【2024年引退調教師(前編)】安田隆行、飯田雄三、高橋裕師の成績を振り返り「勝負レース」の気配を探る

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2024年は7名の調教師が勇退

春は卒業、入学の季節。私が大学入学に伴い故郷秋田から東京へ向かってから、はや四半世紀。時の流れの早さにはいつも驚かされる。奇しくも着陸直前にイヤホンから聞こえてきたのはシャ乱Qの「上・京・物・語」。歌詞中の「いつの日か東京で夢叶え」を果たすべく、ずいぶん遠回りしたが、やりたかった仕事ができているのは幸せなことだとつくづく感じている。

さて、競馬界は免許更新の関係で2月末が別れの季節。今年は3月5日のレースをもって勇退となる。そこで、今回は業界を支え、盛り上げてくれた7名の調教師の成績や主な活躍馬、そして最後の馬券の狙い目を2週にわたって取り上げていきたい。

短距離界の鬼! 安田隆行調教師

まず初めに1953年3月5日うまれの安田隆行調教師。騎手時代はトウカイテイオーとのコンビで皐月賞、日本ダービーを制した印象が強く、また小倉で最多の重賞4勝を挙げており、いわば小倉の鬼でもあった。

1995年に調教師に転身、厩舎開業後は堅実かつ着実に成績を残し続け、2006年には30勝オーバーを達成。2009年には全国リーディング7位にまで躍進。その後も常に上位に位置し続けるトップトレーナーとなった。

2024年2月9日時点での成績は【965-892-736-5709】勝率11.6%、連対率22.4%、複勝率31.2%。キャリアハイは2019年の【62-47-33-209】で、この年は全国リーディングトレーナーに輝いた。

次に主な管理馬を振り返ってみる。ロードカナロアなど思い出深い名馬の名前や、近年はダノン軍団での活躍が目立つ。

<安田隆行厩舎 主な活躍馬一覧>
トランセンド(2006年産/24戦10勝/10、11年 JCD)
カレンチャン(2007年産/18戦9勝/11年 スプリンターズS)
ロードカナロア(2008年産/19戦13勝/12、13年 香港スプリント)
グレープブランデー(2008年産/39戦7勝/13年 フェブラリーS)
ダノンスマッシュ(2015年産/26戦11勝/21年 高松宮記念)
ダノンザキッド(2018年産/19戦3勝/20年 ホープフルS)
ダノンスコーピオン 現役(2019年産/14戦4勝/22年 NHKマイルC)

安田隆行調教師といえばロードカナロアを筆頭にカレンチャンなど短距離路線での活躍馬が多いイメージだが、事実、距離別の成績を見ると一目瞭然だ。

1300m以下【359-351-261-1805】
1400m~1600m【271-260-194-1492】
1700m~2000m【289-229-237-2014】
2100m以上【16-23-22-232】
障害戦【30-29-22-166】

平地であげた935勝のうち、359勝を1300m以下で挙げている。反対に2100m以上のレースはわずか16勝。イメージ以上に驚きの数字だった。

また、2023年以降の成績を見ると、デビュー当時厩舎に所属していた川田将雅騎手とのコンビでは【3-4-1-6】と連対率50%を記録している。ラスト3週だが、この師弟コンビでの出走があれば積極的に軸で狙ってみたい。

ウイン&マイネル軍団とともに! 飯田雄三調教師

次に1953年7月31日うまれの飯田雄三調教師。もともとはマサラッキ、キングジョイ、マルカラスカルなどを管理していた増本豊厩舎で調教助手をしており、2001年3月に調教師としては初出走を果たした。

2024年2月9日時点での成績は【320-328-339-3811】勝率6.7%、連対率13.5%、複勝率20.6%。キャリアハイは2007年の【19-15-13-138】で、全国リーディング76位という成績だった。

JRA重賞は3勝し、主な管理馬は転厩した馬もいるが、下記の通りになっている。

<飯田雄三厩舎 主な活躍馬一覧>
マイネルクロップ(2010年産/54戦9勝/15年 マーチS)
アイアンテーラー(2014年産/18戦6勝/18年 クイーン賞<船橋>)
テイエムサウスダン 現役(2017年産/29戦9勝/22年 根岸S)
ビーアストニッシド 現役(2019年産/16戦2勝/22年 スプリングS)

今年のフェブラリーSに出走予定がないだけに、GⅠ制覇を達成できなかったのは無念だが、2022年のフェブラリーSでは、逃げ粘ったテイエムサウスダンの2着は実に惜しかった。

個人的に飯田雄三調教師といえば、一口馬主クラブをすぐに想像してしまう。というのも、ウインやラフィアンのカタログを眺めていると、とにかく名前をよく目にしたからだ。320勝の内訳をみると、上位3馬主は予想通りの名前が並んだ。

1位 ウイン【26-34-19-207】
2位 サラブレッドクラブ・ラフィアン【26-31-27-229】
3位 竹園正継氏【23-10-27-256】

ちなみに4位はトーセン軍団の島川オーナーで【20-20-13-110】の成績だ。

ラスト3週の馬券面では岩田望来騎手を起用した場合は要注目だ。2023年以降、勝ち星はないが【0-3-2-4】で複勝率55.6%、複勝回収率151%あり、ヒモ穴として馬券に入れておきたい。

ディアドムスで挑んだUAEダービーが印象的 高橋裕調教師

前編のラストは1953年5月19日うまれの高橋裕調教師。八木沢勝美厩舎の調教助手として業界に携わり、1991年2月に調教師免許を取得、12月7日に初出走。3戦目で初勝利をあげた。

2024年2月9日時点の成績は【477-520-521-5527】勝率6.8%、連対率14.2%、複勝率21.5%。キャリアハイは2000年の【24-16-14-191】で、全国リーディングは28位だった。

主な活躍馬の筆頭にくるのはマイネルリマーク。というのも通算477勝のうち64勝をマイネルでおなじみのサラブレッドクラブ・ラフィアンで記録している。2位が28勝なので、いかにその数字がずば抜けているかが分かる。JRA重賞を制したのは下記の6頭だ。

<高橋裕厩舎 主な活躍馬一覧>
マイネルリマーク(1990年産/15戦2勝/93年 共同通信杯4歳S)
トキオエクセレント(1994年産/36戦5勝/97年 青葉賞)
ルネッサンス(1997年産/20戦5勝/00年 ラジオたんぱ賞)
バローネフォンテン(2000年産/30戦7勝/05年 東京オータムJ)
スキップジャック(2002年産/8戦2勝/04年 京王杯2歳S)
セイクリッドバレー(2006年産/50戦4勝/11年 新潟大賞典)
ディアドムス(2012年産/44戦7勝/14年 全日本2歳優駿<川崎>)

私が一番印象に残っているのがディアドムスだ。同馬は2014年に全日本2歳優駿(JpnⅠ)を優勝し、翌年はUAEダービーにも挑戦した。

高橋裕調教師のラスト3週は東京、中山競馬場の出走馬に狙いを定めたい。というのも2023年以降の11勝のうち5勝ずつを東京と中山で挙げており、完全に地元で優勢になっている。特に先にも紹介したラフィアンの馬は厩舎に3頭おり、出走機会があれば最後に狙ってみるのも面白そうだ。

《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。



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