「最も感動的な日だ」インドのナガルが故障を乗り越え初のトップ100入り! テニス人生を支えた英雄の存在<SMASH>

先週のATPチャレンジャー「チェンナイ・オープン」(インド・チェンナイ/CH100)で優勝したシュミット・ナガル(インド/98位)が、世界ランキングで初めてトップ100入りを果たした。インド人男子選手としては、2019年に75位となったプラジュネシュ・グンネスワラン以来、10人目の記録達成である。

26歳にしてトップ100の壁を打ち破ったナガルだが、実はちょうど1年前のランキング(23年2月13日付)は506位だった。

18年にインド・プネーの大会でATPツアー本戦デビューを飾り、翌年には「全米オープン」で四大大会本戦に初出場、1回戦でロジャー・フェデラー(スイス)から1セットを奪った。さらに20年8月には当時のキャリアハイ122位をマークした。

しかし、21年に股関節の手術を行なうと、翌年の復帰後に新たに筋肉系のトラブルに見舞われ、10月には638位まで下降。それまでの順調だった数年とは真逆の苦しい時期となってしまった。それだけにナガルの喜びは大きい。ATP公式サイトにこう語っている。

「僕にとって最も感動的な日だ。子どもの頃は、誰もがトップ100プレーヤーになりたいと思っている。誰もが2桁のランキングを持つことを夢見るんだ。インドの観衆の前でこんなことができるなんて、これ以上の場所はない」

さらに苦しい時期についてもこう振り返った。

「テニスを楽しめず、モチベーションも見出せない、とても暗い状態だった。いつも自問自答していた。7、8カ月もプレーしなかったのに、4週間プレーして、また6週間休んでいる。どうすればいいのか、答えは見つからなかったよ」
復活劇が始まったのは翌23年だった。4月のイタリア・ローマ、7月のフィンランド・タンペレとチャレンジャーで2勝するなどポイントを稼ぐと、9カ月で400位以上もランキングを引き上げて138位でフィニッシュ。そして、今シーズンは「全豪オープン」で予選を突破し、1回戦でアレクサンダー・バブリク(カザフスタン/大会時27位)に勝利。冒頭の通り「チェンナイ・オープン」で優勝と、快走を続けている。

苦しい時期に学んだ教訓が2つあるという。

「1つは忍耐強くあること。2つ目は、周りに良い人がいること。もしつらい時期が来てもがいているなら、良い人たちが支えてくれる。僕にとっては、チームや友人、家族だった」

彼のキャリアを振り返れば、その端緒から支えがあった。元ダブルス世界1位のマヘシュ・ブパシだ。8歳でテニスを始めたナガルは母国の英雄ブパシに自分の試合を見るよう直訴したことからブパシ・アカデミーへ入ることが叶ったという。それ以来、ブパシは「メンター、マネージャー、兄弟、父親」としてナガルを支えたそうだ。

今後はコンディションを維持して100位以内をキープし、夏のパリ五輪出場を狙う。21年の東京でオリンピックに初出場し、インド人として25年ぶりのシングルス2回戦進出を果たした彼にとって2度目の舞台だ。

「僕にとっても、僕の国にとっても、とてもとても大きなこと。国の代表になって、どうなるか見てみたいね」

構成●スマッシュ編集部

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