「エディオンピースウイング広島」近隣に暮らす1人の女性の想い

J1サンフレッチェ広島の本拠地「エディオンピースウイング広島」。近隣に暮らす1人の女性を通して、地元で何が起きているかを考えます。サッカースタジアム脇の歩道を歩く1人の女性。

Q.うるさいなぁと感じたことは?

「いままで?きょう?きょうはねぇ 静かでしたよ」

基町アパートの住人新田 正子さんは、90歳。住まいは、スタジアムの向かいにあります。

独立した子ども達とは別居しての、1人暮らしです。翌日の「こけら落とし」のリハーサルが繰り返されていました。

■Q.聞こえますか?

「聞こえます よく」

■新田 正子さん

「しょうがないしか言いようがない。私が財産でもたくさん持っていて転居できるんだったらまだ動けるからするかもわかりませんけどね。一番前は不安ですよ。もうこの年ですし引っ越しは大変なんだから」

福岡県出身の新田さんは、結婚を機に広島市へ。しかし自宅を火災で失い、基町にあった公営住宅に入居します。原爆で壊滅した基町一帯。広島市などは、戦災で焼け出された人たちの為に、公営住宅を建設していました。

■新田 正子さん

「なんでも共同ですから炊事場も共同。よく生活したと思う。そんな生活したことなかった(火事で)焼け出されたから」

基町アパートの中心にある大きな公園。

新田さんの楽しみ。それは、地元の人達とのグラウンドゴルフです。

■地元の人

「新田さんはすごく飛ばしてです」「飛ばし屋です」

住民には欠かせぬ、交流の場です。競技の後に向かったのは、もうひとつの楽しみ。

アパートのショッピングセンターにある、行きつけの店です。

もうひとつの趣味は、カラオケです。自慢の歌声を、店主に披露。日々の生活を満喫することが、健康維持の秘訣です。

■新田 正子さん

「気心が知れている。住み慣れたら 住めば都。よその所に行って知らない所に行って先が短いのに。(基町に)来てから結局住み慣れた町になった。ご縁があったと思って(基町を)大事にしようと思う」

そして迎えた、「こけら落とし」の日。スタジアムは、2万6000人の熱気に包まれていました。

立ち入り禁止基町アパート一帯は、住民以外通り抜け禁止。広島市は音量を計測して、近隣への影響を調べていました。新田さんは、目と鼻の先での試合を、テレビで視聴します。

■新田 正子さん

「どっちかが点を入れたらワァ~っとなるんですよね」

そして、沸き上がる歓声と共に鳴り響いた、キックオフのホイッスル。

Q.「今 窓開けているんですけど 音気になります?」

新田さん「今 なにも。おたくは?」

Q.「そんなに気にならない。運動会やっているのかな?ぐらい。」

歓声を聞こうと、歩道に出た時でした。

■サンフレッチェ職員「市役所ではないですよ」

■サンフレッチェ広島信吾 社長「サンフレッチェ広島の社長です」

周囲での音量を確認していた、サンフレッチェ広島の社長でした。

■新田 正子さん

「ドンドンドアを叩くんじゃあないから我慢しなきゃダメかなと」

■サンフレッチェ広島仙田信吾 社長

「申し訳ございません。我々も地元の方のご理解が1番大事なので一生懸命やっていきますから」

■新田 正子さん

「ご成功お祈りいたします」

■サンフレッチェ広島仙田信吾 社長

「ご理解ありがとうございます」

サポーター盛り上がり紆余曲折を経ての開業。まちなかに竣工したスタジアムは、大歓声に包まれていました。90歳の新田さんは、復興のつち音と共に街の移り変わりを見つめてきました。スタジアムは、その新たな1ページとなるのでしょうか。

【2024年2月13日 放送】

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