《リポート》事務ずさん、現場任せ かすみがうら市・中学体育館工事 議会特別委指摘 再発防止へ手続き厳格化

下稲吉中の新体育館を視察する調査特別委員会=かすみがうら市下稲吉

茨城県かすみがうら市の中学校の体育館工事を巡り、同市議会の調査特別委員会は、度重なる工事契約変更に対して担当課が行政手続きを怠っていたと指摘した。建築系の専門職員を置かず、業者との折衝や事務処理が現場任せだったことも浮かび上がった。市は手続きの厳格化とともに入札制度改革に着手し、再発防止を目指す。

▽度重なる変更

議会が指摘したのは市立下稲吉中(同市下稲吉)の「屋内運動場新築工事」。体育館に武道場を併設した新施設は、生徒増を受けた同校二つ目の体育館として前市長時代に計画された。老朽化し手狭になった既存の体育館を補完するのが目的だった。災害時の避難所機能を持たせるなどした結果、総事業費は16億6千万円近くまで膨らんだ。

市議会が問題視したのは、度重なる設計や契約の変更だった。着工直後の2022年8月、業者と担当職員の会議で、設計段階で必要性が示されなかった工事車両進入用の地盤改良工事が追加された。このほか、屋根の断熱材削除、屋根部材の強度を上げる変更、テニスコートの新設(後に撤回)などが繰り返された。

▽誤った解釈

こうした変更は、担当部署の市教委学校教育課が市長の決裁を仰がないまま続き、23年10月になって初めて市長に報告された。契約に関し「総額の2割まで担当者が変更できる」とする国や県のガイドラインを、担当職員が内部手続きでも同様だと誤って解釈したのが原因だった。

市議会は説明不足に加え、業者と市側の癒着まで疑ったものの、調査の結果浮かび上がったのは、ずさんな事務処理体制だった。

調特委では、担当職員の上司に当たる教育部長、学校教育課長とも、地盤改良工事着手を「当時は知らなかった」「報告を受けていなかった」と答弁した。宮嶋謙市長は「工事の追加、事務処理が不適切だった。誠に申し訳ない」と頭を下げた。

問題を受け、市は23年11月、市長決裁の手順などを内部に通知。契約変更額が累計100万円になるごとに市長決裁を取るよう伝えた。不必要な財政支出などが生じた場合は「職員が賠償責任を負う可能性もある」と強く注意を促した。市検査管財課の担当者は「体育館工事では、そもそも当たり前の手続きができていなかった」と語る。

入札制度も改革した。議決が必要な契約額1億5千万円以上の発注で、共同企業体(JV)方式の発注と最低制限価格を廃止。低価格調査制度を導入し、実施設計後の「照査」(第三者によるチェック)も設けた。

▽専門職不在

同市には公共工事に関する専門職員がいないのも課題となっている。当該部署に建築士資格を持つ職員が配置されているが、工事事務を継続して担う職員はいないという。今回の工事を担当した職員も2級建築士の資格を持つものの、職種はあくまでも事務職。専門職の採用は「異動などが困難になるためこれまで実現しなかった」(市関係者)とされる。

新しい体育館は既に完成。市は「生徒のことを考え、卒業式で使えるようにしたい」と望む。

体育館を二つ備える中学校は県内で例がないといい、施設規模は過大とも言える。市は将来的に、既存の体育館を市民向け施設に変更し、老朽化した別の体育館の代わりにすることも検討している。

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