庁舎浸水対策を議論 本格復旧へ検討会発足 茨城・日立市

庁舎の浸水対策について議論する検討会=日立市役所

2023年秋の台風13号に伴う大雨で庁舎が浸水、停電した茨城県日立市は13日、本格的な復旧に向けて浸水対策の在り方を議論する検討会を立ち上げ、市役所で初会合を開いた。有識者を交え、浸水の原因分析や対策工事の妥当性などを評価し、氾濫河川の改修や庁舎の浸水対策の方向性を決める。提案を踏まえ、9月までに庁舎安全対策計画を策定する。

同市では昨年9月8日に線状降水帯が発生し、1時間雨量は観測史上最大の97ミリを記録した。庁舎西側の数沢川と平沢川の合流地点が氾濫し、流れ込んだ水で地下階が最大120センチ浸水。電気系統の設備が水に漬かり、停電や断水などが生じた。

影響で、災害対策本部は近くの消防本部に移転することになり、仮復旧には丸1日かかった。現在は通常業務に支障はないものの、ガス発電や非常用発電設備は停止したまま。川の溢水(いっすい)地点には応急措置の土のうが並んでいる。

検討会の「市本庁舎浸水対策に関する在り方検討ワーキング」は6月までに4回開く。浸水した原因や被災状況を踏まえ、河川改修や庁舎の安全対策工事の在り方を検討する。庁舎の安全対策計画と業務継続計画の策定に向けた助言や提案も行い、成果を報告書にまとめる。

メンバーには、庁舎を設計施工し、今後の対策工事を提案するSANAA事務所や竹中工務店など5社が参加。客観性を確保するため有識者も参加し、建物の浸水対策や河川工学が専門の大学教授や国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)の専門家5人が加わった。

初会合で小川春樹市長は「各専門分野の意見を頂戴しながら復旧と安全対策の検討を進めたい」とあいさつ。冒頭以外は非公開で行われ、メンバーは浸水現場を動画で確認し、対策上の課題などについて意見を交わした。

座長に就いた木内望・国総研住宅研究部長は「河川の治水と建物の浸水対策を両論で検討することは先進的な取り組みで、同様の課題を抱える事例のモデルケースにもなり得る」とコメントした。

市はこれまでに本庁舎の復旧事業費として約5億8千万円の予算を計上し、応急復旧を進めてきた。検討会の意見を踏まえた対策工事は2024年度以降に予定している。

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