世界のLNG需要、40年までに50%増加へ 中国けん引=英シェル

Marwa Rashad Emily Chow

[ロンドン/シンガポール 14日 ロイター] - 英石油大手シェルは14日、液化天然ガス(LNG)に関する年次報告書を公表した。中国、南アジア、東南アジアを中心に世界のLNG需要が2040年までに50%以上増加するとの見通しを示した。

23年の世界のLNG取引量は4億0400万トンと、前年の3億9700万トンから1.8%増加した。24年は供給不足により価格が高止まりし価格変動が過去の平均を上回るため、経済成長が抑制されると予想した。

天然ガス需要は欧州や日本、オーストラリアなど一部の地域では10年代にピークを迎えたものの、世界的には増加し続けていると指摘。最新の推計によると、40年には年間約6億2500万─6億8500万トンに達するとした。この水準は、23年版の需要予想である7億トンをわずかに下回る。

23年に日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となった中国は、産業用エネルギー源を石炭からガスに切り替えて炭素排出量を削減することを目指しており、20年代の世界のLNG需要の伸びの大半を占める可能性が高いとみられている。

シェルは「中国は石炭からガスへの転換によって二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指しており、この10年間は中国がLNG需要をけん引するだろう」との見方を示した。

シェル・エナジーの幹部、スティーブ・ヒル氏は「中国が20年代で最も強気な市場だとわれわれはみている。現時点で大量の新しいガスインフラが稼働しているが一因だ」と語った。

また南アジアや東南アジアでは、30年から40年にかけて、一部地域で国内ガス生産量が減ることから、ガス火力発電所や産業用の燃料向けにLNG需要が急増する可能性がある。シェルは報告書で、こうした地域ではガス輸入インフラに多額の投資が必要になると指摘した。

LNG市場は、ロシア軍がウクライナに侵攻を開始した22年に大混乱に陥った。しかし23年は世界的に市場が回復し始めたため、供給が豊富となって価格が下落。アジアスポット価格は22年に100万英国熱量単位(BTU)当たり70ドルを付けて過去最高値を記録したものの、23年は平均約18ドルに落ち込んだ。

今年はさらに下落して依然10ドルを下回っていることを受け、中国からバングラデシュに至るまで買い手側が、中東カタールと米国からの新規の供給契約に乗り出している。ヒル氏は、欧州がこれまでに締結した長期契約では需給ギャップは埋まらないだろうとの見方を示した。

またヒル氏はバイデン米政権がLNG輸出の新規許可停止措置を延長した場合、世界のLNG市場への影響は限定的だが「長引けば市場にかなりの影響が及ぶだろう」と懸念を表明した。

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