首都圏の不動産価格「記録的な高値」だが…眼前に迫る「バブル崩壊」の阿鼻叫喚

(※画像はイメージです/PIXTA)

不動産。人口減少の続く日本で、なぜか価格高騰が続いています。この事態、「異様」と捉えますか? それとも、経済好調の証でしょうか。

首都圏の不動産バブル「五輪後は崩壊」もどこ吹く風

不動産研究所は東京、神奈川、埼玉、千葉を対象にした『首都圏 新築分譲マンション市場動向』(2023年のまとめ)を発表しました。同調査によると、平均価格は8,101万円(前年比で1,813万円のアップ)、平方メートル単価は122.6万円(27.5万円のアップ)と最高値を大幅に更新しています。

オリンピック後に暴落するとの言説はどこ吹く風、バブルどころか「バブル超え」となっている日本の不動産市場。なぜここまで上昇しているのか? 外国人投資家による資金流入もひとつの理由とされていますが、都心部の地価上昇、コロナ禍でより鮮明化した「日本人富裕層の増加」が背景にあるとも語られています。

売り上げアップの理由には「高級・高額住戸の積極供給」が挙げられ、東京23区は初めて平均で1億円の大台を突破しました。

そもそも日本のマンション価格、多少の下落時はあれど、アベノミクスが始まった2013年ごろから概ね右肩上がりの上昇を続けています。日本人の低賃金が長らく取り沙汰される一方で、住まいの価格はずっと好調なのです。

高齢者人口の増加、そして東京一極集中が進む日本社会。富裕層がマンションを買う理由のひとつが、「相続対策」です。タワマン節税こそ税務署から封じられつつありますが、現金よりも土地・家屋の相続税評価が低い状況は変わりありません。賃貸マンションの場合はさらに評価額が下がりますから、税金対策としての人気はいまだ健在です。

「不動産小口化商品」も度々話題になります。税金対策の代名詞ともいえる不動産ですが、相続のシーンでもっとも懸念されるのは「じゃあ、誰が物件を相続するの?」という点。現金と違って分割不可能かつ高額な遺産は、揉め事のタネになります。この問題を突いたのが、「不動産小口化商品」です。

売買の詳細は販売会社によって大きく異なりますので本記事では割愛しますが、たとえば1棟全体を数百口に分けている事業者も。1口あたりの金額は1,000万円以下に抑えられますから(200万円~で販売することも。もちろん、物件価格・口数によって価格は変動します)、「税金対策をしたい」「だけど資産は平等に遺したい」と考える富裕層を中心に、密かに人気が高まっているのです。

需要あるところに、供給あり。デベロッパーや不動産投資会社が熱心に物件を建て、投資家、そして快適な住まいを求める富裕層に購入を促していることは想像に難くないでしょう。人口減少・経済停滞が叫ばれるなか、なぜ不動産価格は上昇し続けているのか。データが示しているのは、格差社会ニッポンの様相でしょうか。

マンション急増「築古乱立時代」が訪れた日本の行く末

しかしマンションが建ったところで、人口減少が解消されるわけではありません。首都圏の不動産市場が好調である一方、日本全体に目を向ければ、近い将来「恐ろしいほどの物件余り」に直面することが明らかになっています。

2021年末現在、築30年~40年未満の分譲マンション戸数は133.5万戸、築40年~50年未満は94.5万戸、築50年以上が21.1万戸となっていますが、それはもう右肩上がりに築古マンションが増加していくと考えられているのです(国土交通省『高経年マンションストックの増加』)。

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2021年末・・・築30年~40年未満⇒133.5万戸/築40年~50年未満⇒94.5万戸/築50年以上⇒21.1万戸

2026年末・・・築30年~40年未満⇒161.9万戸/築40年~50年未満⇒109.3万戸/築50年以上⇒60.4万戸

2031年末・・・築30年~40年未満⇒176.3万戸/築40年~50年未満⇒133.5万戸/築50年以上⇒115.6万戸

2041年末・・・築30年~40年未満⇒163.0万戸/築40年~50年未満⇒176.3万戸/築50年以上⇒249.1万戸

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2041年には、築50年以上のマンションが約250万戸にまで達します。築年数は日本人がもっとも重要視する要素の一つですから、「築古乱立時代」が訪れたとき、所有物件売買のハードルが爆上がりすることは容易に推測されます。

同じく不動産バブルが報じられる中国では、「恒大」の問題を皮切りに、不動産開発会社のデフォルトが相次ぎました。そして暴騰を続ける日本の不動産市場。極東の地で乱立していく不動産の未来は、はたして明るいものなのでしょうか。よくも悪くも流動性の低い不動産を扱う以上、長期的な視座が求められていることは、間違いありません。

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