「手塚治虫文化賞」マンガ大賞を受賞 漫画家・魚豊が語る「チ。―地球の運動について―」を描いた理由

山崎怜奈(れなち)がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「山崎怜奈の誰かに話したかったこと。(ダレハナ)」(毎週月曜~木曜13:00~14:55)。1月30日(火)の放送では、漫画家の魚豊(うおと)さんが登場。漫画を描き始めたきっかけや、漫画の世界で生き残るために必要な心得を話しました。

パーソナリティの山崎怜奈

◆“勘違い”が多くの文化や悲劇を生んだ

魚豊さんの著作「チ。―地球の運動について―」は、「第26回手塚治虫文化賞 のマンガ大賞を受賞し、各界のマンガ好きの選考員が選ぶ「マンガ大賞」では2021年、2022年と2年連続で入賞。さらに、2024年にアニメ化することも発表されています。

本作では、中世から中近世までの天動説から地動説に移り変わる時代が舞台となっていますが、れなちが「なぜ、このテーマを扱おうと思ったのですか?」と伺うと、「最初は“知性と暴力の関係性”について描きたくて、良いモチーフを探していたときに地動説の宗教裁判などを思い出して、それらを調べていくと“後世の勘違い”を含めた歴史の流れがあったので、その史実をフィクションで描いたら、さらに面白くなるのではと思って」と話します。

魚豊さんが、これまでの作品のなかで描いてきたのが“真実のあり方”について。勘違いからさまざまな真実が生まれ、詩や小説が生まれていく様に深い興味を覚えたと言い、「勘違いは人間の特異な特徴。それがいろいろな文化や悲劇、喜劇を生んだ。そこに迫りたいというのはあった」と語ります。

◆漫画界で生き残るために

子どもの頃から絵を描くのが好きだったという魚豊さん。本格的に漫画家になろうと思ったきっかけは、漫画家デビューを目指す2人の若者を描いた物語「バクマン。」を読んでからだそう。

そこで、れなちが「『バクマン。』って、すごくシビアな世界を描いているじゃないですか。そこにあえて踏み込もうと思った理由は?」と尋ねると、魚豊さんからは「暇だったから(笑)」との意外な回答が。というのも、「(当時は)部活をやっていなくて。でも、友達は部活に入っているから遊べなくなってしまって。やることもないし、絵を描くのは好きだったから“始めてみようかな”って感じで」と振り返ります。

一方、成熟期を迎え、シビアな競争を強いられる漫画の世界で生き残っていく方法について聞くと、「これは自分に対しても思うんですけど、結局は(作品に)“魂があるかどうか”が大事になってくると思っています。情報が増えていくなかで、AI(人工知能)が学習できない、言語化が難しい“魂”のようなものを作品の背景に感じ取れるかどうかが重要な気がします。だから、その人が本当に好きなことを描くべきだと思います。そのほうが読む人に響くと思う」と持論を述べました。

<番組概要>
番組名:山崎怜奈の誰かに話したかったこと。
放送日時:毎週月~木曜 13:00~14:55
パーソナリティ:山崎怜奈
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/darehana/

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