連載30年突破『名探偵コナン』 “ガチ勢”弁護士が321件の事件から選ぶ「神回」

連載30周年を迎えた2024年第7号と、連載が開始された1994年第6号の表紙 ©︎青山剛昌/小学館

大人気マンガ『名探偵コナン』(小学館)は、今年「週刊少年サンデー」上の連載30周年を迎えた。

黒ずくめの組織に謎の薬を飲まされたことで小学生になってしまった高校生探偵・工藤新一が、“江戸川コナン”として組織の行方を追いながら、数々の事件を解決していく推理マンガ。コミック累計発行部数は2億7000万部(2023年2月時点)、アニメーション・映画などメディアミックスも重ね、2023年公開の映画では興行収入100億円の大台を突破している。

30年間揺るがぬ人気を集め続ける『コナン』には、人気アイドルグループ「SixTONES」の京本大我さんや、お笑い芸人「ぼる塾」の田辺智加さん、元プロ野球選手の藤井秀悟さんなど各界にファンがいることも知られている。“法曹界”も例外ではない。

弁護士2年目の若手・三島広大弁護士は、趣味に「名探偵コナン」と書くほどのコナン好きだ。作中に登場するFBI捜査官・赤井秀一に憧れ「どうすればFBIになれるのか調べたこともある」という。

弁護士10年目を迎える安藤愛子弁護士は、子どもに影響される形で好きになり、今では番外編「犯人の犯沢さん」まで追いかけているという。

そんな “コナンガチ勢”である2人は『コナン』をどう楽しんでいるのか。弁護士目線で気になるキャラクターやエピソードについて直撃した。

弁護士的“神回”とは?

まず2人に「弁護士として“神回”だと思うエピソード」を聞くと、それぞれ別のタイトルがあがった。

三島弁護士があげたのは、「容疑者・毛利小五郎」(単行本27巻収録)。毛利小五郎にかけられた殺人容疑に対し、妻で弁護士の妃英理が真犯人を暴くことで無罪を証明したエピソードだ。

毛利小五郎にかけられた“容疑”の法定刑を説明する英理 ©︎青山剛昌/小学館

三島弁護士は「弁護士になってから、『無敗記録更新中』という英理の"法曹界の女王"ぶりが気になるようになった」といい、中でもこの事件に思い入れがあると語る。

「弁護士の誰もが志望動機のひとつに持っていそうな『身近で困っている人を助けたい』を実現した事件だと思います。ただ、英理の推理どおりに犯人が明らかになるような話を見ていると、思わず『現実でもこんなに弁護士の言うことがスムーズに通ると楽なのにな』と考えてしまいます(笑)」

一方の安藤弁護士は、「ピアノソナタ『月光』殺人事件」(7巻収録)をあげた。

「コナンは事件解決の際に犯人を追い詰めはしても、犯人には敬意を払い、死なせないという信念があります。しかしこの回だけは、犯人が自殺してしまいます。コナンにとっては苦い経験ですが、この経験があるからこそ、コナンは犯人が自殺を図ろうとしても毎回全力で阻止しています」(安藤弁護士)

「月光殺人事件」は苦い記憶としてコナンの心にも刻まれている(16巻「名家連続変死事件」より) ©︎青山剛昌/小学館

コナンの作者である青山剛昌氏も、インタビューで「犯人を殺さずに、ちゃんと捕まえて罪を償わせる」探偵像をコナンに求めたと発言していることから、このエピソードがいかに例外的だったかわかるだろう。

安藤弁護士は、この『月光』殺人事件に限らず、すべての犯人の動機に対し、「弁護士としては、わざわざ人を殺さずとも、他に解決する方法はいくらでもあるのに」と感じるという。作中には出てきていないが、弁護士の英理によって“犯人にならずに済んだ”依頼人も、もしかすると存在するのかもしれない。

コナンファン的“神回”は?

次に2人には「ファンとして“神回”だと思うエピソード」を聞いた。

三島弁護士が「黄昏の館」(30巻収録)を、安藤弁護士が「紅の修学旅行」(94巻収録)をそれぞれあげた。

「名探偵たちが呼び集められるオールスター感、館ものという舞台設定ならではのドキドキ感、最後の大逆転、その後の本編への伏線や、アニメ、映画への派生など、とにかく豪華な印象があってお気に入りです」(三島弁護士)

大富豪「烏丸蓮耶」が残した館で名探偵同士の“果たし合い”がはじまる… ©︎青山剛昌/小学館

「京都で働く人間としては、京都が舞台になっていますので外せません!」(安藤弁護士)

工藤新一の姿で修学旅行へ。訪れた京都の町で連続殺人事件に巻き込まれていく… ©︎青山剛昌/小学館

「最終回を見届けたい」ファンの願い

第1巻から最新刊(104巻)まで、実に321件の事件が描かれているコナン。そのすべてに目を通している2人に今後の願いを尋ねると、「とにかく無事最終回を見届けたい」と声をそろえた。

「青山先生が、お体に気を付けて、無事最終回を執筆いただけることだけを期待しています」(安藤弁護士)

「やはり物語がどのような結末を迎えるのかはとても楽しみにしています。どのように黒ずくめの組織と決着するかももちろん気になりますが、弁護する側の目線としては、ジンやウォッカがなぜ黒ずくめの組織に入ることになったのかといった、生い立ちや犯行動機なども非常に興味があるので、組織側のストーリーが語られることも期待しています。個人的には、法律監修などで何とかして作品に関われないかなというのも夢見ています!」(三島弁護士)

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