【ひとり旅】料理家・山脇りこさん流、旅行をもっと充実させるコツとは?[後編]

「人生を変えよう、何かを学ぼう、なんて思いません。ただ、誰とも話さなくても自分と話している、そんな気持ちでひとり旅をしています」。50歳からひとり旅を始め、その魅力にハマったという料理家の山脇りこさん。 「50代はひとり旅適齢期」と語る山脇さんに、旅を楽しむ極意を伺いました。

前編はこちら。

お話を伺ったのは
料理家
山脇りこさん

やまわき・りこ●長崎県生まれ。東京都内で料理教室を主宰。テレビ、新聞、雑誌、WEBなどで和食をベースにした季節感のある家庭料理を紹介している。
料理家としての活動の他、旅や食などをテーマに取材・執筆も行う。
『台湾オニギリ』(主婦の友社)、『50歳からのごきげんひとり旅』(大和書房)など著書多数。

ひとりでも、家族とでも「山脇流・もっと旅を楽しむヒント」

旅支度のコツから旅先でのお楽しみまで、山脇さんが実践していることを教えてもらった。旅の達人ならではの発想と工夫には、旅がより楽しくなるヒントがいっぱい!

ヒント①地元の人のように朝時間を過ごす

山脇さんが旅先で必ず行うのが「朝ラン」=朝のランニング。

「普段はほとんど走らないけれど、旅先では朝走ります。私、朝はそこに住んでいる人のものだと思っているのですが、朝ランするとその街で暮らしているかのような気分が味わえて、楽しいんです」

京都やパリでも、誰もいない朝の街を走って回った。

「京都では朝6時頃から清水寺が開いていることがわかって、宿から走っていきました。汗だくで清水の舞台に着いたら、ほぼ貸し切り状態。帰りは祇園を抜けて円山公園のほうからホテルに戻りましたが、こちらもガラガラでした。どの街にも朝だけの表情があって、旅人気分では見られない街の顔を見ることができるのも、私が朝ランする理由です」

まだ誰もいないルーブル美術館やオルセー美術館に向かってランニング。
ランニングシューズ、ウエア、ランニング用バッグは旅の必需品。

ヒント② 「前のり作戦」でひとりの時間を確保

ひとり旅をしたいけれど、夫がいい顔をしない、ちょっと罪悪感を覚える……。「そんな人には『前のり作戦』がおすすめ」と、山脇さん。

「家族や友達と旅行するとき、自分だけ目的地に先に行って短期間でもひとり旅をするんです。私は友人家族との沖縄旅行のときに2泊3日だけひとりで那覇を旅したり、夫とのフランス旅行のときに私だけ前のりして3泊4日でパリを楽しんだりしています。夫や友達があとから来て一緒に帰るから、まるで最初から一緒に旅行していたかのような気分になって、罪悪感もありません。夫には『私が先に行って楽しそうな場所を探しておくから』などと言って、ひとりの時間を確保。そうすれば、あとから合流した夫にも優しくできると思います」

実家のある長崎。「実家に帰る前後に途中で1泊するなど、帰省もひとり旅につなげると楽しいですよ」
「愛してやまない、長崎の日之出饅頭店の『桃饅頭』」

ヒント③「荷物少ないチャレンジ」をする

荷物は少数精鋭が旅支度の鉄則。

「荷造りでは『荷物少ないチャレンジ』をやっています。昨夏、夫と19泊20日でイタリアを旅行したときは、それぞれ機内持ち込み可能なスーツケース1個で行きました。洋服は最少限の枚数。下着は旅先で洗濯して、最終日に捨ててくることも。靴は、行き帰りに履いているもの、ランニングと街歩きを兼ねるスニーカー、かさばらないぺたんこサンダル。でも毎回反省して、少しずつ上手に」

フィレンツェにも荷物を少なくして。「気に入っていない服だと旅先でテンションが下がってしまうので、そのときどきのお気に入りを少数精鋭で持っていきます」

「行きたいお店 マップ」を自作

旅先では食もお楽しみのひとつ。山脇さんはスマホのグーグルマップや音声入力メモなどを使って「行きたいお店」を管理している。

「行く予定がない街でも、おいしそうなお店を雑誌などで見つけたらひとまず保存。旅先でグーグルマップを見ると、保存してある近くのお店が自動的に出てきます。なぜ保存したのか忘れ、お店のサイトを確認して『確かにいいじゃん』なんてことも。実際に行ってすごくよかったら、『好きな店』に保存しています」

海外のお店もグーグルマップに保存。台北をひとり旅した際、地元で有名なガチョウ料理店「阿城鵝肉 (アーチェンアーロウ)」の前で。

ひとり旅におすすめ「日本の美しい街」

「マチュア世代がひとり旅をするなら」と、山脇さんが教えてくれた国内のおすすめスポット。ぜひ次の旅プランの参考にして♪

偕楽園の梅以外に桜並木も見ごたえあり【水戸】

山脇さんが「北関東の穴場」と太鼓判を押すのが水戸。

「水戸は偕楽園の梅が有名ですが、桜の時季もおすすめ。水戸駅から徒歩10分ほどの千波湖と桜川沿いに桜並木があり、きれいに整備された水辺の遊歩道を偕楽園まで歩けます。歴史好きなら弘道館で幕末に思いを馳せても。また、数年前に県議会議事堂が改修されて図書館やカフェがオープン。公園もたくさんあるので、のんびり散歩も楽しめます」

年1回あるクラフトフェアの時期がおすすめ【松本と盛岡】

「長野県松本や岩手県盛岡は歩いて回れる範囲にかわいいお店がたくさんあって、散歩していても楽しい! どちらもクラフトフェアの時期に行くのがおすすめです。私も10月に盛岡のクラフトフェアに行きましたが、レトロなカフェや雑貨屋さん、本屋さん巡りを楽しみました」

個性豊かな工芸品に出合える松本の「クラフトフェアまつもと」は5月、盛岡の「北のクラフトフェア」は10月に開催予定。

松本旅のエッセイも!
『大人ひとり旅のはじめ方』

ひとり旅の計画の立て方、持ち物の選び方、1泊2日のコーディネート術など、大人の女性がひとりで旅を楽しむためのノウハウがたっぷり詰まった入門書。山脇さんによるインタビューや書き下ろしエッセイ、写真も掲載。主婦の友社 1430円

※この記事は「ゆうゆう」2024年3月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

取材・文/本木頼子


© 株式会社主婦の友社