なぜ選出? 1軍出場わずか10試合の広島・田村俊介の“スイング”に惚れ込んだ井端監督の洞察力「日本を代表するバッターになる」

サプライズ選出といっても過言ではないだろう。

2月14日、侍ジャパンの井端弘和監督が「カーネクスト 侍ジャパンシリーズ2024 日本vs欧州代表」(3月6、7日=京セラドーム大阪)に出場する代表メンバー28人を都内のホテルで発表した。

大学生4名を除き、去年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一に貢献した村上宗隆(ヤクルト)、源田壮亮(西武)、宮城大弥(オリックス)をはじめ、アジアプロ野球チャンピオンシップ(CS)で優勝の立役者となった森下翔太(阪神)、万波中正(日本ハム)ら、1軍で実績十分な代表経験者から伸び盛りの若手まで多士済々の面子が揃った。

そんななか、井端監督は周囲を驚かせる決断を下す。なんと、1軍での出場は通算10試合と少ない20歳の外野手・田村俊介(広島)を大抜擢したのだ。

同監督は田村の選出理由について「昨年のアジアプロ野球CSでも候補に挙がっていた」と明かし、広島のキャンプを視察していた時から高い潜在能力に惚れ込んでしまうほど熱い視線を送り、そのポテンシャルに自信を示した。

「昨年広島カープさんと練習試合させてもらって、彼のスイングというのは素晴らしいものがありました。一度見てみたいということで今回選びましたけど、レギュラーシーズン次第では日本を代表するバッターになると思います」
初めて日の丸を背負う田村は「選んでいただき素直に嬉しいです。日本代表に選ばれる事は初めてですし、日本代表のユニホームを着てプレー出来る事は光栄に思います。すごい選手ばかりなので、たくさんの選手のプレーを見たり、聞いたりして成長出来る場所にしたいです」とコメント。トップチームでさらなる成長を誓っている。

田村は愛工大名電高から2021年ドラフト4位で広島に入団。左投げ左打ちのプロ3年目で、昨年は1軍で10試合に出場して打率.364、本塁打と打点はともにゼロ。今オフはレギュラー外野手の西川龍馬がパ・リーグ3連覇中のオリックスへフリーエージェントを行使して移籍したこともあり、空いた外野のレギュラー奪取を狙っている。

1軍実績は乏しくとも、自ら視察し現役時代と変わらない鋭い観察力で20歳の若武者を抜擢した井端監督。実に興味深い人選である。

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

© 日本スポーツ企画出版社