恋人や仲の良い友人・家族など、大切な人たちと“互いに心地良い距離感”で付き合えていますか?
「大切な人たちに対して不満やストレスが多い」「いつも喧嘩やイザコザが絶えない」という場合、相手との距離感やコミュニケーションのあり方について考える必要があるかもしれません。
人間関係は、自分のマインドを変えること、伝え方を変えることで、好転することが多いものです。
『大切な人との関係を長続きさせるために持っておきたいマインド』と『知っておきたい伝え方のコツ』について、コミュニケーションライターとして人間関係の悩みを解決に導く筆者がお伝えします。
人間関係をこじらせやすい人が持っているものとは?
大切な人たちに対して不満が多く、争いが絶えない人たちは、次のような感覚で相手に接していることがとても多いです。
・「相手は私の思う通りに動いてくれて当然だ」
・「相手は私の気持ちを分かってくれて当然だ」
これを『一体感』と言います。相手と自分の境界線がとても曖昧な状態です。
他人に対して一体感が強い人は、相手が自分の思う通りに動いてくれなかったり、自分の気持ちを察してくれないと、激しい怒りを抱きます。
そして、怒りの感情を相手にそのままぶつけます。そうすることで相手を自分の思う通りにコントロールしようとするのです。
関係が良好で長続きする人が持っているものとは?
大切な人たちとの関係性が良好で、長続きする人たちは、次のような感覚で相手と接しています。
・「相手と自分は、違う人格や考え方を持つ、別の人間だ」
・「相手は、自分と異なる意見や感覚を持っていて当然だ」
これを『離別感』と言います。相手と自分の間に境界線がきっちりある状態です。
離別感を持っていると、相手が自分と異なる感覚や意見を持っていても、自分の思う通りに動いてくれなくても、強い不快感や嫌悪感を抱くことなく、受け入れることができます。
コミュニケーションの際は「どうすれば自分の気持ちが伝わりやすいだろうか?」を考え、工夫することができます。
一体感は「幼い子どもの感覚」、離別感は「大人の感覚」
大切な人との関係を長続きさせるのに必要なマインドは、一体感と離別感、どちらでしょうか?
そう、『離別感』ですね。
『一体感』は、元々は『母子一体感』と言って、赤ちゃんや幼い子どもが母親に対して抱く『健全な甘え、健全な依存』です。
赤ちゃんや幼い子どもは、母親など保護者にお世話をしてもらわないと生きていけないし自分の身を守れないので、一体感を持つのは当然です。
一体感は『幼い子どもが持つ感覚』、離別感は『大人が持つ感覚』と言っていいでしょう。
ところが、大人になっても、いつまでも一体感を強く持ったまま他人と接してしまう人がいます。
周りがいつも過剰に世話をしてくれるような環境で育った人や、一体感が強い保護者のもとで育った人などです。
また、幼い頃、充分に母子一体感を得られなかった人の場合、恋人など深い関係になった人に、強い一体感を抱いてしまうことがあります。
幼い頃に得られなかったものを、無意識で取り戻そうとするのですね。
離別感を持つためには?
一体感を強く持って接していると、そのうち相手の心は疲弊してきます。そして、自分の心も疲れてきます。
恋人であっても、友達であっても、家族であっても、離別感を持ち、コミュニケーションを取っていくことが大切です。
では、離別感を持つにはどうすればいいのでしょうか?
1. 依存先を増やす
以前、長く円満な夫婦関係を築いている方々に「円満の秘訣は?」というアンケートを取りました。
その際、「依存しないこと」「自分の一人時間も、相手の一人時間も大切にすること」という回答がたくさん出ました。
夫婦間だけでなく、恋人同士や友人関係・家族間でも、この考え方は同じように大事です。一体感が強い人は、心を許した相手に対して強く依存・執着しがちです。
それを防ぐためには、依存先を増やすこと。
趣味を持つ、人間関係の幅を広げる、友人との交流をたくさん持つ、などなど…。
夢中になれることや楽しい予定があれば、特定の人に対して強く依存することや執着することが少なくなります。
2. 自分に自信をつける
大切な人に対して強く一体感を持ってしまうのは、“自信の無さ”から来ていることも少なくありません。
自信の無さから来る不安定な状態を、他人と強く繋がることで補おうとするのですね。
幼い子どもは周囲に守られ、愛されないと生きていけませんが、大人は守られなくても、愛されなくても、生きていくことができます。
「どういう自分であれば自信を持って生きていけるか?」考えてみましょう。
資格を取る、知識を得る、見た目を変える、一人暮らしをするなどなど、自分に自信を持つためにできることを始めていきましょう。
また、自信は過去の出来事からも引っ張ってくることが可能です。
『過去の成功体験・ほめられた経験・達成できたこと』を思い出して、紙にリストアップしてみてください。
自分に自信がない人は、「自分はいつも何をやっても失敗ばかり」「誰も私のことを認めてくれない」など言うことが多いです。そういう方たちに過去のお話をじっくり聞いてみると、ちゃんと成功体験もほめられた経験もあるのです。
誰かから言われた嫌な言葉や、嫌な出来事の方を大事に心の奥底に閉まっているだけなのです。
自分の人生も大切な人の人生もマイナスに導くそういう思い込みは、早めに外しましょう。
どんな小さいことでも構いません。小石を積み上げていくようなイメージを持って、過去の良い出来事を思い出し、書き出すことに取り組んでみてください。
怒りの感情、伝え方のポイントは?
大切な人に対して怒りの感情が湧いた時は、感情のままぶつけるのではなく、以下のことを意識してみましょう。
怒りというのは『二次感情』と言われています。つまり、その下には元になっている『一次感情』があるのです。
一次感情は「寂しい」「悲しい」「不安」「怖い」「心配」などの気持ちです。
怒りの感情が湧いたら、その下にある一次感情に目を向けて、その気持ちを伝える方が、その後の話し合いがスムーズに行きます。
【怒りの感情の言い換え例】
「最近仕事とか付き合いばっかりじゃない!もうウンザリ!いい加減にしてよ!」
→「最近仕事とか付き合い多くて、会う時間少なくなってるよね。すごく寂しいよ」
人は、怒りの感情をぶつけられると、防衛本能が働き、同じように怒りの感情で返すか、言い訳する、逃げるという行動を取ります。そうなっては話はこじれるばかりです。
一次感情を伝えることで、相手に自分の“本当の気持ち”を分かってもらいやすくなります。また、相手の素直な気持ちや考えも出しやすくなります。
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合わない相手とは別れる、縁を切る、などの選択も時に大事ですが、人間関係はそう簡単に断捨離していいものではありません。
自分のマインドやコミュニケーションを変えなければ、新しい恋人や友人ができても、結局また同じようなことを繰り返すことになるのです。
今日お伝えしたことが、大切な人との距離感やコミュニケーションを変えるきっかけに役立てば幸いです。
<著者情報>
黄本 恵子:3万人を超える人の悩みを解決するコーチ&カウンセラーとして活躍。2010年、その経験を活かしてコミュニケーションや心理スキルを紹介する、コミュニケーションライターとして独立。
米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー。一般社団法人日本聴き方協会認定シニアインストラクター・認定シニアカウンセラー。
(mimot.(ミモット)/ 黄本 恵子)