【ガーデニング】初心者にもおすすめ 春の山野草10選と育て方【毎年咲く多年草】

早春の野山で春一番に咲き出す「山野草」。多くは草丈低く、小さな花ですが、厳しい寒さを乗り越えて咲く可憐な姿が愛されます。栽培が難しい上級者向けと思うかもしれませんが、夏越しさえできれば、本来は毎年咲く多年草です。この春は山野草ワールドに挑戦してみませんか。

★落葉樹の剪定は★

早春の野山に咲く山野草を育てるには

ある園芸家さんが「春は足元からやってくる」と言われましたが、確かに春一番の山野で咲き出す草花はどれも草丈が低いものばかり。落葉樹の葉が出る前、大きく育つ植物より先に咲いて日光を浴び、来年また咲けるようにエネルギーを蓄えます。

大きな植物に覆われてしまうころには、早々と茎葉を枯らして根だけを残し休眠するものが中心です。その様子からスプリング・エフェメラル(春の妖精)とも呼ばれる多年草。春の山野草として、古くから愛されてきました。

近年は山野草を見に行く低山ウォークも人気ですが、野山に生えているものは、たとえ道端にあっても絶対に採らないでください。自生している株を採るのは犯罪ですし、貴重な自生地を荒らすことになるので、大きな園芸店の山野草売り場や専門店で入手しましょう。

ただ、標高の高い山地や夏でも比較的涼しい林間に自生する山野草は、暖地の高温多湿の環境が苦手です。関東地方南部以南の暖地では水はけよい用土や風通しのよい環境で栽培することが大切。後半で具体的な栽培について説明します。

素朴で愛らしい春の山野草10選

牧野博士が愛した森の妖精【バイカオウレン(梅花黄蓮)】

開花期:2~3月
草丈:5~10㎝

原産地は四国・中国地方~東北南部。2023年に放送されたNHK連続ドラマ「らんまん」で植物学者、牧野富太郎の思い出の花として登場。ウメに似た愛らしい小花を群れ咲かせます。花弁に見えるのは萼片で常緑性です。ふかふかの湿った林床に生えるので、湿度を保って栽培します。

鉢でも花つきよく楽しめる【キクザキイチゲ(菊咲一華)】

開花期:3~5月
草丈:10~20㎝

近畿地方以北の落葉樹林などに自生するイチリンソウの仲間です。白や藤色の花を咲かせ、落葉樹の葉が広がるころには茎葉が消えて休眠するスプリング・エフェメラル。夏に地上部がなくても枯れていないので、鉢土が乾いたら水やりします。年末には新芽が出てきます。

盆栽でもよく利用される【タンチョウソウ(丹頂草)】

開花期:2~3月
草丈:10~30㎝

原産地は中国東北部や朝鮮半島。耐寒性が強く初心者でも育てやすい。花と前後して伸び出る葉も美しく、深く切れ込む葉の形からイワヤツデとも呼ばれます。日なたに置いて、夏は葉焼けを防ぐため明るい日陰に移動。秋の紅葉も美しく、盆栽にもよく利用されます。

さいたま市大宮盆栽美術館にて

みんな大好きな野の花【スミレ(菫)】

開花期:4~5月
草丈:約10㎝

日本中どこでも草地や道端に咲いているおなじみの花。仲間も多くて黄色の花を咲かせるキスミレもあります。初心者にも育てやすいものですが、寿命は2~3年と短いため、開花期のあとに出る花の咲かない閉鎖花からタネを取り出してまき、次の株を用意しましょう。

キスミレ

黄色の蜜腺と紫の雄しべが魅力【セツブンソウ(節分草)】

開花期:2~4月
草丈:10~20㎝

関東地方より西の本州に自生する、日本の固有種です。白い花弁に見える萼片をパッチリ開いてのぞく、黄色の蜜腺と紫の雄しべがチャーミング。節分のころに咲き出して晩春には地上部が消えるスプリング・エフェメラルで、夏は明るい日陰の涼しい場所で育てます。

