楽しかったよ、ありがとう…さいたま・沼影市民プールでお別れイベント 「学校と共存」の思い残る中で開催

解体が決まっている沼影市民プールに、絵を描く親子ら

 「沼影市民プール ありがとうイベント」が10日、埼玉県さいたま市南区の沼影公園で開催され、多くの親子連れが訪れた。半世紀以上にわたり、「沼プー」の愛称で親しまれた施設は、学校建設のため解体が決定している。子どもたちは思い出いっぱいのプールに絵を描き、風船やカードに「ありがとう」「忘れないよ」と感謝のメッセージを書いて、別れを惜しんだ。

 市立浦和別所小学校4年の若狭結衣さん(10)は、家族と何度もプールに遊びに来た。ウオータースライダーは最初怖かったけれど、慣れると楽しかったという。プールと風船に「楽しかったよ。今までありがとう。忘れないよ」とメッセージを書いた。「めちゃ悲しい。きょうは最後だから、一日中いたい」

 母親の友紀さんは「家族の夏の思い出がいっぱいで、なくなるのはすごくさみしい」。結衣さんとプールに絵を描いた。「思い出の場所で、きょうしかできないことを一緒に過ごせた。手足に絵の具をつけながら描いている様子が生き生きしていて、私の宝物の一つになりました」と話した。

 沼影市民プールは1971年に整備され、夏場はプール、冬場はアイススケート場として利用されてきた。市は武蔵浦和地区に義務教育学校を整備する計画を推進。学校建設の用地として、沼影公園を今年3月末に廃止し、屋外プールを新年度に入り解体する。屋内プールは来年6月まで営業する予定。地元住民からは、レジャープールの削減や大規模な義務教育学校に反対する意見が出ている。

 沼影公園の会田孝志所長(46)は「思ったより多くの人が来場した。本当に愛されていたとしみじみ感じ、さみしい気持ちはかなりある」と振り返った。学校と共存できればとの思いは残っている。解体の前にお別れイベントを開くことができ、「最後に皆さんに来ていただけて、すごく良かった」と話していた。

メッセージが書かれた光る風船=いずれも10日、埼玉県さいたま市南区沼影

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