三浦宏規「子供が仮面ライダーに憧れるように、僕は熊川哲也さんに憧れた」 バレエとの出合い

仮面ライダーに憧れるように熊川哲也さんに憧れた。

「5歳のときに熊川哲也さんのドキュメンタリーを見たんです。子供が仮面ライダーや戦隊モノに憧れるように僕は熊川さんに憧れて、これをやりたいって言ってバレエを始めました」

当時、バレエを習う男子は珍しかったと思うのだけれど…。

「バレエに興味のある同級生なんて、全然いなかったです。でも僕は、こんなにカッコいいのになんでみんな知らないんだろうって思っていたタイプ。『チャイコフスキー知らないの?』って、昨日レッスンで教わったことを学校で得意げに披露して、みんなにすごいって言わせたりしていました」

バレエ熱は徐々に増してゆき、地元・三重のスクールでのレッスンに加え、約1時間をかけて名古屋のスクールにも通い、ほぼ毎日バレエレッスンという生活を送っていたそう。

「でも全然嫌じゃなかったし、それを努力だと思ったこともなかったです。ただ、やりたいからやってるだけ。僕からしたら、お腹がすいたからごはんを食べるとか、綺麗にしたくてお風呂に入るとかと同じ。どんなに面倒くさくても、上手くなりたいんだから、そりゃやるでしょって感じです(笑)」

その頃の夢は、熊川さんと同じように英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル。それにはまず、コンクールでいい成績をおさめることが求められる厳しい世界。そんななか、三浦さんはレッスン中に脚を負傷してしまう。世界を目指すには、脚の怪我がネックになっていくかもしれない…。そう葛藤していたときに俳優という仕事に出合い、新たな道に進むことを選んだ。

「正直、踊りは封印して芝居や歌をやっていくつもりでした。でもそこではなかなか勝負できなくて、唯一の武器が踊りだったので、必然的にそこを要求されることが多かったんです」

三浦さんに注目が集まり始めたのは、16歳で出演した漫画『ONE PIECE』を題材にした20分程度のショー。声は声優の吹き替えだが、目の前を駆け回り躍動感溢れる“生のルフィ”の姿に釘付けになる観客が続出。翌年には、2.5次元ブームの火付け役となったミュージカル『テニスの王子様』で、作品屈指の人気キャラクター・跡部景吾を演じた。その後、ミュージカル『レ・ミゼラブル』でグランドミュージカルに進出すると、またたく間に多数の作品で主演を務めるまでに。バレエを基礎とした優雅な所作や颯爽とした佇まいで、舞台に上がればひときわ目を惹く。しかし逆に、「それが足枷になることもある」のだとか。

「昨年、舞台『キングダム』で、主人公の信を演じましたが、これが野生児みたいなキャラクター。言ってみたら、バレエ的な動きなんてもっともいらないわけです。姿勢が良すぎるから、わざと猫背にしてみるんだけど、幼少期から身についているものってなかなか崩せないんですよね。ガサツに見えるよう研究してやっていましたが、慣れない動きでカラダへの負担が大きく、怪我しやすいので、結構苦労しました」

それでも、身寄りのない貧しい奴隷から、不屈の精神と機敏さで国を支える武将を目指す青年・信を、軽やかな身のこなしとパッションとで泥くさく演じ、しっかりと実績に。そもそも、役の出自や感情を、言葉ではなくカラダや踊りで伝える表現は、幼い頃からずっとやってきたことだ。

「たしかにずっとカラダでの表現と向き合ってきてはいるんですよね。どんな作品でも、役を立ち上げていくときには、基本的にまずどんな歩き方をする人なのかを考えるタイプですし」

カラダの動きから役を構築していくというのは、バレエ出身者ならではの視点なのかもしれない。

「昔から、歩き方や佇まいが美しいと言っていただくことが多かったんですが、さまざまな役をやっていくうち、美しいことが正解なのかと疑問を感じるようになりました。そこから、素敵だと思う役者さんの佇まいとか、動きに注目するように。僕が素敵だと思う役者さんはみなさん、歩くだけで、どんな出自でどんな人物なのかが見えるような表現をされる。自分もそうなりたいと意識するようになりました」

みうら・ひろき 1999年3月24日生まれ、三重県出身。3月に舞台『メディア / イアソン』、5月にミュージカル『ナビレラ』。7月に『BOLERO‐最終章‐』、8月には単独コンサートを予定。

ジャケット¥11,280(エジュクロ asclojapan@gmail.com) タンクトップ¥2,730 パンツ¥9,100(共にホーリーインコード holyincodejp@gmail.com) 靴¥83,600(シュガーヒル/林デザイン事務所 TEL:090・4737・1805) ネックレスは本人私物

※『anan』2024年2月14日号より。写真・RYO SATO スタイリスト・ダヨシ ヘア&メイク・堤 紗也香 取材、文・望月リサ

(by anan編集部)

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