。

病院は対応しきれない状態になっています。何千人もの人びとが身を寄せ、戦闘から身を守ろうとしています。 保健省とともに最善を尽くしていますが、食料などの必需品も足りていません。

紛争が南部に波及

一方、衝突は南キブ州でも新たな避難の波を引き起こしている。国連によると南キブ州では2022年12月以降15万5000人近くの人びとが避難しているが、ここ数日パニックに陥った数千人が州境の町ブウェレマナやさらに南のミノバに到着している。

MSFが支援するミノバ総合病院では、医療スタッフが2月2日から6日にかけて、子ども4人、女性10人、手術を必要とする12人を含む、約30人の負傷者を治療した。

北キブ州の州都ゴマと、西に27キロ離れたシャシャの町を結ぶ道路は、現在戦闘のため通行不能になっている。そのため、北キブ南部の診療所から南キブ州のミノバ総合病院や他の医療施設に患者が紹介されている状況だ。医療施設は、性暴力の被害者の増加も含め、患者であふれかえっている。

「現在、ミノバの医療施設はひっ迫しており、マラリアや下痢性疾患、栄養失調、呼吸器感染症といった一般的な症状を治療するための必須医薬品も不足しています。また、この4週間で、ミノバの病院で治療を受けた性暴力の症例数は倍増しました」と、南キブで活動するMSFの緊急対応コーディネーター、ラビア・ベンアリは話す。

避難民が暮らすブウェレマナのキャンプの様子=2023年5月 Ⓒ Igor Barbero/MSF

銃撃戦に巻き込まれ…

戦闘が激化し、ムウェソとミノバの都市に近づくにつれ、一般市民や医療スタッフ、患者の安全がますます危険にさらされている。

ムウェソ市の中心部では、複数の家屋が爆発の被害に遭い、一般市民が死亡。1月22日の週だけでも、子ども1人を含む推定20人の市民が死亡し、さらに41人が負傷している。1月最終週には、銃撃戦による銃弾がMSFの拠点とムウェソ病院を直撃し、患者のケアの担当者1人が負傷した。2月2日には、ムウェソ病院とMSFの拠点の 間の地域が爆発の被害に遭っている。

MSFは、現場にいるチームの安全を考慮し、一部のスタッフをムウェソとミノバから一時的に別の場所に移すことにした。

「ムウェソ病院と地域にある9カ所の診療所には、遠隔からの支援を続けています。MSFは、治安に問題がなくなれば、すぐに戻る予定です」とタヒログルは話し、こう続けた。

ただ、医療施設が保護されず、医療スタッフが銃撃戦に巻き込まれるような状況では、私たちも医療活動を行うことはできません。

コンゴ民主共和国、北キブ州で起きていることとは?

北キブ州では、2022年3月以降、反政府武装勢力「3月23日運動(M23)」の復活と関連した武力衝突の激化によって、100万人余りの人びとが自宅を追われた。30年以上にわたる武力紛争と人びとの大規模な避難により、以前から荒廃している同州は深刻な人道危機に見舞われている。

コンゴ民主共和国でのMSFの活動

MSFは、北キブ州マシシ郡のムウェソ保健区域で、2023年2月に一時避難した約3万人を含め、戦闘の被害を受けた人びとに診療と人道援助を提供。マシシ保健区域では、戦闘により道路が寸断され、物資の搬入が困難であるにもかかわらず、マシシ総合病院と5カ所の診療所の支援を続けている。

南キブ州では2023年前半に、ミノバのMSFのチームが北キブでの紛争の影響に対応。事態の悪化を受けて、2023年12月、避難民が定住する9カ所で新たな緊急対応を開始した。

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