農村の方言を研究するアルゼンチン出身の「90後」 上海市

農村の方言を研究するアルゼンチン出身の「90後」 上海市

5日、本場の方言を話すお年寄りに会うため上海市金山区の農村にフェデリコさんを連れて行く阿慶さん。(上海=新華社配信)

 【新華社上海2月14日】中国上海大学の修士課程で言語学を学ぶアルゼンチン出身の「90後」(90年代生まれ)の青年、フェデリコ・デマルコ(Federico Demarco)さんは、自身の中国語名を「呉飛得(ウー・フェイドー)」と名乗っている。「飛得」はFedericoの音訳で「呉」姓は自身の研究対象である呉語(呉方言、上海など長江下流域や江南地方で話される方言)から選んだという。

 幼い頃から各国の言語に興味を示し、現在8カ国語を操るフェデリコさんは、中でも中国語に魅了された。アルゼンチン人として初めて中国政府公認の中国語検定試験「HSK(漢語水平考試)」の6級(会話や文章で自分の意見を流ちょうに表現できるレベル)に合格しただけでなく、上海の女性と結婚したことで上海語も習得した。

農村の方言を研究するアルゼンチン出身の「90後」 上海市

5日、本格的な金山方言で新年のあいさつ「新春快楽、身体健康」を述べるフェデリコさん。(上海=新華社配信)

 2018年に妻と一緒に上海市で暮らし始めると、市中心部の方言だけでなく「呉儂軟語」と呼ばれる江蘇省蘇州市など周辺地域で話される柔らかい響きを特徴とする各種方言にも強く興味をかき立てられた。大学では金山語や嘉定語、南匯語、松江語などを含む同市郊外の方言を主な研究対象とし、専門的な表記と単語を用いてこれらの方言の発音や語彙(ごい)、文法を記録している。

 ある偶然をきっかけに、フェデリコさんは方言研究を愛する同鎮の青年、阿慶(あけい)こと封烜鑫(ふう・けんきん)さんと知り合った。阿慶さんはフェデリコさんに金山語を教え、さらに本場の方言を話すお年寄りに会うため、一緒に同区の農村を訪れた。二人が面白半分で金山方言の日常会話を撮影した短編動画を動画投稿アプリ「抖音(ドウイン)」で公開すると、思いのほか反響を呼び再生回数は35万回を超えた。

 方言は地域文化の担い手となる。フェデリコさんと阿慶さんは今、金山方言に関するこれまでの研究成果を書籍にまとめている。言葉を愛する二人の研究者は、意味のある方言が継承されていくことを願っている。

 「方言の未来は分からないが、今できることしっかりと記録を残すこと。未来の世代が残された資料を頼りに、文字や音声で先人たちとコミュニケーションが取れるように」と語る二人は、郷土の方言を守るためこれからも努力を続ける。(記者/李栄)

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