クボタ2期ぶり最高益の理由 水道インフラの老朽化が追い風に?

クボタの業績が回復しています。2022年度は最終減益となりましたが、2023年度は最高益を予想しています。株価は上場来高値(2733円、2021年5月)から押される展開が続いており、当面は2024年度の業績予想が注目を集めそうです。

【クボタの業績】

※2023年3月期(予想)は同第3四半期時点における同社の予想

出所:クボタ 決算短信

【クボタの株価(月足、2019年1月~2024年1月)】

出所:Investing.comより著者作成

クボタは2023年7月、市場評価性(PBR基準)から「JPXプライム150指数」に選出されました。これは純資産総額に照らし投資家の人気が高いことを表しています。

クボタとはどのような企業なのでしょうか。概要と業績を押さえましょう。また祖業でもあるクボタの水ビジネスについても紹介します。

農機世界3位 インドで進出強める

クボタはトラクタやコンバインといった農業機械の大手です。また油圧ショベルなどの建設機械のほか、産業用や発電機用のエンジンも手掛けています。

クボタの農業機械のシェアは世界3位で、特にアジア向けの販売が多い特徴があります。農業機械の市場規模はトラクタが過半を占めており、トラクタはインドや中国といったアジアで多く販売されています。市場規模の大きいアジアで基盤を持つことはクボタの強みの一つです。

【農業機械メーカーの売上高と地域構成比(2021年度)】

※農業機械部門の売上高

※ディアは米ディア・アンド・カンパニー、CNHは英CNHインダストリアル

出所:農林水産省 食料安全保障月報(2022年11月) 我が国と世界の農業機械をめぐる動向

【農業機械の市場規模】

出所:農林水産省 食料安全保障月報(2022年11月) 我が国と世界の農業機械をめぐる動向より著者作成

なお、農業機械以外も含めた地域別の売上高では北米が最大です。

【地域別の売上高(2022年度)】
・日本:6024億円
・北米:1兆1020億円
・欧州:3380億円
・アジア(日本除く):5330億円

出所:クボタ 決算短信

クボタはインドへの進出を強めています。2008年に現地法人を設立し、以降は東南アジアで製造したトラクタの輸入販売を手掛けていました。2018年にはインドのトラクタメーカーであるエスコーツ(現・エスコーツクボタ)と提携し、現地での生産を始めます。クボタは2020年にエスコーツへ出資し、2022年の追加出資を経て子会社化しました。

インドは2023年に人口世界一になったと推定されています。GDPは日本に次いで世界5位にあり、その主要産業は農業です。農機を手掛けるクボタにとって、インドは成長が見込める重要な地域といえるでしょう。

【名目GDPランキング上位5か国(2024年推計)】
・アメリカ:27兆9666億ドル
・中国:18兆5600億ドル
・ドイツ:4兆7009億ドル
・日本:4兆2862億ドル
・インド:4兆1054億ドル

出所:IMF 世界経済見通しデータベース(2023年10月)

値上げ浸透で最高益 2023年度は実りの年に

クボタは2年ぶりの最高益が見込まれています。

2021年度はコロナ禍の影響を受けつつも需要は底堅く、売上高が初の2兆円を突破し最高益となりました。しかし翌期は原材料価格や物流費の増加に悩まされます。値上げでは吸収できず営業減益となり、最終利益も減少しました。

2023年度もコストの増加傾向は続いています。しかし増加幅には落ち着きが見られます。値上げによる増益がコスト増加分を上回り、第3四半期までに前年同期比789億円の増益となっています。

【営業利益の増減要因(前年同期比)】

※その他は物流費、研究費、減価償却費など
※2023年度の通期の営業利益は2950億円(第3四半期時点の予想)

出所:クボタ 決算説明会資料

好調な海外も利益を押し上げました。北米と欧州で農業機械や建設機械が伸びたほか、インドでは畑作向けが堅調でした。

【地域別、機械の売上高の前年同期比(2023年度第3四半期)】

出所:クボタ 決算説明会資料より著者作成

なお、クボタは建設機械について欧州では減速感が見られるほか、北米でも市場の伸びはひと段落したと分析しています。

クボタの海外売上高比率は77.5%に上ります(2022年12月期)。翌期も業績を伸ばせるかどうかは、引き続き海外も重要なカギとなりそうです。

第二の収益源は「水」?水道の老朽化が追い風

クボタの業績は主に農業機械や建設機械といった機械製品によって支えられています。その機械に次ぐクボタ第二の収益源が水ビジネスです。実は水ビジネスはクボタの祖業であり、創業時は水道用の鋳鉄管を製造していました。

クボタには3つの事業セグメントがあり、うち水・環境セグメントには水道管や浄化槽、水処理プラントなどで構成されています。また建築に用いられる鋼管杭や石油化学製品の製造に用いられる反応管など、水関連以外の製品も含まれます。

【セグメント別の業績(2022年12月期)】

出所:クボタ 決算短信

水道管の需要は増加が見込まれています。2019年10月に水道法が改正され、水道施設の適切な管理が義務付けられることとなりました(出所:厚生労働省 水道法の改正について)。

国内の水道インフラは老朽化が進んでいます。法定耐用年数を超えた水道管は2020年に15万キロメートルに達し、総延長に対する割合(管路経年化率)は20%を突破しました。

【管路経年化率の推移】

出所:厚生労働省 全国水道関係担当者会議(2022年度)資料より著者作成

水道事業は従来、主に自治体が運営してきました。近年は民間企業に委託する官民連携の動きが進んでいます。クボタは設計から施工まで請け負うDB方式(デザインビルド方式)に強みがあり、全国で受注を獲得しています(参考:クボタ 管路の設計・施工一括発注(DB)方式 実績のご紹介、次世代に安心で安全な水を届ける)。水道の老朽化と法改正から、クボタの水事業は当面は追い風が吹きそうです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。


© 株式会社想研