年金「年間200万円~300万円」が最多だが…繰上げ受給の「ギョッとする減額率」

(※写真はイメージです/PIXTA)

「下流老人」「老後破産」…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。老後に必要なお金、貯められていますか? 厚生労働省『平成29年 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)』を見ていきましょう。

「もはや年金は期待できない」のか?現況を見てみると

高年齢者雇用安定法が改正され、70歳まで働き続けることが国主導で推進されている現在。超高齢社会で老い先への不安が高まる今、「自助努力」を求められている感覚は否めません。

「もはや年金には期待できない」のでしょうか? 厚生労働省『平成29年 年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)』より、まずは年金受給の実態を見ていきましょう。

■公的年金の受給状況

男性の場合、年金受給額で最も多かったのは年間「200~300万円」(42.2%)、次に「100~200万円」(30.0%)でした。年齢階級別にみると、80~84歳が平均額が最も高く、58.0%が「200万円以上」となっています。

女性の場合、最も多かったのは「50~100万円」(40.7%)で、「100~200万円」(32.4%)と続きます。年齢階級別にみると、85~89歳が平均額が最も高く、54.9%が「100万円以上」となっています。

200万円の場合、月々の収入は16.5万円ほど。家賃や負債のない単身世帯や、夫婦2人とも厚生年金と国民年金をしっかり受け取っている世帯なら安心して暮らせるかもしれませんが、実際、そう上手くはいきません。

一方の支出額はどうなっているのか? 配偶者あり世帯において、本人及び配偶者の支出額階級(月額)別構成割合をみると、「20~25万円」(19.9%)が最も多く、次いで「25~30万円」(18.8%)となっています。平均支出額(月額)は「25.5万円」。65歳以上は年齢が高いほど平均支出額は低くなっています。

配偶者なし世帯を見てみると、男性では「15~20万円」(17.3%)が最も高く、次いで「10~15万円」が17.2%となっています。また、女性では「10~15万円」(21.8%)が最も多く、次いで「15~20万円」(15.4%)となっています。平均支出額(月額)は男性では「16.9万円」、女性では「14.2万円」です。

支出項目別に本人及び配偶者の各支出が支出総額に占める割合の平均をみると、「衣食住」にかかる支出が41.1%、「税・社会保険料」にかかる支出が11.1%、「医療・介護の自己負担」にかかる支出が8.6%となっています。しかし同調査では、下記の文言が添えられていました。

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「税・社会保険料」については、国民健康保険料・介護保険料や個人住民税等の特別徴収分を含めていない額を回答しているおそれがあるため「税・社会保険料」の支出総額に占める割合の平均は低くなっている可能性があることに留意する必要がある。

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逃れられない税・社会保険料負担。データ以上に家計を圧迫していることが見て取れます。

年金「繰上げ」はベストな選択肢か?…「結構な減額率」

■繰上げ受給の状況

年金については「繰上げ受給」「繰下げ受給」も度々話題になっています。原則として65歳からですが、60~65歳になるまでの間から繰上げスタートできます。この場合、月々の年金は減額されますが、長期にわたって受給することが可能になります。

昭和16年4月1日以前に生まれた方についての減額率は下記のとおり。この数値は一生変わりません。

請求時の年齢・・・減額率

60歳0ヵ月~60歳11ヵ月・・・42%

61歳0ヵ月~61歳11ヵ月・・・35%

62歳0ヵ月~62歳11ヵ月・・・28%

63歳0ヵ月~63歳11ヵ月・・・20%

64歳0ヵ月~64歳11ヵ月・・・11%

なお最新の見直しにより、令和4年4月からは「昭和37年4月1日以前生まれの方」はひと月当たり減額率0.5%、「昭和37年4月2日以降生まれの方」はひと月当たり減額率0.4%となっています。

昭和37年4月1日以前生まれの方が60歳0ヵ月より受給を開始すると減額率30.0%、60歳1ヵ月より開始すると減額率25.5%……という具合です。

実際の繰上げ受給の状況をみると、「繰上げ受給をした」が男性では8.0%、女性では14.8%となっています。これを年齢階級別にみると、男性では、75~79歳が「繰上げ受給をした」の割合が最も低く、女性では、年齢が高いほど「繰上げ受給をした」の割合が高くなる傾向があります。

あまりの減額率にギョッとした方もいるかもしれません。逆に65以降の「繰下げ」を選択した場合、1ヵ月につき増額率0.7%、最大で42%増額されますから、「健康で働けるうちは年金をもらわないでおこう」といった選択肢も視野に入れられるでしょう。ただ、老い先何があるかわからないもの。収入・支出を加味した決定が求められます。

自分の年金加入記録については、日本年金機構から毎年誕生月に送付される「ねんきん定期便」や、「ねんきんネット」から閲覧することができます。ねんきんネットでは年金見込額の試算もできますから、まずは「自分がいくらもらえるのか?」確かめてみることも一手といえましょう。

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