大坂なおみ、今季2勝目を後押ししたのは「アザレンカの生き方」と「ジョコビッチのリターン」<SMASH>

妊娠・出産から復帰してきた女子テニス元世界1位の大坂なおみが、復帰4大会目の「カタール・オープン」(WTA1000)初戦で、カロリーヌ・ガルシア(フランス)に7-5、6-4で勝利。年始の「ブリスベン国際」の初戦以来となる、今季2勝目を手にした。

大坂とガルシアは、1月の全豪オープンで対戦したばかり。その時はガルシアのサービスがさえわたり、6-4、7-6(2)で第16シードが勝利した。

それから、1カ月後。反転したかのようなスコアで白星をつかんだ大坂は、「あの時よりも、はるかに良い選手になれていると感じる」と目じりを下げた。

試合後の大坂が、具体的に「良くなった」と感じ、ゆえに再戦の勝因として挙げたのは、大きく2点。

一つは、「集中力」だ。

「アブダビで負けた時は、本当に自分にがっかりした」という彼女が、今回は1時間28分の試合を通じて高い集中力を保てた。その理由やコツが何かあったかと問うと、彼女は「実は、アザレンカなの」と即答した。

この日、センターコートの3試合目に組まれた大坂対ガルシア戦の、その直前に試合をしていたのが、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)。マグダレナ・フレッチ(ポーランド)相手に2時間半超えの熱戦を制した“元世界にして一児の母”の姿を、大坂は共感とともに畏敬の念を抱き見ていたようだ。

「ビカ(アザレンカのニックネーム)を見て、とても刺激を受けた。彼女がいかに偉大なチャンピオンであるか、ともすると忘れかけていたと思う。でも今日、彼女の試合を見ながら、子どもの頃に彼女やセリーナ(・ウィリアムズ)たちの試合を見ていたこと、そして彼女が歩んできた足跡を思い出した。彼女の、全てのポイントで全力を尽くす姿を見たことで、大きな力をもらえた。彼女の試合が、自分の前で本当に良かったと思う」
そしてもう一つ、大坂が挙げた勝因が「リターン」。

実はリターンは、大坂が復帰後に大きく変えたプレーである。本人曰く、「スタイルというか、やり方を変えた」。そのお手本となったのは、男子世界1位にしてリターンの名手、ノバク・ジョコビッチだ。

「説明が難しいんだけれど……以前の私は、足を一歩、もう一歩と踏み出してから、ジャンプしていた」

そう言いながら、彼女は両手を足に見立て、交互に前に出して説明する。

「それが今は、両足でジャンプするようにしている。なぜって、ジョコビッチがそうしているから。彼は、世界で最もリターンが上手な選手の一人。真似しない手はないって思って!」

大坂にとってリターンは、キャリアを通じて、常に向上の必要性を感じてきたプレーだったという。

「ちょっと尊大な物言いになっちゃうけれど、私のサーブはツアーでもトップクラスだと思う。なのにリターンが良くないという事実に、ずっとフラストレーションを感じてきた」

だからこそ、オフシーズンにコーチとも話し合いを重ね、全豪で敗れた後も、リターンの改善に取り組んできたという。

偉大な先達たちをお手本とし、学び、かつての世界1位が、完全復帰への「大きなステップ」を踏み出した。

現地取材・文●内田暁

© 日本スポーツ企画出版社