『Eye Love You』二階堂ふみの想いが溢れ出す クールな花岡が見せた人間味溢れる行動

「ご飯食べましたか?」は、韓国ではごく一般的に使われる挨拶と言われている。もちろん、そのままの意味として使われることもあれば、“ご飯を美味しく食べられるほど元気に過ごせていますか?”と相手を気にかけている意味が含まれることも。

そんな日常的な挨拶だけれど、“ご飯”を通じてテオ(チェ・ジョンヒョプ)と知り合い、距離を縮めてきた侑里(二階堂ふみ)にとって、それは特別なフレーズになっていることに気がつくのだった。テオが先輩社員の仁科(鳴海唯)に、「ご飯食べましたか?」と聞くところを見かけて思わず「誰にでも言うの?」とショックを受けてしまう侑里。火曜ドラマ『Eye Love You』(TBS系)第4話は、侑里がこれまで他人の本音が流れ込んでくるテレパス能力者であるからこそ蓋をし続けてきた、自分の想いが溢れ出す回となった。

例えば、100回褒められるよりも、1回の悪口のほうが深く印象に残ってしまうように、人はときにポジティブな気持ちよりも、ネガティブな感情に対して敏感になるものだ。こと恋愛では、好かれているかもしれないというふわふわとした心地良さよりも、相手の気持ちが他の人に向いてしまっているのではという不安のほうが心を強く揺さぶる。そして、そんなネガティブな思いに翻弄されているときほど、自分にとって何が大切なのかが見えてくることもある。

バレンタインを直前に、侑里は仁科とテオの会話が弾んでいるのが気になって仕方がない。そのうえチョコレートを渡すところまで目撃し、テオが「チョアヘヨ(好きですよ)」と話している声も聞こえてしまって動揺が隠しきれない。正確には、その言葉の前に「甘いものが」とつくのだけれど、もはや侑里にとっては会話の前後を見つめるほど冷静にはいられないほどだ。

なぜ、嫉妬してしまうのか。それは、テオのことが好きだから。そんな単純な感情も素直に受け入れられないほど、侑里はテレパスの能力を持ってから恋愛を遠ざけてきた。しかし、そんな侑里の閉ざされた心をテオのまっすぐな愛情がゆっくりと溶かしていった。頑なに「恋愛をしない」としてきた侑里も、ついには自覚せずにはいられないほどに。テオが侑里に贈ったリナリアの花言葉「この恋に気がついて」は、もしかしたら他ならぬ侑里の本能が自分自身に向けたメッセージだったのかもしれない。

一方、テオの出現によって本音を抑えきれなくなった人物がもう1人。それは、これまで誰よりも近くで侑里を支えてきた、ビジネスパートナーの花岡(中川大志)だ。バレンタインの夜、テオが侑里とデートの約束をしたと感づいた花岡は、出張先でついテオが帰れないようにしてしまう。普段は公私混同を良しとしないクールな性格の彼が、上司という立場を利用してテオのデートを阻止してしまうところに、どれほど切羽つまった様子なのかが伺えた。

もちろん、花岡本人もそんな自分の変化に戸惑いを隠せなかったのだろう。ほんの数滴混ざったアルコールに酔ってしまい「ごめんなぁ~」とテオに謝ってみせるなど、これまたいつものイメージとは異なる行動に出る。「恋愛はしない」としてきた侑里の気持ちを知ったときから、自分自身の恋愛も遠ざけてきたと見られる花岡。恋心を意図的に封印してきたという意味では、侑里以上に強く心を閉ざしていたのではないか。そして、その反動が一気に人間味溢れる行動に駆り立てたのかもしれない。

そんな2人の恋心を一気に動かしたテオについて、父親代わりでもある飯山教授(杉本哲太)が「あの愛らしい笑顔に、愛らしい性格。好きにならない生物などいるものか」と語った言葉に、多くの視聴者も頷いたのではないだろうか。仁科に嫉妬を覚えた侑里に対しても、変に茶化したり、浮かれたりすることなく、仁科との関係は侑里が心配するようなことはないのだということ、その証拠に彼女には長年付き合っている恋人がいるという事実も伝えて落ち着かせる。

また、意図的にデートを邪魔して酔い潰れた花岡に対しても、しっかりと送り届ける誠実ぶり。どのようにしてそこまで愛情深い性格に育ったのかと、その背景について気になってくるほどだ。そして、気になるといえばテレパス能力によって本音が聞こえた素振りを見せた侑里を見たときのテオのリアクション。テオの思い出の中に登場する、絵本を読んでくれる女性。彼女のことをテオは「ヌナ(お姉さん)」と呼ぶ。

その絵本に描かれていたのは、まさに侑里とテオの物語。指輪のようにリボンを結んであげるところまでそっくりだった。ますます2人の出会いは運命的なものだったのではないかと思えてくる。だが、2人のバックボーンを知る飯山教授が、テオの好きな人が侑里であることだけは避けたいといった素振りを見せたのも意味深だ。まるで2人が結ばれては困るかのような態度に、ますます気になるばかり。

そして、せっかく自分の本心に素直になりかけた侑里は、テオの心の声である「ヌナ(お姉さん)」に、またもや心を閉ざしてしまいそうな予感。せっかく動き出したと思われたそれぞれの恋心。侑里とテオについては最初から相思相愛であるはずなのに、もどかしくすれ違う。しかし、そのもどかしさの先にテオの愛らしい笑顔と誠実な対応が待っていると思うと、それもまたこのドラマの大きな魅力でもある。バレンタインという大きな恋のイベントが終わっても、大いに翻弄してほしい。

(文=佐藤結衣)

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