雇ってもらえない…定年後の元サラリーマンを襲う「働きたくても働けない」問題。公認会計士が提案する“意外と簡単?”な解決策とは

(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後の生活について、不安を抱いたことがあるという会社員は多いでしょう。学費やローンの支払いが残っているのに雇ってもらえず働けない……そんな悩みを抱える定年退職者も少なくありません。そこで、定年後も賢くお金を稼ぐ方法について、『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス)の著者で公認会計士の田中靖浩氏が解説します。

定年後も働ける“小さな商売人”を目指す

高齢者になって生き苦しさを感じる大きな理由が「選択肢のなさ」です。

とくに苦しいのが「働きたくても働けない」状態。まだ学費やローンの支払いが残っているのに働けない。これは経済的にも精神的にも厳しいです。

「仕事=誰かに雇用されて働く」と狭くとらえてしまうと、高齢者が働ける職場はごく少ないです。現役中に培ったノウハウや知識を活かせる仕事はさらに少ない。歴史的に見ても、高齢者の仕事はキツくて低給の単純労働ばかり。

「雇われる」ことは難しい──これが高齢者労働の現実です。

ならば雇われることは諦め、フリーランスになるのはいかがでしょう?

そう言われても、「自分には無理だ」と思う方がほとんどだと思います。

そんな方に問いたいのです。

「あなたはフリーランスについて、何も知らないだけではないですか?」

サラリーマンからするとフリーランスは、特別な能力や専門的知識をもった「自分のような凡人とはちがう特殊な人間」に見えるかもしれません。でも決してそんなことはありません。

たしかにすごい能力をもった人はいますが、ほとんどはあなたと同じレベルの凡人です。ただし「自分で稼ぐための努力」はしています。その日々の努力の内容が、サラリーマンとまったくちがうのです。

ときにそれは真逆の方向性です。会社では、「誰かがいなくなっても仕事が回る」仕組みをつくろうとします。

しかしフリーランスで「自分がいなくなっても仕事が回る」状態になったらアウト。「自分がいないと仕事が回らない」状態をつくるために全力で努力するのです。

フリーランスは小さな商売人です。かつての50年前、日本中のあちこちに小さな商売人がいました。彼らは自分のお店を出して商売し、家族を養いました。あの頃の商売人はモノを売ったりレストランを開店することが多かったですが、いまはサービス業が多いです。

自分のノウハウやサービスを売る令和の商売人、それがフリーランスです。

ここまでの50年、わが国では商売人が減ってサラリーマンが増えました。サラリーマンのほうが給料が高く、仕事もおもしろく、老後まで保障してくれたからです。

しかし再び変わり目がやってきています。

サラリーマンの老後に不安が出てきたいま、定年後も働ける小さな商売人を目指すことには大きな意味があります。雇ってもらえなくても、「自分で働く」選択肢をもつ。それだけで気分が楽になります。定年後「働こうと思えば働ける」自分になるべく努力することで経済的にも精神的にも余裕ができるはずです。

「雇われない生き方」…フリーランスのメリット・デメリット

フリーランスとサラリーマン それぞれが持ち合わせる「苦悩」

フリーランスとは「雇われない・雇わない」働き方・生き方です。

ちなみに私は長い間フリーランスとして仕事をしています。この道を進んだきっかけは20代半ばに身体を壊したことでした。

外資系コンサルティング会社勤務中に長期入院し、その後も何度も入退院を繰り返しました。病院のベッドで悶々としながら、こんなことになったのは「向いていない仕事をしたからだ」と悟り、「これからは好きな仕事をしよう」と決意、コンサルティング会社を辞めました。転職しようにも入院を繰り返す病弱者を雇ってくれる会社はなく、やむなく独立開業したというわけです。もともと独立開業志望だったこともあり、それは期待たっぷりのスタートでした。

独立後しばらくは事務所を大きくしようと頑張りましたが、残念ながらそれは途中で諦めました。正直に言って、人を雇う重圧に耐えきれなかったからです。自分という人間の「器の小ささ」に落ち込みましたが、受け入れるしかありません。そこでフリーランスを目指したというわけです。

そこから現在に至るまで、「雇われない・雇わない」フリーランスとして仕事をしています。誰かと組んで仕事をすることもありますが、基本は1人です。

苦労の末になんとか好きな仕事で生活できるまでになりましたが、とにかく私の場合は収入が不安定でした。スポット仕事の比率が大きかったため、稼ぐときは稼ぐが、稼げないときはさっぱり。先が見えない薄氷の上を歩く思いで生きてきました。いま振り返っても、よく生きてこられたと思います(マジです)。

最近、同世代のサラリーマンからよく「定年のないフリーランスはいいよな」と言われることが増えました。

彼らからそう見えるのはわかりますが、こちらはずっとサラリーマンをうらやましいと思っていました。毎月安定した給料をもらえるからです。そんな彼らの悩みは「定年までしか働けない」こと。安定した環境で働けるが、いつか職場を追い出されるのがサラリーマンの宿命。

収入は不安定ながら、いつまでも働けるフリーランス。

収入は安定的ながら、定年までしか働けないサラリーマン。

ならばサラリーマンは「定年と同時にフリーランスに変身すればいいのでは?」というのが提案です。

田中 靖浩
作家/公認会計士

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