アプリビジネスにおける広告戦略 〜効果計測の重要性とテレビCMが果たす役割とは~(前編)ビデオリサーチ×Adjustウェビナーレポート / Screens

ビデオリサーチ主催のウェビナー「アプリビジネスにおける広告戦略~効果計測の重要性とテレビCMが果たす役割とは~」が2023年12月14日に開催。アプリビジネスにおけるテレビCMの効果と役割に焦点を当て、モバイルアプリ分析プラットフォームを提供するadjust株式会社 日本ゼネラルマネージャー 佐々直紀氏と、株式会社ビデオリサーチ 統括・ソリューションユニット ビジネスソリューショングループ 正岡友希氏がプレゼンテーション。株式会社ビデオリサーチ 統括・ソリューションユニット ビジネスソリューショングループ 鈴木康啓氏が司会を務めた。

本記事では前後編にわたってこの模様をレポート。前編となる今回は、ウェビナーの内容を振り返る。コネクテッドTV(CTV)の台頭やプライバシー保護強化の流れが進む中、アプリビジネス市場はどのような状況となっているのか、より効果的な認知手段としてテレビCMのどのような点が注目されているのか、実例を交えて探る。

■スマホ保持率は90%台目前。モバイルアプリは様々な企業のビジネスチャンスに

最初に正岡氏が、2014〜2023年におけるモバイルアプリ利用率の推移を紹介。この9年間、無料アプリの利用率は60.8%→91.9%へと伸長。有料アプリも14.8%→31.3%と約2倍に伸長した。

「コロナ禍の2019〜2020年を経てアプリの利用率が大幅に増加し、ユーザーの課金に対するハードルもやや下がってきている」と正岡氏はいい、2019〜2023年にかけてはアプリの利用ジャンルの広がりが顕著に見られると指摘。佐々氏も「2016年当時はアプリ利用の半分以上がゲームで占められていた」と振り返りつつ、「現在は新規参入含め、あらゆる企業がアプリをユーザーとのコミュニケーションツールとして活用している」とコメントする。

続いて佐々氏がモバイルアプリ市場の成長に関するまとめを紹介。2022年時点で人口の85%がスマートフォンを保持しているが、2027年は94%に達する見込みだという。

「日本のユーザーは中国とアメリカに次いで世界で3番目にアプリ内購入額が多く、海外からも多くの企業が日本のマーケットに進出している。日本におけるアプリへの支出額は2023年に2.6兆円を超える見込みで、あらゆる企業にとってのビジネスチャンスとなっている」(佐々氏)

2021〜2023年にかけて、アプリの起動数は緩やかに上昇傾向である一方、インストール数は2021〜2022年にかけてやや少し下降気味に。「ユーザーの間で使用するアプリが定着化し、新しくリリースされたアプリに置き換わりづらくなっている」と佐々氏はいい、「競争が激しい中、どのようにマーケティングしていくかが重要」と語る。

続いて正岡氏が、モバイルゲームの年代別利用率の比較データを紹介。2023年時点は2014年に比べて全体的にモバイルゲームの利用率が高くなっていることに加え、特に50〜60代の利用率が大きく伸びているといい、「若年層に限らず、広い世代がスマホを持つことが一般的になってきた」と指摘する。

■テレビCMによるアプリインストールの貢献度を確認できるAdjust社のサービス。ビデオリサーチのデータと連携して「もっとも効果の高い出稿枠」も確認可能

スマホの普及とともに幅広い年代を抱える市場になったモバイルアプリ市場。認知の手段として、テレビCMは大きな役割を果たしている。

アプリゲームのリリース情報を入手する経路は「テレビCM」という回答が最多に。佐々氏は「ユーザーの75%がスマホ片手にテレビを見ている」という調査結果に触れ、「スマートフォン片手にテレビを見る『ながら視聴』が生活者の行動につながりやすい」と、親和性の高さを述べる。

「生活者の接するメディアが増えているなか、特にテレビCMが印象に残りやすいという結果は大きく注目に値する」と佐々氏は語り、「ユーザーの新規獲得のみならず、既存ユーザーの利用促進や休眠ユーザーの復帰後押しなど、さまざまな使い方が考えられる」とコメント。「テレビCMで認知し、その後デジタル広告でリテンションされてインストールに至る『アシスト効果』も考えうる」とし、「その力は全体的に再認識されている」と強調する。

