相続した実家の売却には苦労がつきものです。不動産業者ですらソッポを向いてしまうような物件を相続したときは、どのように対処すればよいのでしょうか。本稿では、三木章裕氏の著書『実家の「空き家」超有効活用術』(フォレスト出版)より一部を抜粋し、相続した物件を空き家にしないコツについてみていきます。
不動産業者もソッポをむく物件だったら……
あまり考えたくないものですが、不動産業者がソッポをむく物件も存在します。ただ、そんな物件もなんとかしなければいけません。だって、元は誰かが住んでいた大切な家なのですから。
放置しておくだけで、経済的なコストもかかります。あきらめてはいけません。
例えば、とんでもない田舎で地元に不動産会社もないところもあります。その場合は、「スーモ 移住・田舎暮らしサイト」(https://inaka.suumo.jp)などで、知り合いの不動産屋さんに登録してもらう手があります。
その他にも、次のようなサイトがあります。
◎ふるさと情報館 http://www.furusato-net.co.jp
◎一般社団法人 移住・交流推進機構 https://www.iju-join.jp
または、自治体が運営している空き家バンク制度を利用すると、その地方に住みたい方や移住したい方に紹介してくれます。
◎全国自治体支援制度まとめ https://www.iju-join.jp/feature_exp/065.html
このようなサイトをチェックすると、あなたの物件の地域には、空き家に移住すると、いろいろな奨励金、手当や助成金が用意されていることに気づくでしょう。このようなサイトも積極的に利用すると、都会からのUターン、Iターンの方々に売却処分できる可能性が増えます。
不動産業者に頼んだだけで、反応がなく売却をあきらめているよりは、売却の可能性が数段増えるはずです。繰り返しますが、あきらめてはいけません。
売りたくても売れないときもある
売却から進めたのに、全然反応がない……。そんな場合もあるでしょう。ここで、反応がないレベルを診断する必要があります。
◎レベル1……不動産業者にも売れないと断言され、断られてしまう
◎レベル2……当初設定売価では売れない
レベル1は、そもそも物件の市場性がない(購入者が存在しない)ケースです。どんな場合かというと、過疎地などで辺鄙なところで、ほとんど人が住んでいない、利用価値がないと思われる物件です。
このように判断される場合は、相続放棄や相続税の物納なども検討すべきでしょう。また、市町村などの行政に相談するのも1つの手です。何らかの支援をもらえる可能性もあります。
レベル2は、ある程度市場性があり、値段いかんでは処分できる場合です。単純に価格を下げてでも売却できるのであれば、売却したほうがいいでしょう。
今後はますます空き家が増えて、売却希望物件が増えてきます。そうなると、ますます売却相場が下がってきます。マクロ視点からいえば、日本は人口が減り、世帯数が減少していくのですから、不動産価格は一部の人気エリアを除いて、値下がりの可能性が高くなります。
つまり、「今売るのが一番高い」ということになります。値段が下がったとしても、売れるのならできるだけ売るべきです。
放置空き家誕生の原因
しかしながら、相続などで不動産が共有になっている場合は、それぞれの遺産額の分配にも影響し、またローンなどの借入れが残っている場合、返済をどうするのかも決めなければなりません。
こうなると、買主がいても、そうそう売れない場合も出てきます。
下手をすると、相続人同士の分配金の調整がつかず、売れる値段がわかっていても塩漬けになってしまいます。
相続した実家を空き家のまま“塩漬け”にしているAさんの事例
Aさんは、ごきょうだい(弟、妹)と両親の実家を相続することになりました。実家は売却して、ローンが一部残ったものを返済したのち、きょうだいで平等にお金で分配することになり、Aさんが主導で、売却を進めていました。
ところが、当初想定した金額では売れず、購入申込みが入った金額での売却を弟妹に打診したところ、弟さんは「それは安く売りすぎだ! もっと高く売れるはずだ」と言い始めて、Aさんも、売却について手を煩わすのが嫌になってしまい、物件は塩漬けで現在空き家のまま放置されています。
しかし、人の住まない家を放置すると、ますます荒廃してしまい、住宅として売ることも困難になります。地元からは、あまり放置せずに、解体するなり売却してほしいという話が出るのですが、きょうだいともに率先して手をつける者がいない状態です。
このような相続問題で空き家になっている物件も年々増加しています。値段はともかく、購入希望者のあるうちに売却しないと、時間が経つほど売りにくく、この情勢ではますます価格も下がっていくと思われます。
これだけ空き家が増えて、物件が選び放題になっている現状で売り損ねると、もう二度と買い手がつかないことも十分に考えられます。
安値で売る決断をするか?
売却することをあきらめて活用することを考えるか?
早い決断が必要です。遅い判断は、ますます物件の価値を毀損してしまうだけです。