背番号14の孝行息子が自国のファンとともにアノエタに帰ってきた。1か月以上を経て、タケ・クボ(久保建英)は再びここにいる。
アノエタのファンがどれだけ恋しがっていたかを示す最高のサインは、スピーカーがレアル・ソシエダのスタメンを紹介し、ファンに選手の苗字を叫ぶよう呼びかけたときだった。「14番、タケ・クボォー」とコールされると、スタジアムのデシベルは数段上がった。
我々はタケのプレーに飢えていた。チームにとって、攻めあぐむ展開が続く中でも、相手の守備にダメージを与えるべく、自分の最も得意とすることにトライし続ける永久的なリソースだ。
オフィシャルなドリブラーに求められる役割は簡単ではない。決してあきらめない並外れたパーソナリティを持ち、次の突破が決定的なアシストやゴールにつながると信じ、常に自尊心を高く保ってプレーしなければならない。
ソシエダはこの日も攻めあぐねた。オサスナは、コパ・デルレイのマジョルカと同じく、ライン間を圧縮する5-3-2のフォーメーションを採用。サイドへとボールが展開された場合も、素早いカバーでその進路を塞いだ。
2か月間ホームで白星から遠ざかっているイマノル・アルグアシルのチームは、90分間、堅守を攻略することができず、格下相手に0-1で苦杯を舐めた。
この結果を受け、順位は欧州カップ戦出場権圏外の7位に後退。毎シーズン、欧州でプレーすることは、クラブにとっては死活問題で、仮に出場権を逃すことになれば、主力を引き留めることも困難になる。
危機感の表れで、水曜日にパリ・サンジェルマンとの大一番を控える中でも、ファンの間では、ファーストチョイスの選手を優先してスタメンで起用すべきという声は少なくなかった。
もちろんチャンピオンズリーグ(CL)のラウンド16で欧州を代表する強豪と対戦する機会はそうそうあることではない。しかし、注意しなければならない。かつてソシエダを指揮した名将、ジョン・トシャックが口癖にしていたように、パンとバター(つまり生活)の糧となるのはラ・リーガの成績だ。
しかし最近のソシエダは無得点の試合があまりにも多く、ラ・リーガではこれで3試合連続だ。ミケル・オジャルサバルがプレーしなければ、スキャンダラスな形で前線のパンチ力を失ってしまう。
開幕以来、信頼できるセンターフォワードなしで戦ってきたツケは大きい。多くのチャンスを作り出しても、ゴールへの道が閉ざされ、ボックス内でフィニッシャーが見つからなければ、タケとアンデル・バレネチェアの突破力も宝の持ち腐れだ。
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タケの動きは良く、開始1分で、マジョルカ戦で心配されたコンディション不良が杞憂だったことを証明した。今回は右SBにスビエタ出身のホン・アランブルが入ったが、縦の関係を形成するパートナーがこうも頻繁に変わることも珍しい。
15分、中に切れ込むドリブルから、ミケル・メリーノを経由して、ハビ・ガランのクロスとアンドレ・シルバのヘディングシュートを演出した。
29分には、イゴール・ズベルディアの縦パスに反応して裏へ抜け出すと、間髪入れずに折り返したが、アルセン・ザハリャンがネットを揺らすことはできなかった。
この試合一番のチャンスを得たのは37分。ホアン・モヒカのクリアボールを拾い、得意の左足でゴールを狙ったが、GKエクトル・エレーラの好セーブに阻まれた。
後半開始直後のアンテ・ブディミルのゴールですべてが複雑になった。その直後の51分、自身も左サイドに流れて絡んだ崩しからガランのクロスに反応してニアサイドニアに飛び込むも、シュートは枠を捉えることができなかった。68分には、再びガランのクロスから今度はファーポストでチャンスを得るが、上手くボールをミートできなかった。
レフェリーが無視を決め込んだ激しいファウルでダメージを受けた後も、トライを続けたタケのプレーには何の不満もない。
しかし得点力が湿ったままでは、誰に勝つことも不可能だ。オサスナはもちろん、パリSGならなおさらである。偉大なタケが戻ってきたとはいえ、だ。
取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