ここで佐々氏はAdjust社が提供するテレビCM計測サービスを紹介。同社が提供する「Adjust SDK」をアプリに組み込むことでユーザーのインストール時刻や使用デバイス、IPアドレスを取得、蓄積でき、インストールのきっかけとなったタイミングやユーザーの大まかな居住地域を把握することが可能だという。

取得した情報からは、インストール時の情報からアトリビューション(特定の流入経路)のついていないオーガニックデータを抽出、これにビデオリサーチの提供する全国テレビCM枠データ(放送時刻、放送地区、商材、クリエイティブ情報)をマッチングさせることで、テレビCM放映による効果を計測できる。

テレビCMによる効果の計測軸としては、DAU(日毎アクティブユーザー)、MAU(月間アクティブユーザー)や継続使用率等、ユーザーのアプリ定着や課金額を分析できる各種指標のほか、他チャネルへの波及効果にも対応。テレビCMによってターゲットがどのように動いたか、直感的なインターフェースによって確認できるのが特長だ。

「現在はインストール獲得単価に限らず、LTV(Life Time Value=アプリ使用継続率)観点でKPIを見るのが主流となっている」と佐々氏。同社のサービスでは「CMが放映された番組の情報とも紐づくため、どの番組に出稿すれば効果が高いかも見分けられる」とし、「ビデオリサーチが展開する小口のCM枠購入サービス『枠ファインダー』と組み合わせ、より効果の高い枠への出稿につなげることができる」とメリットを強調する。

■テレビCM経由のインストールユーザーは利用継続率が高い傾向。オーガニック比で最大3.4倍ブーストの事例も

テレビCMがユーザーのアプリ利用行動にもたらした具体的な影響として、佐々氏はAdjust社のサービスによる計測事例を紹介する。

フォワードワークスの提供するゴルフゲームアプリ「みんゴル」のケースでは、全米オープン中継時に放映したテレビCM経由のインストールユーザーが、オーガニックユーザーと比較して最大12%高い継続率を記録。「デジタルマーケティングでは届かなかったユーザー層をテレビCMは含んでいる」と佐々氏はいい、「特に操作手順の明快なゲームの場合は幅広いユーザー層に継続して使われやすい傾向にある」と語る。

ポノス株式会社が提供するゲームアプリ「にゃんこ大戦争」のケースでは、テレビCM経由のインストールユーザーの7日利用継続率が、オーガニックと比較して最大3.4倍高い結果に。記事執筆時点(2024年1月)でもCMの放映が継続されており、同社はこのデータをキャンペーン中の「速報値」として、クリエイティブ差し替えの判断材料に用いているという。

「弊社のサービスでは登録、継続率の比較や獲得ユーザーの傾向把握、他の流入元との比較が可能」と佐々氏。「キャンペーン全体を通じて反響を把握できることはもちろん、継続して計測を実施することで、テレビCMの効果的な利用パターンをどんどん蓄積できる」と強調する。

■他チャネルのアシスト効果も高いテレビCM「複数経路を比較し、“もっとも活きるパターン”を見つけて」

佐々氏はAdjust社のテレビCM計測サービスの効果的な利用方法として「様々なチャネルとの比較分析がポイント」といい、「チャネルの1つとしてテレビCMがどう位置付けられか、見極めるツールとして活用していただきたい」とコメント。「より具体的な効果を見るため、アトリビューションを時間単位のグラフで主要な流入元と比較するのが“コツ”」としたほか、「インストール数のみを追うのではなく、インストール後のユーザーの定着率に注目するべき」と語る。

さらに佐々氏は、テレビCMが他チャンネル経由の流入を促進する「アシスト効果」に改めて触れ、「メディアミックスを考える中で、全体の効果を底上げするテレビCMを利用しない手はない」と力説。同社のサービスでは放映地域や放映枠、クリエイティブ別などさまざまな尺度でテレビCMの効果を計測できるとし、「サービスを活用して次のアクションを素早く取り、効率的なマーケティングにつなげていただきたい」と述べた。

後編の記事では、Adjust佐々氏、ビデオリサーチ正岡氏、ビデオリサーチ鈴木氏にインタビュー。今回のウェビナーを振り返りながら、テレビCM計測サービス開発に至った背景、両社がテレビCMに見出す強みを掘り下げる。

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