春闘「全ト労連」過去最高額の要求 大企業の賃上げは明るい 中小企業は物価高騰で“二の足”も

テレビ愛知

全トヨタ労働組合連合会は加盟組合の賃上げ要求の平均額が、2000年以降で過去最高となったことを発表しました。

全トヨタ労連 船戸亮佑労働政策局長:
「2000年以降、最高の水準を要求」

会見を開いたのは全トヨタ労働組合連合会で、トヨタグループ各社の労働組合が加盟しています。加盟組合の平均の賃上げ要求額は約1万6000円。2000年以降で最高の水準になりました。

中でもトヨタ自動車の労働組合は物価上昇に対応するため、ボーナスで過去最高となる7.6か月分を要求します。グループを通して高水準の要求となりましたが、その理由は。

全トヨタ労連 西尾清人副会長:
「物価上昇を含めた社会的環境からすると、高い水準で取り組まないといけない。日本全体で人手不足の中で、今働いている人が魅力に感じるのかが大事」

今年の賃上げは期待できるのでしょうか。

賃上げ幅が「2023年を超えそう」と回答した企業は約1割

東京商工リサーチの調査によると、2024年の賃上げは、企業のおよそ8割が実施予定。しかし、賃上げ幅が「2023年を超えそう」と回答した企業は、約1割にとどまりました。街の人に話を聞くと

大手製造業 40代:
「去年以上の賃上げ幅を超えるのは全体は難しい。企業のレベルの違いがあるから。国が補助するとかあれば」

大手物流会社 40代:
「インフレ率に合わせた、それよりももう少し高い賃上げがされると1番いい」

2023年、月3、4万円ほどの賃上げがあったという中小企業に勤めるこちらの男性は

中小企業 20代:
「去年は賃上げという話が国としてあったので、思い切って会社もやってくれた。今年はそこまでできるのかな 望めない」

物価高騰などで収益が圧迫された企業が、更なる賃上げに二の足を踏んでいるようです。

中小企業は賃上げのハードルが高い

一方で春闘での賃上げの見通しについて「明るい」と分析する専門家もいます。

みずほリサーチ&テクノロジーズ 酒井才介主席エコノミスト:
「今年の春闘賃上げ率は、私は昨年を上回る賃上げ率が実現する可能性が高い。企業をめぐる外部環境がポイント。1つは、去年を上回る過去最高水準の企業収益が実現していること。円安、生産活動も回復してきた。インバウンド需要も回復してきた。大企業を中心に企業収益は潤っている」

さらに、賃上げを後押しする大きな要因があるといいます。

みずほリサーチ&テクノロジーズ 酒井才介主席エコノミスト:
「昨年からさらに強まる人手不足感。高い賃金を提示しないと人集められなくなって来ている。賃上げプレッシャーが企業経営者にかかっている。」

一方で、酒井さんは、主に賃上げができるのは大企業で、約7割の人が従事する中小企業の賃上げについては厳しい状況が続くと分析します。

みずほリサーチ&テクノロジーズ 酒井才介主席エコノミスト:
「中小企業は昨年の(賃上げ率)を上回れるかというと、大企業と比べるとハードルは高い。賃上げをするための原資が必要。売上が伸びていかないといけない。売上が伸びていくためには適正な価格を値上げを認められることが必要。

家計の節約志向に対応するために、体力に余力のある大企業が値下げ戦略をしている。中小企業が価格競争に巻き込まれる。そうするとなかなか値上げができない。値上げができなければ、十分な賃上げ余力が確保できない。

結果的には次の賃上げの原資が確保できない。縮小均衡に向かうのが懸念される。個人消費をいかに増やすかでいうと実質賃金を十分にプラスに持っていく、物価の伸びを上回る賃上げを実現することが重要になる」

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