「政治にカネがかかる」に潜む2つの嘘、前明石市長・泉房穂氏が教えます 選挙ドットコムちゃんねるまとめ

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2024年2月10日に公開された動画のテーマは「政治にカネがかかる」は嘘?ゲストに前明石市長で弁護士の泉房穂さんをお招きし、政治にお金がかかる構図の裏側について、語っていただきました。

本日も泉氏の機関銃のようなトークが炸裂します。ぜひ、スピードを落としてお聴きください。

【このトピックのポイント】
・「政治にカネが必要」の言説には、2つの嘘がある?
・「カネを配る人間は政治家に向いていない」
・お金がいらない選挙とは?

「政治にカネは必要」に隠された、2つの嘘

泉房穂氏(以下、泉):「前回はちょっと早口過ぎましたかね。皆さん、聴くときにちょっとスピード落として聴いてくださいね」

今回のテーマは、泉氏がX(旧Twitter)で強く訴えているものです。泉さんは、「『政治にお金がかかる』という言説には、2つの嘘がある」と言います。

1.「政治」ではなく「選挙」にお金をかけている
2.お金が「かかる」のではなく、お金を「かけている」のである

泉氏は、いまの永田町には「(政治決断をする、方針転換を覚悟をもってする)選挙屋さんしかいない」、それを見て世の中の人は「政治家と思っている」と喝破します。

衆院議員の経験もある泉氏は、「政策立案をするのに、それほどお金はかからない」と力説し、「選挙にお金がかかるのではなく、お金をかけているのだ」と説明します。

選挙に必要なコストについて、泉氏は「ゼロではできないが、マイクセットとビラの印刷代にはお金がかかる」としながらも、費用を抑えることは可能であると説明します。そのポイントとなるのは以下の3点です。

・短期決戦
・選挙のシンプルかつ明確な争点化
・市民ボランティア

しかし、実際に選挙を戦った経験のあるMCの乙武洋匡は、「有権者にも責任の一端があるなあと思っていて」と、新年会のような場に政治家の参加を強要する傾向があると指摘します。

泉氏は、「ルールを変えるのか、地域文化を変えるのか。両方大事」と応じながら、MC乙武の戦った参院選2022東京選挙区のように、広いエリアで多くの立候補者が乱立するケースでは、名前を浸透させるだけでも「いろいろなことをせざるを得なくなる」ため、お金がかかりがちだと振り返ります。

泉氏「(乙武さんは)カネのかかる選挙に出られましたね。止めようかと思ってんけど。エリア広いしぃと思ってぇ(笑)」

期数を重ねるごとに、選挙にどんどん強くなっていった泉氏。最初の選挙は僅差でしたが、会合に顔を出せ、会費を払えという圧力には屈しなかったのでしょうか……?

泉氏「行ってない行ってない。そんなこという人間『お前入れないぞ』って、『(票)入れてないやないか、何を言うてるか』って」

MC乙武「強すぎる(笑)」

泉氏のキャラクターがなせる技かもしれませんが、強固な地盤がない立候補者が、有力者をはねつけて泉さんのようになれば、逆に強烈なファンができて、どんどん選挙に強くなるというヒントではないかと、MC乙武は読み解きます。

泉氏が12年前に明石市長選に初当選した時、「全政党、全業界団体、宗教団体も労働組合も企業も相手候補を応援する」中で、市民だけで戦う構図を作り、市民で勝ちきるという戦略を取った泉氏。結果、「市民以外誰にも気を遣わなくて済んだ」とし、選挙戦略と、その後の政治・行政がつながっているのだと説明します。