ヨーロッパ原産のセツブンソウ【キバナセツブンソウ】

開花期:2~3月
草丈:5~10㎝

南ヨーロッパのアルプスに分布するセツブンソウの仲間。まだ黒々とした地面近くで咲く黄色の花は小さくても輝くような美しさで、遠くからでも目立ちます。本来は球根植物ですが、鉢植えの芽だし苗でも出回ります。夏は鉢ごと乾燥させ、秋に水やりを再開しましょう。

木陰を明るく軽やかに彩る イチリンソウ(一輪草)

開花期:4~5月
草丈:20~30㎝

本州~九州に自生して、人里近い山林などにも群生しています。よく似た花を2輪咲かせるニリンソウともども、初夏には地上の茎葉が枯れて休眠するスプリング・エフェメラル。ただ、花後に葉がすぐ枯れると翌年の花つきが悪いので、通風のよい明るい日陰に移動して葉を少しでも長く保ちましょう。

春に日差しを浴びて花開く【カタクリ(片栗)】

開花期:4月
草丈:10~20㎝

日本をふくむ北東アジアに分布。人里近い野山から亜高山帯の山地まで、日本各地で自生地が保護されています。ただ、分球しにくい球根植物でふやすことは難しいため、おすすめは黄花を咲かせる園芸種の‘パゴタ’。花は日差しがあるときだけ開き、花弁をそり返します。

園芸品種‘パゴダ’

ひっそり咲く姿が愛される【ヒトリシズカ(一人静)】

開花期:4~5月
草丈:10~20㎝

原産地は日本をふくむ北東アジア。山地の林床や林の縁に自生します。緑濃い葉に包まれた白いブラシのように見える部分は雄しべの一部。花も葉もひと回り大きなフタリシズカもあります。肥料を施しすぎると、花穂の数がふえて風情がなくなるので気をつけましょう。

雪割草の名を代表する春待ち草【オオミスミソウ(大三角草)】

開花期:2~5月
草丈:10~20㎝

北陸地方以北の本州日本海側に自生。雑木林などの斜面などで、雪の下でも緑を保って咲き出すことから「雪割草」と呼ばれる植物の代表格です。白やピンク、紫や青色の花は艶やかで、八重咲きなどの園芸種も人気。夏は日陰になり水はけよい環境が大切です。

日当たり具合と水はけよい用土が大切

山野草はその名のとおり野山に自生する多年草です。これを関東地方南部より西の暖地で鉢栽培するにはコツが必要。とくに春に咲く山野草は夏に枯らしてしまいがちなので、夏越しがポイントになります。もともと育っている環境に近づける工夫をしましょう。

ひとつは鉢の置き場所。紹介した山野草の多くは、夏に日陰となる落葉樹の林床に生えています。夏は茎葉が枯れて地下で休眠している株は、強い光線で鉢土が熱くならない日陰に移動しましょう。日陰のないべランダなどでは遮光シートを用います。

遮光シート

また、鉢は風通しのよい棚に置いたり、二重鉢にして鉢土の温度が上がりすぎないようにします。メッシュ状の棚なら鉢底にも空気の流れができます。

メッシュ棚
二重鉢

山野草栽培のプロによれば、「難しいと思っている山野草栽培も、用土さえ変えれば大丈夫」とのこと。山野草栽培の専用培養土もありますが、里山に生えるヒトリシズカなどなら赤玉土小粒と腐葉土を半々ほどに混ぜ、軽石小粒を2割ほど加えたブレンドを用います。

もっと冷涼地や高山に生えるオオミスミソウやタンチョウソウなどには、硬質鹿沼土5割に対して赤玉土小粒と軽石小粒で5割にブレンド。鹿沼土は赤玉土よりつぶれにくいので、土の粒のすき間を水や空気が通りやすくて、植物の根は快適です。

鉢底穴が大きい素焼き鉢などを用いることでも、水はけよい環境にできます。水やりは鉢土の表面が乾いてから行い、水がサッと底穴から抜けるまでたっぷり与えます。用土が乾いたり湿ったりする乾湿のメリハリをつけましょう。

高温時に用土がずっと湿っていると、根腐れしやすくなるので気をつけます。夏は地上部が消えている山野草ですが、冬には芽が動き出してまた早春に花が咲きます。夏に茎葉が枯れても地下で休眠しているので水やりを忘れずに、来年も花を咲かせてください。

カタクリとエンゴサク

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