米国土安全保障長官の弾劾訴追、下院が決議 移民問題めぐり

米下院は13日、アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官を弾劾訴追する決議案を僅差で可決した。米政府の閣僚が弾劾裁判にかけられるのは約150年ぶり。

野党・共和党の多くの議員は、メキシコ国境から前例のない人数の移民がアメリカに押し寄せていることについて、マヨルカス氏の責任だとしている。

共和党が多数派の下院では、先週も同様の採決があったが、賛成票が過半数に至らなかった。この日は賛成214、反対213の1票差で可決した。

これにより、弾劾裁判が上院で開かれる。上院は与党・民主党が優勢なため、マヨルカス氏が有罪とされて罷免される可能性は低い。

ジョー・バイデン大統領は13日、この採決を「党派主義による露骨な違憲行為」、「政治的な見せ物」と非難した。

マヨルカス氏を批判する人々は、同氏が国境警備に十分注力せず、「職務を適切かつ忠実に果たす」という宣誓を守っていないと批判している。

共和党の3議員が造反

採決の結果は、ほぼ党派に沿ったものとなった。民主党の210議員と、共和党の3議員(カリフォルニア州のトム・マクリントック、コロラド州のケン・バック、ウィスコンシン州のマイク・ギャラガーの各議員)が弾劾に反対した。

造反した3議員は、先週の採決でも反対票を投じた。重大犯罪を犯していない人の弾劾は、憲法が定める罰則の意味を弱めるうえ、国境危機への対処という点でほとんど効果がないとした。

この日の採決では、共和党のスティーヴ・スカリーズ下院院内総務も賛成票を投じた。スカリーズ氏はがんの治療を受けており、前回の採決は欠席。この日は議場に戻ったことで、共和党は過半数を確保した。

アメリカには2021年以降、630万人以上の移民が不法入国している。11月の大統領選挙を前に、移民問題は国論を分裂させ、政治的対立を引き起こしている。

大統領の座の奪還を狙うドナルド・トランプ前大統領は、移民問題を選挙運動の主な争点に据えている。

採決の直後、バイデン氏は声明を発表。マヨルカス氏を「立派な公職者」と呼んで擁護した。

マイク・ジョンソン下院議長(共和党)は、マヨルカス氏は「弾劾に値する」と述べた。

上院では3分の2の賛成が必要

マヨルカス氏をめぐっては、1月に公聴会が2回開かれた。共和党議員らは、同氏が移民政策を実行できておらず、国境警備についてうそをついていると非難した。

弾劾は米憲法に規定されているプロセスで、重罪や軽犯罪を犯した連邦政府高官を罷免するための第一歩となる。

下院では単純多数、上院での裁判では3分の2以上の賛成が必要となる。

上院は民主党が僅差で多数派となっているため、弾劾裁判で有罪とされる可能性は低い。

下院は今月26日に、弾劾訴追決議を上院に提出する予定。

米政府の閣僚で弾劾されたのは1876年のウィリアム・ベルナップ陸軍長官が最後。ただ同長官は、採決が実施される直前に辞任した。

BBCが提携する米CBSの1月の世論調査では、米国民の半数近くが国境の状況を危機とみなしている。また、63%が「これまでより厳しい」国境政策を望んでいる。

米税関・国境警備局は13日、1月の国境通過件数が50%減少したと発表した。大幅に減ったのは「季節的な傾向と、取り締まりの強化」が原因だとした。

(英語記事 Alejandro Mayorkas: House votes to impeach homeland security secretary

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