昔ながらの技術で山から木を運び出す「大持引(だいもちひき)」の再現が12日、上越市皆口のくわどり湯ったり村近くにある癒しの森で行われた。参加者は力を合わせて大木を運び、先人の知恵に思いをはせた。
大持引は切り出した大木を「二本ゾリ」と呼ばれるそりに載せ、斜面を滑らせ人力で運び出す材木の搬出技術。車や機械が導入される以前、冬の里山で見られていた光景だ。
これまで同市中ノ俣で再現が行われていたが、しばらく休止していた。今回は雪を利用したイベントで楽しもうと、くびき野森林組合とNPO法人かみえちご山里ファン倶楽部の共催で16年ぶりに実施。職員やスタッフ、一般の体験者ら約30人が参加した。
初めに組合職員がチェーンソーを使って高さ約25メートルの杉の木を伐採。枝を切り落として長さ4メートルほどに分割し、くいを打ち込み、ロープを巻き付けてそりに乗せた。
材木の重さはおよそ600~700キロ。参加者は「ヨイサー」のかけ声で一斉にロープを引き、動かした。急坂では勢いよく、カーブでは慎重に力を加減して雪道を下った。
見学した同市春日野2の60代女性は「車がない時代の生活の知恵。みんなで協力する姿はすごい」と、感心した様子で話した。
くびき野森林組合の横田力組合長(70)は「古来の技術を知ることは、職員にとっても大切。次代に残していくべき」と話した。かみえちご山里ファン倶楽部の石川正一理事長(73)は「久しぶりの実施でどうなるかと思ったが、みんなが一つになって楽しむことができた」と述べ、次回への意欲を示した。