[社説]陸自訓練場説明会 安易な基地押し付けだ

 住民の反発は「想定以上」(自衛隊関係者)だったという。防衛省は住民を見くびっていたのではないか。

 うるま市石川のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を新設する計画を巡って、防衛省は、予定地に近接する旭区と東山区の住民のみを対象とした説明会を開いた。

 場所選定の理由について防衛省は、一定の広さ(ゴルフ場跡地は約20ヘクタール)を確保できること、本島中部に位置し部隊が使用する上で利便性が高いことなどを挙げた。

 予定地の周辺は住宅街で、隣接する県立石川青少年の家には多くの子どもたちが訪れる。

 「防衛省は自分たちの都合の良いことだけ考えている。国を守るためというが、区民のことは何も考えていない」。参加した住民からは計画の撤回を求める意見が相次いだ。

 1月16日の会見で木原稔防衛相は、住民説明会も開いていない段階で「計画を見直す考えはない」と、住民の声をはねつけるような態度を示した。

 防衛省は説明会で「実弾や空包は使用しない」「ヘリは緊急時などを除き飛行しない」「夜間訓練の際は住民に通知する」ことなどを明らかにしたが、将来の変更可能性については明言していない。

 与那国町では、沿岸監視部隊の配備に賛成した島民も、その後、ミサイル部隊の配備が明らかになったことで「だまされた」と強く反発した。

 この種の施設はいったん開設されると、なし崩しの運用拡大を防ぐのは難しい。

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 防衛省は、まるでローラー車で一気に敷きならすように短期間に、南西諸島に自衛隊の駐屯地を建設し、ミサイル部隊などを配備してきた。

 「南西シフト」は他県にも及ぶが、沖縄と他県を同列に論じることはできない。

 米軍飛行場や訓練場、弾薬庫などが集中している上に、自衛隊の駐屯地や訓練場が建設され、文字通り「要塞(ようさい)化」しつつあるからだ。

 本島だけを見ても、米軍の演習場が北から北部訓練場、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセンと続き、弾薬庫も広大な面積を占める。

 陸自の訓練場が建設されれば、沖縄本島の北部から中部にかけての背骨部分に米軍・自衛隊の訓練場が連なることになる。住民にとって負担増となることは明らかだ。

 旧石川市の15自治会でつくる自治会長会は、計画反対で一致している。うるま市の中村正人市長は、賛否を明確にせず、様子見の姿勢を変えていないが、反対決議は重い。

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 陸自第15旅団は師団に改編されることになっており、その一環として那覇駐屯地の1個普通科連隊を2個連隊に増強する計画だという。

 人員増加に伴い新たな訓練場が必要だというのが防衛省の言い分だ。

 米軍専用施設の返還は一向に進まないのに、本島に自衛隊訓練場を新設するのは、安易な基地押し付けである。

 玉城デニー知事は計画に懸念を示しつつも、歯切れが悪い。明白な負担増に対しては住民の立場に立って毅然(きぜん)とした姿勢を貫くべきだ。

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