「カネを出さなければ応援してもらえない人なんて」

議論は、選挙でかけなくていい節約できる範囲でのお金の話から、そもそも「使ってはいけない」カネの話に移ります。

MC乙武「前回の放送とも関わるんですけれども、裏金問題。領収書がいらないお金は、地元の議員に配らなければいけない文化になっているから裏金が必要なんじゃないかと」

参考:【前回記事】泉房穂氏が語る自民党裏金問題の根本にあるものとは?どうしたら自民党は変われる?選挙ドットコムちゃんねるまとめ

「広島は氷山の一角で、実態は多くの国会議員が地方議員にわかりやすく現金を配っている状況」であり、「カネの力で政治している」という姿勢だと、泉氏はコメントします。

そして、今こそ、しがらみでなく、政治家としての資質、候補者としての人物で戦うべき転換点に立っていると泉氏は語ります。

泉氏「カネを配るような人間は(政治家に)向いてないですよ。カネを出さなければ応援してもらえない人なんて、通らない方がいい」

泉氏は、マスコミの報道姿勢も「批判しておきながら、金を集める人がえらいと思っているところがある」と指摘し、「メッセージを出せる人、政策を語る人が評価されるように報道すべき」と批判しました。

議員にかかるのはどんなお金?使い方やルールは変えられない?

MC乙武の政策立案にお金はかかるのか、という質問に対し、泉氏は、政治家にかかるお金を「生活」「政策」「選挙」の3つに分けて、解説します。

まず、政治家の生活保障の面。泉氏は、「日本の国会議員に与えられる年間2000万円は、世界の国会議員と比べて高い部類」で、加えてJRが無料であること、議員宿舎も格安であることから、生活保障は成り立っていると説明します。

政策については、立法事務費が年間780万円、調査研究広報滞在費が月100万円と、政策に関係するお金だけで2000万円支払われます。

政策立案を行うスタッフについては?泉氏は、自身が国会議員だった頃はさほどお金がかからなかったと振り返ります。

それはなぜか。議員会館は無料、秘書3人は公費で支出されます。加えて、衆参両院ともに法制局も調査室もあり、政党ごとには政策スタッフもいます。さらに、国立国会図書館には100人を超える政策専門スタッフの国家公務員がいて、政策を作るリソースとして機能しているからなのです。

MC乙武「スタッフの数は、公設秘書では政策秘書がひとり、第一秘書と第二秘書がいます。これでじゅうぶんなんですか?」

泉氏は、「それ以上必要なのは選挙対策だけ。お金がなくても政策は作れます。あとは地元対策の人だけ」と断言します。

地元の事務所なんて1箇所で人が1人、2人いればいい、それ以上必要なのはしがらみが必要な選挙だと言い切る泉氏。

しかし、「(お金をかけることを)やめるとなるとチキンレース」と指摘するMC乙武。規制をすべきなのか話し合いでやめられるべきなのでしょうか?

泉氏は、国会議員自身が、自分で自分の首を締めないから、ルールの改正は現実的には難しく、今のルールの中で「有権者がそうでない方を選ぶこと」、政党や団体のしがらみを抱えた選挙にする人がムダであることを、有権者にわかってもらうことが早いと言います。

「公職選挙法など、今の選挙のルールは、組織がある人が有利だ」と指摘する泉氏。

市長選や町長選は、エリアも狭く一騎打ちに持ち込める、直前の立候補による短期決戦が可能です。争点を明確にし、市民のみんなで戦おうという方向になった瞬間に、お金がかからずに当選することが可能だと説明します。

泉氏「お金を抑えながら、選挙にどんどん通っていってほしいと思いますねえ」

選挙の際、問題になる供託金。日本の供託金は割高ですが、一定程度票を獲得すれば戻ってきます。泉氏は「没収になる、ならないの見極めは大事」と語ります。

泉氏「法律が変わらなくても、不公平な、理不尽なルールでもひっくり返さなければあかん。勝つことはできる」

明石でやった選挙を広めたい、無名の新人が、お金を使わずに当選することを証明したかったと、明石市に加え、兵庫県三田市、埼玉県所沢市での戦いをサポートし勝利を導いてきた泉氏は、フィールドを選べば、政党の推薦などに頼らず、市民とともに勝ちきる選挙があり、ルールの変更を待たずに実践していく必要があると力説します。

泉氏は、「こうあるべきということは発信すべきだが、そうでないルールでも世の中を変えていかないと、愚痴になってしまう。合わせてやっていく必要がある」と締めくくりました。

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